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第一五二話 不安と敵と―表―

今のはなんだ?目の前を走った蒼い光が、前の車に反射した程度のもんか、と気にするのを止めようとした。


突然、車体が揺れた。小さく、上下に。なんだ?、と声を漏らすよりも先に、揺れが収まり、代わりに車内が赤く点滅した。そんな状態になった事ない。


『反重力システムが停止した!』


なるほど、理由はわかった。だが、解決した訳じゃない。確かに教習所に通ってたときに教わったが、滅多に止まるもんじゃないはず。

『お、落ちるんスか?』


ほぼ全員が考えた事をバンが代弁した。すぐに来るかもしれない反動に備えて、俺は椅子にしがみついた。


『予備が稼動し始めた。後十分で下りればいい。』


予備があるのか。そういえば、それも教えられたような気もするな。そんな余裕を見せてる場合じゃない。十分じゃ、会見場に着くか怪しい。混み具合じゃ着かない。それに、こんな事態になるのは明らかに不自然だ。


「早くこの場から離れろ。」


『しっかり掴んでいてください!』


対応が早くて助かる。運転している奴は俺と同じ事を考えてたようだ。要人警護を引き受けている最中にこんな事がある、だなんて、整備不良と考えるよりも、人為的なもんだと考えた方がいい。襲撃を受けたか、仕組まれてたものかわからない。どちらにしてもこの後に何もない、だなんて言い切れない。だから、逃げる。整備不良なら、チェックした奴をぶん殴るだけだ。


前の車が上に上がるとともに、体が宙に浮くような感覚がきた。反射的に椅子を掴む手に力を込める。車体を下げながら、向きを変え、再び発進した。


問題は何処に逃げ込むか、だろうな。会見場に逃げ込むには時間がない。


人のいるような所に逃げ込めば、上手く撒けるかもしれないが、関係ない人間に危害が及ぶ可能性が高い。かといって、近くの廃棄ビルに入るのも危険だ。もしかしたら待ち伏せされてるかもしれない。相手の人数がわからない以上、そんなリスクを負いたくない。


少し離れた位置にある廃墟、それがベストだろう。流石にそこまで待ち伏せしてるなんて非効率な事してないだろ。


何処にするかを考える前に、無線から焦りが混ざった声が聞こえた。


『二号車、こちらも機能停止した。近くの廃棄ビルに下りる。』


これで決まりだろ。確信した。ほぼ同時に止まったんだからな。


「車を止める場所には注意しろ。待ち伏せされているかもしれない。」


『了解した。』


向こうは問題なさそうだ。目的の人間がいないんだ、襲撃を受けても、それがわかれば深追いされる事はないしな。さて、それよりどこに行くか。


『幽霊ビル…はどうです?』


以外な所から答えが出た。ろくに考える暇がなかった俺達四人ではなく、守られる社長からの答えだ。幽霊ビルって言ったら、はずれにあるあれか。十分で行ける距離じゃない。ただ、あそこまでは道路が続いてるはずだ。それに乗ればいい。距離的に待ち伏せなど有り得ない。


「それで行きましょう。向かってくれ。ある程度近づいたら、道路に乗るように。」


『了解した!』


最後まで言うと、ルームミラーに写る疑問が晴れ、明るい声が返ってきた。


通路を外れた車は、幽霊ビルに向かって走り出した。このまま通路を離れたままでは、人目を引きすぎる。なにより、敵に把握されやすい。近くの通りの少ない通路に入ったり、外れたりを繰り返しながら目的地に向かっていった。運転手他の三人で周りを見ていたが、付けている車は見つからなかった。うまく隠れているのか、それとも初めからいないのか。とにかく、目的地は変えさせなかった。


もうすぐ十分になる。幽霊ビルは視界に入っているが、飛んだままで行けるような距離ではない。下にあるボロい道路にあわせて高度を下げていく。車体が一度揺れたが、問題なく道路を進んでいく。相変わらず敵の姿は確認できない。


『敵なんていなかったんスかね?』


さすがに、ここまできて敵の姿が見えないと、疑わしいもんだ。


『でしたら、笑い話にさせてもらいますよ。』


鼻で笑いながらいう。そんなことですんだらいいよ。社内の空気がずいぶん軽くなったな。緊張感は残っているが。


幽霊ビルが目の前に迫ってきた。幽霊ビルっていっても幾つもあるんだが、一番近いものに入る。どれもこれもかなり以前に見放されたものでボロボロだが、道路を通ったままでも中には入れるようだ。中に入って車の様子を確かめるか。簡単に直るようなもんならいいがな。


『右上のビル。なんか光ったような。』


後ろを見ていたバンが独り言のように言った。右上?バン側の窓から何か見えたのか?何があるのかと、俺もその窓を見た。


ビルの影から出てくる人工光が見えた。車だ。こちらに向かって来る。


「急げ!」


こんな中心部から離れた場所を通る連中は敵に違いない。考えるよりも早く口から言葉が出た。発振器でも付けられていたのか、奴らは別方向から追ってきたようだ。とにかく、中に入らないと。後の事はなんとかなる。

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