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第一三九話 収穫

小一時間モニターを見続けているせいか、目が痛い。相棒はあれほど長時間見ているのに、なんともないのだろうか?


帰ってきて、すぐに彼女と分かれ、俺はディスクの中身を確認していた。腕に負った傷は実際ただのかすり傷で、戻ったときにはすでに血が止まっていた。それを見せると安心したようで、部屋に戻っていった。


爆音後はただただ走り続けていた。他に実験体がいたかはわからない。右腕の傷は出口手前で追いついた、あの俊敏な奴から受けたものだ。音と位置の合わない奴の動きを把握し、防ぐのはかなり難しかった。時間もないのに相手にしていられないからな。幸運な事に再び襲われたのは、出口まであと数歩という距離だったこと。


結果から言うと、この傷を見てわかる通り、かすりはしたが、かわせた。床に爪が当たる音が聞こえたのに合わせて、出口に滑りこんだんだ。態勢を下げたためにかわせた訳だ。なんとか非常口に辿り着き、逃げ延びた。


ディスクの中身はやはり実験データだった。数年間と言えど、あくまでそれは本格的な実験を行った期間であり、法に触れるかどうか、という小規模な実験はもっと前から行っていたようだ。それを含めると、目を通すだけでこれほど時間がかかるとは…。


あの研究所はシロであるのはもう疑いようがない。違法ではあるがな。他に分かる事と言えば、あのニ体以外に成功例はいる、という事だ。あと三体、つまりあの場に計五体いたことになる。襲われたのがニ体だけでよかった。


今はあの男が書いたと思われる日誌に目を通す前に一息ついたところだ。冷たいコーヒーを注ぎにキッチンに行ってきたところだ。砂糖を少しだけ入れただけの、甘みのない液体を口に含み、そのまま飲み込む。コーヒーの独特な苦みで眠気が和らいだ、かどうかわからないが、再び目を通し始めた。


日誌は小規模な実験を行っていたころから始っていた。人の目を避け、自分だけで行っていたようだ。違法に近いその実験を見つかる事を恐れていたわけではなく、己の力のみで作り上げたかったようだ。一人で行っていた期間は長かったようだが、スランプに陥ったとき、同じように実験を繰り返している人物がいることを知り、その人物とともに継続していった。そうしていくうちに、小規模なグループになっていたようだ。同じ研究を行っている仲間、と言うよりは自らの技術を誇示する相手でしかなかったようだ。なんとも奴らしいな。


日付は五年前まで読み進めた。俺がこの身体に変えられた時期だ。この時期で本格的な実験すら行っていないのなら、やはり関係ないのは決定的だな。本格的に実験を開始したのはあの研究所に移った数年前だと言っていた。具体的に聞いておけばよかったな。また目が疲れてきた。


少し雑に流し読みしていると、気になる名前を見つけてページを進めていた手を止めた。キース・イヴィアン。俺の…旧友の名。

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