表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/173

第一六〇話 騒音 -裏-

けたたましい音が鳴り響く。いや、鳴りつづける。耳を押さえ続けていても、ほとんど意味がない。本当にこの身体が憎くて仕方なかった。


確実な侵入経路として、相棒が提案したのは電車だった。目的のビルには電車が止まる駅がある。ビルとビルを繋ぐ電車に乗れば、乗っている間に勝手に運んでくれる。


ただし、どんな駅であろうと、この姿の俺を客として扱う場所はない。普通でないから、普通には乗れない。でなければ、こんなにも苦しむ必要はないだろう。


まさか、電車の上に乗ることになるとは。乗り心地は良くはないが、落ちないよう捕まっているのはそれほど難しいはなしではない。負の要素は音。これに限る。


相棒に反論したかったが、こうして一つ前の駅まで来れてしまっては何も言えない。


発車を告げる高い音が消える前に、車体が揺れた。次の駅だ。音から解放感とともに、複雑な気持ちが沸き起こった。いや、後者は元々あったが、嫌悪感で見えなくなっていただけだ。ここまで来てまだ腹を括れていないと思うとなさけない。


ただ会いにいく。それだけなんだ。命を狙いにいく訳でもない。情報を絞り出すだけだ。鈍感なあいつが俺だと気づくはずがない。気づかれたら、奪わなければならない。


何を心配しているんだ、俺は。気づくはずがない。どんなに察しのいい人間だとしても、ここまで原型を留めていないものをどう理解する。わかってもらえるはずがない。


そう考えると、冷ややかな笑みが零れているのに気がついた。


電車は徐々に速度を下げていく。もうすぐ着く。ビル内部にある駅の停止位置の真上にダクトがある。大きさは俺が悠々通れる程の大きさだ。そこから侵入する。エレベータの通路まで進み、後は目的の階まで上るそれだげだ。


上り切ってしまえば、監視を抜けて部屋に侵入する。ただの監視カメラではないらしい。詳しくは行けばわかると言っていた。大体想像がつく。無人機だろう。一定のコースを自動で回る機械、いや、兵器といった方が正しいだろうか。相棒が手を回してくれる。監視カメラより厄介らしいが、何度かした経験だ。問題ない。


それをかい潜ればキースがいる部屋。情報を得て、帰りはただ逃げればいい。これだけだ。手掛かりが掴めればいい。それだけ心配すればいい。


電車が完全に停止した。入り口もすぐそこに確認した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ