p10 精神汚染度63%
「さすが我が宿敵の手先だけある。この俺を飲み込むなんて…」
蛙に無様にも飲み込まれてしまった俺は絶賛黄昏中だった。
妙にヌメヌメする蛙の胃の中はところどころテカっていて生臭くて…
とにかく最悪な所だった。
しかも、俺が座っているこの場所。
まぁ、胃の底だと思うんだが壁とは違ったヌメヌメの感触が…
それに妙に液体っぽい。これが胃液というものなのか?
その疑問はすぐに解明された。
指が何か硬いものに当たった。
俺はそれを持ち上げてみる。
このブヨブヨした感触と、緑っぽい色。
俺は全てを察した。
「ぎゃあ!?さ、さ、さっきの芋虫!?」
そうだなそうだったな!
さっきこいつはさも美味しそうに芋虫を食ってたな!
それを認識した瞬間、ただでさえ気持ち悪いこの場所がさらに気持ち悪く思えた。
「あ、やべ。吐きそう…」
そんな風に、自分が死にかけているということも忘れて騒いでいると、いきなり胃の中に振動が走った。
どうやらこのクソ蛙が移動しているらしいが、振動するってことは…
「ウプッ…ぎゃ!?ちょっ、おま…ウギャア!」
芋虫の体液がどんどん降りかかってくる。
必死に顔を覆っていると、いきなり目の前が真っ白になった。
あ、死んだのかと思ったが実際そうでもないらしい。
『大丈夫ですか?広樹さん!』
あれ?今シャラの声が聞こえたような…
とうとう走馬灯を見てしまったのか、もう先は近いな。
そんな風に考えているとまた声が、今度は軽い打撃とともに降りかかった。
「しっかりしてください広樹さん!」
「し、シャラ!?……………助けてくれたのは嬉しいがそれは酷いと思う」
シャラは木の枝で俺のことをつついていた。
まぁ、緑色の体液で光っている俺の体に触ることを躊躇うのは当然だろうけど…
「す、すみません…」
「あ、いや良いよ。それよりどうやってあの蛙を倒したんだ?」
「いえ、そんな凄いことはしてないんです…ただ初期魔法で体内から爆発させただけです」
シャラは木の枝を急いで引っ込めながら軽く説明をする。
それにしても、さすが魔法使い。
あの蛙を体内から爆発させてしまうなんて………ん?
体内から?
「あのー…シャラさん?知ってるとは思いますけど聞きますよ?俺が体内にいるって知ってて爆破したんですか?」
それを聞いたシャラは気まずそうに目を逸らしていく…
しらばっくれているつもりなのかは知らないがその態度をとるということはつまり…
「おい!危うく蛙に消化される前に細かく爆破されるところだったよ!」
「あ、あはははは…」
俺はジトーっとシャラを睨みつけ、やっぱりやめた。
今はお風呂が最優先だ。
こんなベトベトのヌルヌル状態じゃろくに話もできない。
というわけで、俺はシャラを連れて朝っぱらから銭湯に行くことにした。