第一一〇話 親父
だいぶ遅れて申し訳ありませんでした。
六話一気に掲載しましたので、よければ読んでください。
後、ブログ始めました。
犬小屋の屋根裏部屋
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これからは近況をここに書いておこうと思います。
感想とか、リンクとか諸々よければお願いします。
−バン
X-File。結局俺はそういうのに付き纏われる運命なんだろうか…。
警察署のエレベーター内には警官の制服姿の変ちくりんなマスコットが描かれたポスターがあった。“君も警察官になろう”。…勝手にどうぞ。
ここには今俺しかいない。先輩は今まで面会できなかった生き残りに会うために病院に向かってもらった。ここは自分に任してもらったんだ。自分の考えなんて何にも話していないのに信じて任せてくれた。大事な役目でもそうやって信用してくれるのは先輩を尊敬している点の一つだ。
目的の階に着き、歩を進める。
ただ、考えを聞かれても答えることはなかったはず。任務だといえ、これは完全に私情だから…。
いかにもって感じの扉をノックし、開ける。
『…何の用だ?』
扉を開けた先にはでかい木製の机の前に高そうな椅子に座った男。警察署長である、デリル・ハルゼン。ファミリーネームの通り、俺の…。
「親父…。」
『お前が私のことをそう呼ぶのも久しいな。』
口を閉じたまま、歯を噛み締めた。少し唇が動いただろうが、どうでもいい。親父の方はと言うと、机の上に手を組んで座ったままだ。相変わらずの威圧的な態度。
「あれから会ってないのだから当然だろ。」
『なんだ、その事で謝罪でもしに来たのか?』
「関係ないし、そんなつもりもない。欲しいものがあるだけだ。」
頼みごとをするならそれ相応の言い方がある。普段でさえ、こんな口調もしない。でも、相手が親父なのだ。…無理だ。
『何が欲しいんだ?』
「X-File。」
『…駄目だ、帰れ。』
威圧的だった態度がさらにきつくなった。当然だ。息子と言えど、外部に流せないのがX-Fileなんだから。いや、俺達にとってはもっと大きな意味を持っている。
『あの事は諦めろと言っただろう。』
「お袋とは関係ない!それに、今動ければ助けられるんだ。」
思わず怒鳴った。お袋の事が話にあがった。それだけで俺はもう感情を抑えられなくなった。
『…まずは、どういう事か話せ。人にものを頼むならそうしろ。』
俺はなんとか自分を落ち着かせて今の状況を話した。ターシェさんの事件も案の定"X-File"に入れられたらしく、親父の耳にも入っていたらしく、話が早かった。
「だから、その"オーディンの槍"の情報が必要なんだ。一番はじめに使われた事件の話を。」
親父は席を立って、窓から外を見ていた。
『話はわかった。だが、お前は私がどんな人間か分かっているんだろ?』
「それでも警察の中で一番地位の高い知り合いは親父しかいないんだ。背に腹はかえられない。」
なんか使い方間違ってないか?…今はどうでもいい。
『すでに"オーディンの槍"については知っているようだが、それでも話す訳にはいかない。それがルールだからな。事実、私の部下にも話せない。』
親父は外を見たまま動かない。だいたい予想はしてたが、実際言われるとな。
「さっきも言ったろ!早く動かないと、もしかしたら三人目の被害者が―」
俺は言葉を止めた。親父がこっちを向き、指を二本出した。将棋をさすような動作。俺が黙ったのを確認すると、親父は話し始めた。
『ここから私が言うのはただの独り言だ。聞くなよ。』
気づくのが遅かった。部下にも言えないってことは親父は捜査をまともにできないんだ。"オーディンの槍"がX-Fileに入れられたのは、病院にハッキングされ、人を殺すことができる、ということだ。俺たちはそれをもう知っているのだから、それ以外はあくまで事件の内容を話すだけ。ならまだ話せるよな…。俺は黙って親父の話を聞き続けた。