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第四話 ギルドと宿屋と猫耳と★

2016年7月18日 挿絵を追加しました。

2015年12月17日 誤字脱字を修正しました。ご指摘ありがとうございます。


 



 そして1か月が過ぎた。


 今、僕はドルチェ城の城門前にいる。


 見送りはゼロ。まぁそれは仕方ないよな。


 門番に挨拶をして、しばらく拠点となるであろう城下町へ向かう。


 ここから第二の人生がスタートするのだった。







 とりあえず“冒険者”として登録する為にギルドへ向かった。


 これからは自分一人の手で生きていかねばならない。


 特にコレといった生産系のスキルを持ち合わせていない僕のようなタイプは“冒険者”として生計をたてていくのが一番だ。


 この世界は魔神は討伐されたと言っても、各大陸で種族間の争いは続いている。そして野生のモンスターも相変わらず多い状況。“冒険者”でも十分な生活はしていけるというわけだ。



ドルチェ城下町を歩くのは初めてだった。


 訓練期間中にダンジョンへ行く際は王国が用意した馬車に乗って移動していた。だから自由になって街並みを見て歩くのはとても新鮮だった。


 レンガ造りの建物が並び、映画や本の知識にはなるがそこはまるで中世ヨーロッパの雰囲気だった。


 こうしてみるとRPGなどのゲームってよくその世界観だしてるなぁ~と感じる。僕は今そんな世界で生きているんだと思うと冒険心がくすぐられた。


 住宅街・商業地区・工業地区などきれいにわかれていて、王国と呼ぶだけの広さはある。


 ただ、貴族街・スラム街や娼館・奴隷の館などもあり、身分制度が当たり前のように存在している事を思い知る。


 座学で軽く学んではいたがいざそれを目の当たりにすると、自分の常識ではこの世界で生きていけないんだなぁと改めて感じた。


 郷に入っては郷に従えってわけか。直ぐには無理かもしれないけど慣れていかなければと思う。



 ギルドに着くと中は酒場も併設されていて結構な賑わいをみせていた。食事以外にも情報交換をしたり仲間を募ったりしているのだろう。


 今は登録が先なのでギルドカウンターへ向かう。


 カウンターには大企業の受付嬢みたいな綺麗なお姉さんがいた。


「すみません。登録をお願いしたいんですけど」


「登録ですね。ではこちらの用紙に記入をお願いします」


 お城に滞在した1か月の間で文字の読み書きは覚えていた。


 必要事項を記入しお姉さんに用紙を手渡す。



「では、ギルドカードが出来上がるまで簡単にギルドの説明をいたします」



 ギルドにはS~Fまでのランクがあり、依頼を達成しポイントを稼ぐ事でランクが上がる。ただしBランク以上には昇級審査があり合格する必要がある。

 

 またポイントと関係なく‘貢献’によってランクが上がる場合もある。


 ランクは上がるにつれて様々な特権が得られ、難易度が高い依頼も受けられるようになる。


 冒険者の仕事は討伐や護衛・市民の雑用まで様々であり、掲示板に依頼が張り出されている。


 依頼にもランクが設定されており、自分のランクよりひとつ上のランクまでなら受ける事が可能だ。


 受けたい依頼があれば受付で申請し、期限付きのものは期限内に達成する事で報酬がもらえる。


 失敗や期限を過ぎた場合は違約金が発生する。


 討伐などで得たアイテムや素材は冒険者の自由で買い取りもギルド内で行っている。



 以上が大まかに説明された内容だった。


 正直まだ実感がわかないから、やはりこれも依頼をこなして慣れていくしかなさそうだ。



「なるほど。よくわかりました。例えば、偶然2ランク以上のモンスターを討伐した時などはどうなるんですか?」


「そもそも依頼として受けていない以上報酬は発生しませんし、達成ポイントも入る事はございません。

 ただ凶暴なモンスターの討伐については‘貢献’とみなされる場合もございます。

 もちろん、素材などは依頼の引き受けに関係なく買い取らせていただきます。

 まぁランクというのは自分の強さを表すようなものなので、あまり背伸びしない事をお勧めします。命はひとつですからね」


「わかりました」


 そしてギルドカードを受け取った。


 ICカードみたいな感じで表面にはランク・名前・種族・性別・レベル・ギルドポイントが表示されていた。



---------------


ランク:F

名前:ハルト サナカ

種族:人間

性別:男

レベル:13

ポイント:0


---------------



 他にもカードには国外へ行く際の通行証の役目を果たしたり、ギルドに預金すればICカードのようにカードを専用端末にかざすだけで支払いできる機能もあるとの事だった。


 これ絶対に先代の勇者達が発展させた技術だろうなと思う。


 その他にも様々な機能があるとの事だったが、全部聞いてると時間が掛かりそうだったのでこの日はここまでにしてもらった。



「何かわからない事あればいつでもいらしてくださいね。当ギルドは24時間365日営業しています」


 今は依頼を受けている時間もないのでお礼を言ってギルドを後にした。




 さてお次は一番重要な寝床の確保。流石に野宿なんてできないからね。


 ギルドで安くて料理が美味しい宿屋の場所を聞いていたので空きがある事を願いつつその宿屋“黒猫亭”へ向かっていた。



 道中、【鑑定】でステータスを確認する。



---------------


名前:ハルト・サナカ

種族:人間(♂)

年齢:17

職業:風の勇者

レベル:13

HP(体力):5600

MP(魔力):5

STR(攻撃力):17

DEF(防御力):21

AGI(素早さ):20

INT(賢さ):13000

LUCK(運):-37

魔法:風属性魔法 召喚魔法

スキル:【鑑定】【MP自動回復(小)】【無詠唱】【危険感知】【全状態異常耐性50%上昇】【言語理解】【アイテムボックス】【料理】【命中率50%上昇】【魔力制御】


---------------



 うん、相変わらずのアンバランスだ。見る度にちょっとため息が出る。


 この1か月とにかく必死に頑張った。


 午前は座学でこの世界の常識を学び、午後の実技では剣術・魔術の訓練はもちろんダンジョン探索もこなした。


 そうやってほぼ休みなく1か月が過ぎていったのだった。


 なのに僕の場合、レベルが1上がってもHP、INT以外は1しか数値が上昇せず、しかもMPに関してはは全く増えなかった。


 結果としてコレが決め手になったと思う。


 魔術の講師にはMPに関してはもう上昇する事はないんじゃないかと言われる始末だった。


 【命中率50%上昇】【魔力制御】以外にコレと言ったスキルが付く事もなく、最終的に発展には役立たない“ハズレ勇者”の烙印を押されてしまったのだ。


 “ハズレ勇者”となってしまえば国としても養う必要がなく、金貨10枚を渡されて城から追い出された形となり今にいたったのである。



 でも、個人的にはいい結果だったと思う。


 強大な敵を倒して平和をもたらす事を目的に召喚を望んだのに、国の発展に尽くすのが目的ってのも違うかなと感じていたから。


 それよりはもっと自由に生きたい。せっかくの第二の人生を過ごせるわけだしね。


 召喚前にシルフが「異世界で生きていくには何かしら目的を持つ事が大切」と言っていたのを思い出した。


 もっともだ。よし、当面は“この世界で生きる目的をみつける事”を目標に生活していこう。


 決意をあたらに僕は宿屋へと足をすすめるのだった。







 “黒猫亭”の前に着くとその宿は衛生的に大丈夫かと思える外観だった。


 しかし、いざ入ってみると清潔感溢れる空間となっていた。


 所々に猫がいてキャットタワーもある。まるで“猫カフェ”だな。


 実は僕は猫大好き。絶対にここで宿泊したいと強く思った。



「すみません。一人なんですけど、部屋空いてますか?」


「うにゃ、お客様ニャン。いらっしゃいませニャン。“黒猫亭”受付をやってるチョコと申しますニャ」


 そう言って奥の方から出てきたのはメイド服を着た猫耳の少女だった。





挿絵(By みてみん)

【イラスト:サトウユミコ様(@YumikoSato25)】





 って、猫耳ー!しかも尻尾もあるしぃ~。めっちゃ可愛いんですけど~。


 猫耳はピコピコ動いてるし、尻尾は左右同じリズムで揺れてるしぃ~。


 マジかぁ。可愛いなぁ~、可愛いなぁ~。


 テンションが一気に上がった。



「あのぉ~、お泊りニャンですか?」


 猫耳のあまりの可愛さに、ついつい夢中になり自分の世界に行ってたみたいだ。


 いかん、いかん。この世界には獣耳の亜人もいるって学んだじゃないか。


 触ってみたい気持ちをグッと抑える。



「はい、一人なんですけど空いてますか?」


「空いてるニャ~。何泊のご予定ですニャン?」


 くぅ~、“ニャン”ってのがいちいち可愛いではないか。


「え~っと半永久にお願いします」


「ニャ、ニャ、ニャ!半永久ってお客様何言ってるニャン。ここは売家じゃないニャーよ。一応宿屋なので最長1年で期間を決めるニャ。もちろん更新は可能だニャー」


「そっ、そうでしたか。ちなみに宿代っておいくらですか?」


「一泊2食付きで銀貨3枚ニャン」


 この世界の貨幣には金貨・銀貨・銅貨があって、金貨1枚=銀貨100枚、銀貨1枚=銅貨100枚で流通されている。

 感覚的には金貨1枚が10万円、銀貨1枚が千円、銅貨1枚が10円といったところだ。


 そう考えると、一泊2食付きで銀貨3枚は激安に思える。

 国王からもらった金貨10枚が手元にはあるが、それが今の全財産なのでむやみやたらと消費するわけにはいかない。


 とりあえず1か月滞在する事を決め会計を済ませた。



 彼女が「お部屋はこっちニャ~」と案内してくれる途中にどうしても気になっていた尻尾にそ~っと触れてみた。


 すると『フギャー』と悲鳴と共に一瞬で尻尾の毛が逆立ち、「何するの!このエッチ‼」と彼女の振り返りざまビンタが飛んできた。


 ビンタをくらい呆然としている僕にチョコはワナワナ震えながら言った。


「全く何を考えてるニャ。うちはそういうお店じゃないニャよ。そう言う事したいなら娼館にでも行くのニャ」

 


 通されたのは2階一番奥の角部屋だった。机とベッドしかないシンプルな内装だが埃ひとつないよく清掃された綺麗な部屋だった。風呂・トイレ付きだったのも有り難い。


 部屋に入った僕はというと人生初の土下座中。


 地面に頭をこすり付ける様はやはり屈辱的ではあるが、今回は全面的に自分が悪いので率先しての土下座した。


 どうやらこの世界で尻尾を触る行為はお尻を触っているようなものらしい。


 公衆の面前でしかも初対面の人にいきなり触られると…そりゃあ殴られるわな。逮捕されないだけマシってなものか。


 これから長いお付き合いになる宿屋なだけに、自分が異世界人の“風の勇者”でこの世界の常識をまだしっかりと理解できていない旨を伝え平謝りの末に今回は許してもらった。


 と言っても、お客とのトラブル慣れしているのかそれ程怒った様子ではなく、むしろ僕が“風の勇者”だった事に驚いていた。


「あぁ、あニャたが噂の“ハズレ勇者”ニャ~」


 “風の勇者”=“ハズレ勇者”が既に噂になっているって事が少々気になったが、まぁ広い心で受け入れよう。僕は無能なんです。そして、これからも常識外れの事してたら遠慮なく指摘してくれるようお願いした。


 ちなみに獣耳に触れる事は尻尾と違いハレンチ行為には当たらないが、やはり親しい関係じゃないと触らないほうがいいとの事だった。


 でも、あのもふもふ感で癒されたいと強く思う。


 これは是非とも獣耳を触らせてくれる亜人と友達になろう。


 そしてあわよくば、同意のもと尻尾を触らせてもらって…


 初めて接した猫科の亜人を前にテンションが上がりっぱなしだった。






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