第一五五話 繋がりの消失 -狭間-
隠しファイルはちょっと面倒臭かった。パスワードかかってたし、不正アクセスすると全データが消却される、なんて手の込んでた事してた。少し時間かかったけど、消えることなんてなく開けた。
「うげぇ。」
中身見て出た感想。いや、今時ディスクに焼くなんてするから、かなりデカイデータが入ってんだろうと思ってたんだけど、せいぜい二百位。それより問題はタイトルだよぉ。一番最初のファイルが“試験体解剖001”なんて誰がみたいのさ。頼まれたって見ない。
と思ったんだけど、他のも名前だけ見ていっても、嫌なのばっかし。ゲノム情報とか、細胞変異過程とか見ても仕方ないし、耐久実験なんて絶対開けない。
「マシなのないなぁ。」
思わず独り言がもれるくらいだった。もう見るの止めようかと思って、せめてファイル形式が文章のがあるか確認した。
これまた多かった。一つのフォルダの中にまとまってたんだが、全部で百近く…。何をそんだけ書いたんだか。
大体が計画表とか、考察とか、ホント実験好きだったんだなぁ、って感じるようなのばっか。適当に二、三個選んでみた結論。後はタイトルだけ流し見して、気になるのだけ読も。片肘ついて、首もちながらそう考えた。
“追悼”
場違いのタイトルがあった。追悼?誰か死んだのかぁ?わざわざ隠すようなもんでもないように思ったが、気になったからには見ようと手が勝手に動いてた。
“昨日、恩師であるアイル・ハルワールが亡くなられた。殺害されたそうだ。犯人は警察が捜しているらしい。ご高齢であったのに寿命で亡くなられないとは残念な事だ。”
「うーわぁ。」
ただの日記じゃん、と思って読んでたらまた独り言。いや、だってワンコが殺した奴の名前だったからなぁ。…たぶん。全員の名前なんて覚えてないから、確認しないと言い切れないけど。
っても、やっぱしただの日記。わざわざ隠してる理由はわからない。続き読も。
“その前日に唐突にきた連絡が当然気になった。久しく連絡をとっていなかった事もあるだろう。ただ、どうしてもその意図することが汲み取れない。たったニ行のメール。タイトルもない。ただ、こう書かれていた。”
俺の目は次の行の文から目を離せなかった。
“白い狼に気をつけろ。黒い狼に手を差し延べろ。”
白い狼?黒い狼?黒はワンコとしたら、やっぱし、白は…。明らかにこいつは何か、いや、全部知ってたのかもしれない。だけど、そいつは殺しちまった。
「なんだよ、それ。」
勝手に笑ってた。気持ち悪い笑い方で。