第十話 天然
…どれくらい眠っていたのだろうか…。…何かに顔を触られている。…捕まってしまったのか?だが、身体を縛られている感覚はない。…状況が読めなかった。
目を開けてみると、目の前に女がいた。俺の顔を見ている。
『あ、起きた!』
反射的に起き上がって後ろに下がった。な、なんだここは!?隠し部屋なのか?光の方を目指して…。はっきり思い出せない。目がくらみそうな程真っ白な部屋。窓も何もない。
『ケガ大丈夫?』
さっきの女…いや、少女…か。灰色の髪をした小柄でひ弱そうな印象だ。
「あ、ああ」
そう答えるのがやっとだった。
負傷した部分に包帯が巻かれいた。こいつが手当をしたのか…。どうやら敵ではないようだ。そういえば顔を触られて…。顔に触るとあるべきものがなかった。
「お前、俺の顔を見たな」
見られまいと、鉄製の仮面をつけていたのに見られてしまった。改造とはこれだ。
俺は狼のD.N.A.を組込まれた、いうなれば“獣人”なのだ。もちろん、この実験は違法のもので、成功例が俺だけだから、そんな存在は他にはいない。だから、顔を隠してきたのに、知られてしまった。…消すしかない。
刀に手をかけたときだ。
『すごいよ。外にはアナタみたいな人までいるなんて知らなかった。』
は?何を言ってるんだ…こいつは?刀にかけた手が固まった?
『あ、私、セフィリアっていいます。今までこの部屋から出たことなくて…。だから、アナタが他人第一号さん!』
なに普通に自己紹介してんだよ。しかも、この部屋から出たことがない??…ん?待てよ…。
「おい!まさか出口は…?」
『ないですよ。あったら使ってます。』
…悪夢だ。ここまで来たのに…。だが、まだ諦める訳にはいかない。それはコイツだからないのだ。俺流で探す。