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40 選ばれた者達

休みがあったので、早いですがアップしました。

あと一話で終わるかな? がんばります!

 にこやかに部屋に入ってきた雷翔に、ウィナードさん達は驚いた顔をした。鈴さんがさりげなく雷翔の前に立ち塞がる。

「見たことない顔だけど、どちら様? ジュジュの知り合い?」

 気さくに声をかけているけれど、よく見るとその目は雷翔をしっかり見据えている。雷翔の正体を見いだせる印を探しているみたいだ。わたしと初めて会った時も、こんな感じだったんだろうか? 客観的に見て、初めて彼女の性質を知った気がした。

 話しかけられた雷翔は、その視線や疑いを全く感じていない様子だ。

「ああ、俺は――」

「知りません!」

 慌てて雷翔の言葉を遮る。

 もうウィナードさん達にはわたしの正体がばれている。赤髑髏の被害者だと思われていた状況だったら、助けてくれた恩人で済ませることができるけど、今知り合いだと言ったら、雷翔まで魔族だとばれてしまう。

 叫んだわたしに一番早く反応したのは、雷翔だった。

「おい! なんだよそれ。心配して必死に探してたんだぞ」

「知りません! 人違いです!!」

「何、怒ってんだよ! 一人にさせたのは悪かったって!!」

「だから、違います!!」

 雷翔! 空気読んで!!

 必死に他人のふりをしようとするけど、雷翔には全く通じていない。わけわかんねぇ、と呟きながら頭をかいている。

 それでも何とかあがいていると、

「おい」

「ひ!」

 冷たい声に、恐る恐る声の発信源に目を向ける。

 腕組みをして、絶対零度のまなざしでこちらを見ている帝王様のお姿が。

「勝負はついてる。お前の名前は、俺のものだったな」

「はい……」

「お前の命は俺が握ってる。分かってるな?」

「はい……」

「話せ」

「……はい……」

 絶望。

 蛇の前の蛙とか、クモの巣に捕まった虫とか。こんな気分なんですね……。

 もうわたしの命はジェイクさんに握られている。彼の命令は絶対だ。

 でも、わたしの言葉で雷翔に迷惑をかけてしまうという事実が、わたしの口を重くさせた。あのー、その……と言葉を濁すわたしに、ルークさんが尋ねてきた。

「ジュジュ。もしかして、この人も魔族だか?」

「えっ! ええ!?」

 言い当てられて、思い切り動揺してしまう。

 混乱するわたしを、呆れたような顔で雷翔が見下ろした。

「お前……ばれたのか?」

「魔族!? ちょっと、どういうことだい!?」

 その隣では、驚きのあまり大声で叫ぶおかみさん。

 部屋の中は動揺やら驚きやらで満たされて、どこから手をつけていいか分からない状況だ。

 ああ、もういっそ気絶したい。


 わたしのノミのような小さい心臓は、なぜかこの時に限っては丈夫でした。

 そうそう都合よく気絶できるわけもなく、この狭い部屋で勇者一行プラス雷翔プラスおかみさんという、決して接点が生まれなさそうなメンバーに取り囲まれて説明を促されているわけで。

 きらきら青く輝く印が乗せられているテーブルを中心に、わたしの生い立ちから経歴まで全部白昼に曝されました。

「魔王候補ねぇ……」

 おかみさんが呟く。その視線が、わたしの頭からつま先まで何度も往復しているのが、見なくても分かります。ですよね! そんな反応ですよね!!

「あたしには、普通の女の子に見えるけどねぇ。魔族とかも信じられないし……あんたも魔族には見えないしねぇ。どこかに目印とかあるのかい?」

「目印というか――ま、普通大抵魔族は人間と違う姿形をしてるんだけどな。こっちに来た時はばれないように姿を封じてる」

「ジュジュもかい?」

「いや、こいつは元からこんな感じ」

「……人間にしか見えないけどぇ」

 繰り返さなくても分かってます!

 と言うか、おかみさん順応性高いですね! 雷翔も普通に会話してるし!!

 ちょっと、雷翔さん。人間に正体ばれたらまずいんじゃなかったんですか??

「本当に魔族っているもんなのねぇ。あたし、初めて見たわ」

「おらもだべ」

 鈴さんとルークさんの会話もなんかほのぼのしてるし!!

 一人だけ焦っているわたしがおかしいみたいじゃないですか!! ぼっちか! わたしだけのけ者ですか!!

 耐えきれずに、わたしは雷翔の服の袖を引っ張った。

「雷翔! 魔族だってばれたら殺されるんじゃないの!?」

 小さい声で聞いたつもりだったけれど、どうやら他の人にも聞こえていたようだ。

 一瞬の間が空き――爆笑。

 なんでぇぇぇ!?

「な、なんで笑うんですか!」

「いや、ホント、ジュジュ面白い! かわいい!!」

「何がです……うわ、ちょ、鈴さん苦しい!」

「ああ、そっただこと思っとったから、必死に正体隠してたんだか」

「言ってたじゃない! おばば様も雷翔も白亜様も、ばれたら終わりだって言ってたじゃないのぉぉ!!」

「ま、確かにな。でも、ギルドニア国――ここのことだけど、ここはそこまで狭量な国じゃないから。国王も魔族と人間のハーフだし」

「なにそれ! 聞いてない!!」

「地理のこと、まだ勉強してなかったのか? でも、この国は特殊な方だから。全体的に見たら、魔族だってことは黙ってた方が身のためってこと」

 なにそれぇぇ……。

 力が抜けた。ぐったりしたわたしを、鈴さんがぎゅうぎゅう抱きしめる。それを拒絶する力も残っていません……。

「魔族ってのは、めったにお目にかかれないレアな生き物っていう認識が強いのよ。だから、見つけ次第殺さなきゃなんて考えてる人はあまりいないんじゃない? あたしも魔族に会うのは初めてだけど、こんな普通の子だとは思わなかったわ~」

「でも、確かに魔族だってばれるのはまずいかもな。それこそ攫って売り飛ばそうとされたりするんじゃないか?」

「あ~、有り得る」

 なんですか。珍品扱いですか。

 何はともあれ、今は命の危険が無いようです……。

 よしよしとわたしの頭をなでながら、鈴さんが首を傾げた。

「というか、その前の魔王とかいうやつも、なんでジュジュみたいな子を選んじゃったわけ? 話によると、弱くて魔族としてはだめだめだったんでしょ? それに、魔王には優秀な息子とか居たとかいうし……なんで?」

 それはわたしも聞きたいくらいだ。

 鈴さんは憐れむようなため息をついた。

「ホント、ジュジュって災難続きの子ね……魔王候補にはされるわ、魔族に追われるわ、逃げた先ではこんな奴に捕まっちゃうし」

「俺の事か?」

「当たり前でしょ! あんたの方が魔王と言われて納得できるわよ!!」

 鈴さんの言葉に、おかみさんが呆れたような声をだした。

「魔王候補がジュジュで、勇者がジェイクとはね……魔王と言い、ギルドニア国王と言い、見る目がないというか、もっとしっかり人選できなかったもんかね」

 ごもっともです。

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