表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/173

第一四〇話 舞台裏二

『只今参りました。』


扉を叩く音に応えると、仕事を終えたヤジがいつもと寸分違わぬ表情で入ってきた。


「直接報告しなくても構わないのに。本当に律儀な男だな。」


『いえ。やはり、直接お伝えすべきですので。』


それを律儀だというのだ、この言葉は頭の中に抑えておいた。


「では、報告を聞こうか。」


報告と言っても、ほとんど計画通りであるだろうから、ほとんど聞くまでもないだろうな。手を組み、肘を机に乗せ、話を促した。


『はい。ご命令通り、トーマスの殺害、研究所の削除、データの奪取、滞りなく全て完了しました。』


「続けてくれ。」


事前に報告を要求していたのはこの後からだ。さきの内容は報告ですらない。


『作戦中に彼女の姿があったそうです。役目を担っていたと見て間違いありません。』


期待した通りだ。生きてその場にいた。あやつもまだまだ甘い人間と言う訳だ。


『…疑われてはおりませんか?』


ヤジが声のトーンのみを少し変えて聞く。鼻で笑った。


「傍観者たちにか?疑われる事などあるか。我々は彼らのために動いているじゃないか。警戒も怠っていない。問題ないさ。」


ヤジの心配もわからないでもない。少しでも疑いをもたれれば、奴らに徹底的に探られる。ボロを出すようなへまはしないが、要である今後動きが取りづらくなる。それは避けたい。ただ、私が言った事は事実だ。今回ヤジにしてもらった事はあくまでも彼らの意向に沿っただけだ。何か裏でした訳ではない。しなかっただけだ。


「心配するなら次だろう。次はあの人だからな。念入りに準備してきたが、万が一ということもありかねない。」


本格的にヤジに動いてもらうのはこの次。あの人には恩を仇で返すことになる訳なのだが、意外と何も感じないものだ。ただの通過点でしかないからだろうか。私自身が手を下す訳ではないからだろうか。本当はそうしたいのだが、この身体だ。本当に憎たらしく思う。


「もう下がってもいいぞ。また明日頼む。」


『わかりました。これで失礼します。』


深く一礼し、部屋を出て行った。ヤジの背がいつもより大きく感じた。普通は父親に感じる事だな。奇妙な気分だ。私もそろそろ部屋で休もう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ