第十一話 風
この人はなんなのだろう。入って来てすぐ寝て、起きたら出口どこだ!って聞いてきて…。あったら私はここにいないわよ。
狼さんは腕に巻いた金属を触りだしてた。何してるんだろ?
『四十階の見取図…の資料室…隠し扉がここだから…』
ぶつぶつ一人で言ってる。外の人はみんなこうなのかな?
今度は部屋を歩き始めた。ホントに何してるんだろ?探しても出口なんてないよ。
『ここか…』
ベットの横で止まって何か取り出してた。赤く光ってる三角の、それを壁につけてこっちに来た。
『危ないから下がった方がいいぞ』
何が?危ない?何で?よくわからないけど、言う通りにしておいた。
「何するの?」
『外を見たことないんだろ?今見せてやるよ。』
外?…どうやって?って、言うまえに、狼さんが何かのボタンを押した。そのすぐ後、
“ドッカーン!”
と、狼さんが何かつけた壁が爆発した。そんなこと、起きるなんて思ってなかったから、体がビクッ、って反応してしまった。
煙りで何にも見えない。でも、“何か”が煙りを吹き飛ばしていく。私にも“何か”がぶつかってきた。痛くないんだけど、押されてる感じ…。
『おいおい、大丈夫か?』
こけそうになってたのを、狼さんが支えてくれた。
「これ、何?」
『これ?…“風”のことか?』
これが“風”なんだ。外の空気が部屋の中に流れているんだ。煙りが晴れると、壁がなくなってた。外だ。すごく綺麗だった。どこを見てもいろんな色にピカピカ光ってて、まぶしかった。
これが本物の“外”なんだ。見たくて見たくてしかたなかったもの。やっと…見れた。