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第一〇七話 身近な探検

ホントのことを言うと、私は狼さんもトーイッシュも恐くなった。特にトーイッシュ。あんなに冷たくなれるなんて今でも信じられない。私だってまだよく人の命がどれだけ大切なのか、分かっていないと思うけど、スイッチを押すだけで命を奪えるなんてそんな簡単に言っていいものじゃないから。


あんな事をした狼さんだったけど、私に共感してくれた。気持ちを理解してくれた。いつも恐ろしいことをしてる訳じゃない。そんな所を目に焼け付けたかったの。


掃除はテキパキ進んでいった。やっぱり二人の方が早い。高いから私の届かないところにも手が入るから助かる。ただ、毛に埃が付くのがすごくうっとうしそう。払っている姿を見ると少し笑えた。…埃が周りに広がっていくのに気づいたら、笑えなくなった。


狼さんも私に気をつかってくれたみたいでいろいろ話してくれた。一番印象に残ったのはやっぱりあれかな。ここが三階なのにガスがない理由。実はここ、ホントは十三階なんだって。だけど、トーイッシュが不吉だからって、13の1を全部取っちゃったんだって。そんな所は妙に神経質なんだね。


後は私が写真でしか見たことがないような所に行ったことがあるか、とかそんな事を話してた。どうでもいい内容だけど、大切な話。


ゴミを捨てに下に下りた。

バイクが置いている以外は隅の箱しかない空っぽの空間。

金属でできた箱の手前側にある取っ手を引くと中には何もない。狼さんはここだって言ってたし、少し不安になりながらも、中に入れた。後は特に気にするものもなかったし、エレベーターに乗っていつものボタンを押そうとした。そういえば、屋上についてた血が消えていた。きっと狼さんが拭き取ったんだと思う。


それに気づいてもう一つの違和感を覚えた。ここに着た次の日。トーイッシュのお姉さん、ナーシェさんと買い物をして帰って着た時、いつもの階の一つ下、十二階になるのかな?ボタンはガスの届かない階にしか割り当ててないらしくて、十三階にあたる所が下から三番目。その一つ下だから…、やっぱり十二階なのかな。そのボタンに青い塗料がついていたのを覚えている。狼さんやトーイッシュが他の階について話していた事なかったし…。何かあるかなんてわからないけど、消えてるのに気づくと、行ってみたくて仕方がなかった。好奇心ってものなんだろうね。でも、やっぱり何も知らないところだから、恐くもなった。


結局は好奇心が勝って、青の消えたボタンを押した。


エレベーターは普段と変わらない様子で上がっていく。そんなの当然だけど、私の胸の鼓動は高まった。


そこはいつもの場所と変わらないのかもしれない。だけど、全然違っているのかもしれない。私は最初に考えていた目的をすっかり忘れてしまってた。というより、もう満足だったのかもしれない。いっぱい笑えたから。

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