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第一六一話 絵 -狭間-

今日は珍しく外がにぎやかだった。珍しくっていっても、まだ三日しかここにいないんだけど。


車が通る音はここにいる間一度か二度しか聞こえなかった。車の音自体がそんなに大きくないから、かなり近づかないと聞こえない。静かでいいけど、せっかく外の世界にいるのに、少しさみしいようにも思った。


珍しいな、と思って外を見たとき、隣のビルが一瞬光った。白い光。遠くからみたけど、あんなに光がもれるんだから、部屋にあるような明かりなんかより、すごく強い光だと思う。


あと、なんの音かわからないのも聞こえた。大きな音。爆発したような感じだったけど、なんだろ?気になって外を見たけど、どこで何があったのかわからなかった。光った場所を見たけど、もう暗くてわからない。だから、諦めた。


さっさと寝なよぉ、って言われても、まだ眠れなかった。ベットに横になって、何度か姿勢を変えてみたけどダメ。どうしても寝付けなかった。


今日の事を思い出した。朝も遅かったんだっけ。テレビで星天祭のことしてた。私が知ってたのと全然違ってた。結局、狼さんは今日も出かけてしまった。私が来るまでは毎日いないなんてことはなかったらしいから、私が来た四日前からいつも危ない目にあってるんだ。


四日。もう四日も経つんだ。少しは外の世界に馴染めたのかな。ただ、無理に連れ出してもらったんだから、街に気軽に出ていけないのは少し残念だけど、そんなのはいつか見れる。今、ここにいる方が私はいい。


そういえば、狼さんは絵を描いてたんだっけ。できたのかな?あの歌姫さんの絵。ベットから起き上がり、ドアに近づいていった。見に行こう。狼さんには勝手に入って悪いけど、思い出したら見に行きたくなった。居ても立ってもいられない、って言うのはこういう事なんだと思う。もう外からの音は聞こえなくなった、静かな廊下を進んでいった。エレベータに乗って一つ下の階に降りていく。ホコリとクモの巣だらけの廊下。それでも、上の部屋より暖かく感じた。


アトリエに入った。昨日と一緒でカギは閉まってなかった。油の匂いが鼻に入ってくる。この匂い、好きかもしれない。ここで初めて嗅いだ匂いだけど。


痛んだ机の上にキャンバスが置かれていた。歌姫さんの絵だ。完成してるんだろうか。私にはそういうのはわからないけど、やっぱり笑ってるように思えた。狼さんは絶対にそう言わないと思うけど、私にはやっぱりそう感じた。


少し、この絵を眺めていくことにした。

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