第一二〇話 協力者
『何を言い出すかと思えば…ダメだ。』
私の提案はすぐに却下されちゃった。でも、今回は引けない。引きたくない。
「私だってきっと何かできる!だから…」
『駄目なものは駄目だ。』
さっきよりも少し強く言われた。…私は力になれないのかな?
『そうも言ってられないかもしれないよぉ。』
さっきまで黙っていたトーイッシュがまだキーを叩く音を続けながら、棒読みで言った。
『どうした?』
モニターはさっきから地図しか写っていないけど、狼さんはそこを見てる。だから、私もそこを見てる。
『ん〜とねぇ。無いんだよねぇ、その場所にその会社の施設ぅ。』
今度はテンポが遅い。打ちながらだとちゃんと喋れないのかな。
『つまり、ダミーか?』
『そうなんじゃないぃ?社名偽ってるなんて、中でスゴイ事してるんじゃないぃ?』
入りたいけど入り口がわからない、そんな感じなのかなぁ?
『たださぁ、そのせいでどこから行けばいいかわかんないんだよねぇ。だからぁ、現場行って直で回線取るのが早いんだけどぉ、俺行けないじゃん。それでねぇ、セヒィーにも手伝ってもらおうかなぁ、と。』
チャンスだ。私が手伝うなら、今しかない。
「私、やる−」
『待て。それなら俺がすればいいじゃないか。』
言い切る前に私の言葉は掻き消された。そんなに私に手伝わせたくないのかぁ…。でも、狼さんの反論は通らなかった。
『そうもいかないから言ってるんでしょうがぁ。そりゃあ機械取っ付けるだけだからぁ、簡単だけどぉ、問題なのはそこじゃないんだぁ。見つかってぇ、機械引っこ抜かれたらぁ、そこでおしまい。』
つまり、私が行って…何をすればいいの?
『配線のメンテナンス用の小屋にワン公が行くとしたらぁ、警備員倒さないといけないだろぉ?それだとぉ、連絡なくなったって気づかれるよねぇ。だからぁ、小柄な体型の奴がこっそり忍び込んで取り付けるのが一番なんだよぉ。見回りの奴がわざわざパネルの中まで見ないだろぉ?こそっとしてればこっちの勝ちぃ!』
そうか!私なら小さいし、狭い通路でも入れるもんね。狼さんにはどうしても無理だよ。
『確かに…。侵入経路は…、その通風孔か…。』
モニターに映ってる地図に赤い丸がついた。多分トーイッシュがつけたんだと思う。狼さんは納得したみたいだけど、まだ首を縦に振ってくれなかった。
「大丈夫だよ。絶対失敗なんてしないから。」
『だが…。』
『悪いけどぉ、それ以外思いつかないならぁ、拒否権はないよぉ。』
口を開けても声を出せてない狼さんの様子を見ると、他に思いつけていないみたい。すぐに動かすのを止めて、黙っちゃった。
『…わかった。だが、危なくなったらすぐに呼ぶんだぞ?』
しばらくして、とうとう許してくれた。
「大丈夫!」
少し声が大きくなっちゃった。いいよね?だって、嬉しいんだから!