第一二二話 手伝い
いろいろあって、勝手ながら長い間休載していましたが、今回からまた再開させていただきます。また、更新は遅いですが、もしよければまた読んでください。
「で、わざわざ呼んだ理由が…これか?」
俺よりも少し高い衣装ダンスを持ち上げ、外へ運んで行く。反対側を持っているのがランタンだ。細身だが、しっかりと筋肉がついていて、体型はいい。目は二重で大きく、鼻も高いから、かなりモテているらしい。…全部本人が言っていたんだが。
『決まってんじゃん。こうすりゃ、引っ越し屋呼ばなくて済むだろ?』
「なら、バイト代取るぞ?」
『それぐらい渡すよ。』
今、払うじゃなかったな。十中八九金じゃない。先輩の死から立ち直ったのはいいんだが、それ以来、ひねくれやがって。
奥さんが再婚するそうだ。
それで再婚相手の部屋に越すらしいんだが、ランタンの奴、金が勿体ないとか言って自分達で荷物を運ぶ、なんて言ったらしい。軽いものを運ぶのは自分達とかでもできる、とかで、夜のうちに重いものを俺に手伝わせて運ぶ、なんてせこい事を考えたんだ。こっちは仕事で疲れてるんだってのによ。
「にしてもよ、どうなんだ?再婚相手とは…。」
ランタンの両口角が上げる。あー、なんか余計な事言おうとしてやがるな。
『なに?母ちゃん取られて悔しいの?』
「ばーか、そういう事じゃねぇよ。」
『はいはい。』
昔はもっと素直だったんだがなぁ。全く。
『いい人だし、仲は悪くないよ。ただ、まぁ…俺もこの歳だし、簡単に父親になる、なんて受け入れられないんだよなぁ。母ちゃんの旦那ってのは、むしろ嬉しいくらいなんだけどよ。』
軽い口調でぽんぽん口に出す。他人事のように…。だが、内心は真逆なんだ。そういうもんだろ?
「無理することねぇよ。ウチの連中みたいにしてればよ。」
『…そうだな。』
聞こえるかどうかの境目程度の声で返した。聞こえた訳だが。普段からこう素直だといいんだがな。まぁ、グレてた俺が他人の事は言えないか。
『俺の事よりさぁ、バンこそ何かあったんじゃねぇの?』
唐突な質問に体が止まった。意図的に隠してた、って訳ではなく、普段通りにしていたんだがな。わかりやすいのだろうか?
「どうしてそう思う?」
一呼吸置いた後、ランタンはどこかさびしげな表情になり、答えた。
『父ちゃんがさ…失敗した時と一緒だから。』
「そうか…。」
先輩と一緒か…。息子だけあってそういう所はよく見てるな。
「当たりだよ。俺にとって大事な人だったのにさ。」
『やり返せよ、そんな最低な野郎。』
顔を歪ませ、嫌悪を含んだ声でいった。そうさ、そうすればいいなんて何度も考えた。いや、まだ考えている。そうされても仕方がない奴なのも納得している。
でも、俺はもう復讐を考えたら駄目なんだ。ターシェとも約束したし、何より…。
玄関先に止めてある車にタンスを乗せ、次のを取りに行く前に返した。
「−止めよう、こんな話は。それより、お前、バイト代って何渡すつもりなんだ?」
『さぁね。お楽しみにとっといて。』
逃げるように家に入っていく。ろくなもんじゃないのかぁ?後をわざと音をたてながら追いかけた。