p2 ドアの向こうには
俺が次に目を覚ましたのは人が沢山人がいるところだった。
「えーっと…ナニゴト?」
目の前には三十人はいるだろうか…行列が出来ていた。遠くで、「はーい、次のかたー」と呼ぶ声が聞こえる。
(ちょっと状況を整理しよう。えーっと…
俺は異世界へと行く方法を見つけてそれを試した。
でも何も起こらなかったから寝た。
目がさめると暗い部屋の中にいた。そこでーーー)
「オムニス!」
そう叫んだ俺は周りから睨みつけられた。あー…ちとうるさかったかな?
周りにすいませんすいませんと謝りながら思い出していた。
(あの時オムニスはなんて言っていた?確か…)
『ここはパンタシアムンドゥスに通じる部屋だよ。…一名様ごあんなーい!』
(そうだ!パンタシアムンドゥス!)
俺はそれがどういう意味か知っていた。
同時にそれは中二病が役に立つ時もあると証明された瞬間だった。
「えっと、確か『幻想世界』だったかな…?」
そこまで考えたその時、
ーーートントン
と、肩を叩かれた。
振り向くと180センチはありそうな長身の男性が立っていた。
「…なんでしょうか?」
恐る恐る尋ねてみると男性は無言で、クイっと前の方を指差した。前を見ると、列はだいぶ進んでおり次は俺の番だった。
「ごっ、ごめんなさいっ!」
と、言いながら俺は急いでカウンターへ向かった。
「お待たせいたしました。本日はどのようなご用件で?」
カウンターのお姉さんに聞かれた俺は凄く困っていた。
(用件って…全く知らないんですけど!!!)
とりあえず、ここへ連れてきた犯人の名前を言ってみる。
「あの…オムニスってやつに連れてこられたんですけど…」
「あぁ、はい!オムニスさんですね!お待ちしておりました。奥へお進みください」
あれ?通じた?
奥へ通された俺はさらに待っていた係員らしき人に連れられて一つの部屋に入った。
そこで待っていたのはさらに係員らしき人。
その人に、「必要事項を記入してください」と言われ渡された用紙を見て俺は頭がこんがらがった。
回答用紙
・個人情報
※ここにご記入していただいた個人情報は安全、安心の元使用させていただきます。
・質問事項
氏名、フリガナ
性別
年齢
血液型
生年月日
特技
希望の性別
パーティーメンバーの有無の希望
パーティーメンバーの性別の希望(パーティーメンバーを希望した人のみ)
(うん。何書けば良いんだろう。特技まではわかる。わかるけど…その後って一体何!?希望の性別って!?パーティーメンバー!?)
これじゃまるでゲームみたいだと思いながらも空欄を埋めていく。
(さっさと終わらせて帰ろう。そうしよう)
そう考え、すらすらと書いていく。
(希望の性別…女って書きたいけど…男にしておくかぁ。パーティーメンバーの有無?有りだろやっぱり。パーティーメンバーの性別。女の子だよね?常識だよね?)
「は、はい。どーぞ」
係員らしき人に用紙を渡すと、何処かへ行ってしまった。
そして、しばらくして戻ってきたその人は新しい紙を何枚か持ってきた。
「ご希望の世界などはありますか?」
「え?希望の世界?」
「はい。ご希望などがあれば」
広樹は全く意味がわからなかったが、頭に浮かんだものを言った。
「じ、じゃあ日本みたいな感じでお願いします」
「…」
すると係員らしき人は少しの沈黙の後、「わかりました」と残して奥の部屋へ消えた。
次に奥の部屋から出てきた人は男の人だった。
「ではマニュアルをどうぞ」
そう言って俺に渡されたそれは軽い辞書と同じくらいの厚さがあった。
(これがマニュアルかよ…辞書の間違いじゃ?)
そこまで考えた俺は役員の人に、
「それでは楽しいライフを」
と言われてドアから押し出された。
ーーーそしてドアの向こうには床がなかった。