第一〇三話 気分一新
目が覚めると窓から光が入ってきてた。もう朝なんだ。昨日は夜遅くまで起きてたから、まだ眠い。だけど、朝ごはん作らないと…。
眠さで閉じようとする目をこすりながらベッドから起きて、服を着る。昨日は選ぶのが楽しかったけど、なんだか今日は面倒な気がする。眠いからかな?
さっと選んだのを着て部屋を出た。昨日あんなにいろいろあったのに、すごく静か。少し怖いくらい。
食堂に来ても、それは変わらなくて、時間が止まっているかのように静かなまま。あの部屋に戻って来たかのよう。
食卓の上に一枚、紙が置いてあった。
“今日は夜までいないから俺の分の飯はいらないよ。−トーイッシュ”
トーイッシュってこんな字を書くんだ。形が崩れてて少し読みにくい。夜までいないんだ…。ということは、今日は一日ここにいるって事かな。狼さんは仕事以外じゃ外に出ない、って言ってたし。でも、ちょうどいいのかも知れない。ここにきてから毎日大変だったからちょっと休憩。それに掃除しきれてないから、大掃除しよう!
「よーっし、がんばるぞ!」
手をにぎって声を出した。こうした方がやる気がでるからね。誰もいないから結構響いてびっくりした。それに先に朝ごはん作らないとね。簡単なのでいいや。
『突然どうした?』
ドキッとした。いるのを忘れてた訳じゃないけど、起きて来てたなんて。しかも、さっきの聞かれてたなんて…。
『…相棒は今日は向こうか。』
さっき私が見た紙を見つけて狼さんはそう呟いた。どこにいるか知ってるみたい。そんなことより、さっきの聞かれたんだったら、この際、言っちゃおう。
「そうなの!だから、大掃除しようと思うんだけど、手伝ってくれない?」
一人より二人の方が効率いいしね。狼さんはなぜかキョトンとしてる。私、変な事言った?
「…おかしな事言った?」
言葉に出してみた。自分じゃわからないもん。だけど、心配してた程、悪い答えじゃなかった。
『いや、そんなことはない。…そもそも汚したのは俺達だからな。手伝わせてくれ。』
むしろ大成功。そうと決まれば、もっとやる気が出てきた。
「わかった!じゃあ、ちょっと待ってて。何か作って来るから。」
−
そう言って、彼女がすぐに作ったサンドイッチを食べ終わり、掃除の準備を始めた。
掃除なんてろくにしていなかった。だからと言って、という訳で承諾した訳でわない。気晴らしになるというのもあるが…、早い話、見られたくないものもあるんだ。
『まずは溜まった埃を落とそう!』
どうも彼女のテンションの高さがわからない。昨日あんな事があったのに、どうして明るくいられるのだろうか。いや、だからこそなのだろうか。
考えこんでいたせいか、すでに彼女が掃除を始めていたことに気付かなかった。
『手が止まってるよ。ほら、叩いて。』
「…ああ、悪い。」
今は考えるのを止めよう。たまにはいいだろう。