第一五八話 二人だけの秘密 -狭間-
意味わかんねぇ。何が思いつくだ。そんなんで、なんで三人の名前が出てくんのさ。よりによってその三人。
平静というか、少し突き放すような言い方をしながらも、頭ん中は複雑に考え込んでた。キースはいいとしよう、ワンコが話したのかもしんないし。アイル・ハルワールもワンコから知ったのかもしんない。正直、考えにくかったけど、取りあえず置いとく。問題はアルセラだ。なんで思いつく?
検索した内容なんて、履歴からすぐわかる。わざわざ聞くほどのことなんてないと思ってた。だから、勝手に使ってたのは見逃してやろうか、そう考えてた。だって、あのワンコと一緒だと暇だろうからなぁ。
アルセラについては以前かなり調べた。なにしろ、俺の事件を担当した検事だから。知りもしない奴を勝手に犯人にして、勝手に終わった裁判。あれに関わった奴は全員調べた。結局、たいした情報はなかったんだけどな。
あの事件を担当した検事。何か知ってたらしい研究者。そんで、今回のターゲット。偶然にしちゃぁ、出来過ぎてるよな。もしホントに思いついたんだとしたら、他の繋がりも見つけてくれるかましれない。
「とにかく、そんな訳わかんない事、ワンコに言わない方がいいぜ。というか、俺以外、誰にも。」
『どうして?』
モニターに映る不安そうな顔が尋ねてくる。不自然じゃない程度に明るく返せよ。
「だって、変な話じゃん。知らない事思いつくなんてさぁ。ただでさえ、今あいつはダチに会いに行くとかぁ、いろいろ大変なんだからぁ、心配かけちゃ悪いよぉ。」
こういうのって、明るく言った方が効く。少しだけ恐怖を与えつつ、俺だけはわかってあげる、ってするのがいい。お前は普通とは違うんだって恐怖を間接的に伝える。そうすれば、俺以外に話しづらいだろ?ワンコになんて教えてやるかよ。
『…うん。わかった。』
少し悩んだみたいで黙ってたが、仕方なく納得したみたいだ。それでいいんだよ。
「じゃあ、この話はおしまい!さぁ、寝た寝たぁ。」
それだけ言うと、セフィーの顔を確認せずに通信を切った。しん、と部屋が静かになった。
『…ザー…相棒、位置に着いたぞ。』
せっかく静かだったのに、嫌な雑音まじりで別の通信が入った。まぁ、この音が嫌だと思うのはワンコの方だから、文句は言わないでおいてやろう。
可哀相にな。そう思うと、自然と口が緩んだ。嫌味ったらしい顔だと思うよ。自分で。