表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/173

第一二八話 一首-忍ぶ

午前二時四十八分。私は弱い光を目の前に、薄暗い影の中にいた。目的の建物からの光があまり強くなく、人がいるのか少し怪しいくらい。あの中に狼さんは潜り込もうとしてる。三時ぴったりに作戦が始まる、その時まで待機。三時までに私はこの先にある小屋の中のパネルに、トーイッシュからった小さい機械をつけないといけない。後、十一分になった。そろそろ行くよ。


ここの建物は長方形の場所にだいたい三分のニ位を占めてて、角に当たる二辺はビルに接してる。残りのL字型の長い方の中央に小屋があるの。ただし、建物に向かい合う方向に一人と、反対側に一人見張りがいる。ここからだと、建物の方にいる人は見えないんだけど、扉があるのが建物側だから絶対にいる、ってトーイッシュが言ってた。反対側の−私の前にいる−人ははしごの前に立ってるのが見えた。ライト持ってるからすぐわかったの。この二人に気づかれないように小屋に入らないといけない。


小屋に入るための通風孔は屋上にあるの。だから、まずは屋上に行くのが目的。ただ、はしごは使えないから、別の方法じゃないと。…と、言うか、始めからそのつもりなんだけどね。


上に上がる方法だけど、その前にまず誰もいない小屋の側面に行かないといけない。ここで一時間位待機してたんだけど、全然動かないみたいだから、トーイッシュが言うには、気を逸らして、その間に行かないといけない。その準備もしたし、これからまさに始めるって感じ。


“カーン”


少し離れたところで金属の甲高い音がした。ライトがその方向に向いた。今だ!態勢を低くして走った。音があんまり鳴らないように気をつけて。


側面に着いた。あんまり壁から離れると気づかれるかも知れないらしいから、ぴったり壁に張り付く。気づかれて…ないみたい。よかった。


『ザー…うまくいってるぅ?』


イヤホンからトーイッシュの声がした。無線で連絡できるようにしてるんだぁ。


「うん、順調。」


『ならいいよぉ。時間に余裕はないからきびきびねぇ。』


それだけなんだ。わかってるよ。


腰についてるホルダーの中から、細長いつつを取り出した。ホルダーに十分入るから、鞄はいらなかったんだぁ。取り出したのは手の平から少しはみ出すくらいの小ささのもの。こんなに小さいのが、これから四メートルくらいの高さを上るのに大切だなんてね。


そのつつの曲面の真ん中にある穴に、手首に巻いてる腕時計の下の突起に挿した。“カチッ”って、音がしてすぐ時計の数字が動いた。さっき見た時より二増えてた。順調、順調。時計からつつを話すとつつからワイヤーが出てきた。しっかり繋がってるのを確認して、壁に当てた。手を離してみると、つつは壁に張り付いてる。落ちそうな感じはない。うまくいきそう。丸い端にあるボタンを押した。


つつは上り出した。静かなくせに速かった。つつの両端がタイヤになってるから、ワイヤーを巻き込んだりしないんだ。あっというまに上りきって見えなくなっちゃった。それじゃ、上りますか。壁に足の裏をつけて横になって、腕時計の付けた腕を少し上に挙げた。それから、腕時計のボタンを押した。


ゆっくりと、だけどしっかりとワイヤーが巻かれていく。壁を床みたいに歩いていくのは不思議な気分だけど、滑りにくいクツのおかげで全然こわくなかった。むしろ、楽しかった。それでも、普通に歩いてるときと比べたらやっぱり疲れるみたいで、少し辛くなったくらいに上に着いた。つつからワイヤーを外したら、また一つ数字が増えた。後九分。絶対大丈夫。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ