第一三一話 二首-突入
…三、二、一、三時。目の前の電子ロック式ドアが開いた。予定通りだ。連絡が入ったから、必然ではあるか。人二人が前に並べる程の間に飛び込んだ。
そう。まさに飛び込んだ。
通常は非常口として使われるその扉。そこを侵入経路に選んだ。電子ロックでハッキングで開閉可能であること、また、目的地に比較的近いことが理由だ。他の入り口になりうる場所は、案の定警備がいるか、音の目立つようなものばかりだ。この方法も一つ間違えれば、それだけで全て水の泡になる。だが、今までだってそんな事ばかりだった。いまさら気にすることではないし、今回は成功する確証のようなものを感じた。
隣接した建物の屋上からは一階分の高低さがあり、距離は車を四、五台縦に並べた程度。この身体で飛び越えるのは容易な事だった。扉の大きさも十分。自信があったのはそれらだけではなかっただろう。おそらくは−。
少し右にズレたようで、壁に触れそうになったが、問題なく侵入した。その勢いのまま右へ走り出した。幸運な事に誰もいない。警備は構造的にもいないと推測していたが、他の研究員なりはどう動くかわからないからな。突き当たりを左に。そこにも誰もいない。階段を下りるときに後ろから扉を開ける音がしたが、おそらく見えていない。無視した。一階につき、フロアの奥の階段を目指した。
研究室は地下にある。その部屋に行くには一階の一番奥にある階段からしかたどり着けない。最も見つかる確率が高い。だからこそ一気に駆け抜ける。見つかっても通信は切れており、すぐには連絡を伝えられない。見つかれば、口をふさげばいい、という訳だ。階段の前に一人いるのが見えた。向こうもこっちに気がついたようだ。服装から警備員ではないようだが、通信機で連絡しようと口に手を当てようとしていた。すかさず近づき、腹部に拳を当てる。それだけでその男は態勢を崩した。気を失ったはずだ。確認する暇などない。そのまま突き進んでいった。
地下に下り、小部屋が見えた。想定していたよりも警備が薄く、かなり早くここまで来れた。後は、相棒がここの扉を開けさせれば、突っ込むのみだ。