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39 告白と再会

衝撃の事実が発覚。プラス、やっと会えました。

「ジュ……ジュジュ!」

 あれ……?

 目を開けると、ルークさんと、その肩に乗っているクーファの心配そうな顔が見えた。それにここは……すごく見覚えがある。宿屋の、わたしが使っていた部屋だ。

「なんでここに……?」

「ジュージュ! 大丈夫カ!?」

「ああ、無理に起き上がんでねぇ!」

「いた……」

 ベッドから起き上がると、後頭部にズキンと痛みが走る。

「えーと……わたし、なんで倒れて」

 言いかけて、記憶が蘇ってくる。

 勇者レイン――ウィナードさん、ではなく、ジェイクさんと対峙して。……はい、もう瞬殺でしたね!!

 動揺した隙をついて攻撃する作戦は、完全に失敗。というか、むしろこっちが動揺しちゃったしね! びっくりしてたら、ジェイクさんが剣を鞘ごと振り上げて、それ以降は記憶すっぽ抜けてます!!

 後頭部が痛むのは気のせいじゃないですね!

 混乱しているわたしを、ウィナードさん達が心配そうに見てくる。

「大丈夫か? 他に痛い所は?」

「ジェイもやりすぎだべ。何も、気絶するくらい殴るこたぁねがったのに」

 いや、むしろ気絶で済んだことにびっくりですが。

「ジュジュ、大丈夫? これ何本に見える?」

 鈴さんが目の前に指をかざす。

「……2本」

「うん、正解! もう、ジェイ! 女の子の頭を殴るとか、ほんっと容赦ないわね! 少しは手加減しなさいよ!!」

「手加減はしたつもりだが」

 少し離れた場所でジェイクさんがこちらを見ている。

 ええと、これ、どういう状況ですか?

 混乱している間にも、ルークさんはわたしの後頭部のズキズキしたところを触って、怪我を診てくれている。

「あの、ルークさん……」

「ん?」

「どうして助けてくれるんですか? わたし、魔族なんですよ?」

「ああ! そっただ事言ってたべな」

 え、何? 忘れてたの!?

 唖然とするわたしに、ルークさんは明るく笑った。

「いや~、あれはたまげたべな。まっさか魔族だとは思わんかったべ。おらのイメージしてた魔族とは全然違ってたし、何事も自分の目で確かめねぇと分かんねぇもんだな」

「……魔族でも、わたしは異端なんです。こんなに弱い魔族は歴史上初めてだって言われてました」

「そっか。でも、おらにとっちゃジュジュはジュジュだべ。前にも、ジュジュはおらの患者だって言ったべ?」

「でも」

「魔族だろうと魔物だろうと、おらの目から見たらジュジュはただの女の子だべ。気にするこたぁねぇだ。他のみんなもそう思ってるべ」

 言いながら、ウィナードさん達の方を見る。

 彼らは、わたしが正体を明かす前と何も変わらない笑顔でこっちを見ていた。

「確かに驚いたけど、中身は何も変わらないしね」

「って言うか、逆に人を信用しすぎよ! もう少し疑う事を身につけなさい」

「え? 疑うって……ジオさんのことですか?」

「それもあるけど、そうじゃなくって、あたしの事とか」

「鈴さんの?」

 意味が分からず首を傾げると、鈴さんはがくっと頭を下げた。

「あんた……あたしがただの親切なお姉さんだとか思ってるでしょ?」

「鈴さんは親切ですよ」

「だーかーら! あたしはただ親切であんたの傍にいたわけじゃないの! あたしはジュジュを見張るために傍にいたの」

「わたしを?」

「そ! 勇者の地位を狙う馬鹿共は結構いるのよ。だから、初めはジュジュもそいつらが仕掛けてきた罠かと思ってたわけ。今まで赤髑髏から逃げてこれた子なんて一人もいなかったし、赤髑髏を探している間に被害者と遭遇するなんて出来すぎだと思ってたのよ」

 そうか。わたしを疑っているのはジェイクさんだけじゃなかったんだ。

 ショックではないけれど、鈴さんまでわたしを疑っていたのは意外だった。

「でも、ウィナードに取り入ろうとする様子もないし、武器も持ってないし。毒殺でもするつもりかと調理の様子を見たけど普通に作ってるし」

「毒殺!? そんな、食べ物を粗末に扱うことはしませんよ!」

「うん。分かってる」

 なぜか鈴さんにポンポンと肩を叩かれる。

 なんでそんな優しい目で見るんですか、鈴さん。なんか情けなくなるんですけど……。

「それに、ウィナードの事を完全に勇者だと信じ切ってたしね」

「あっ、そうです! 鈴さん、どういうことなんですか!? 勇者レインって、ウィナードさんじゃないんですか!?」

「うん」

 あっさり肯定してきた!

「なんでそんなこと……。あ、勇者を守るためとか」

 さっきの話からすると、勇者は結構危険な立場みたいだし。勇者を守るための影武者がウィナードさんっていうこと?

 必死にこんがらがる情報をまとめようとしていると、ウィナードさんが小さくため息をついた。

「それについては、俺から話すよ。まず、ジェイクのことだけど……ジェイクの名前はさっきも言ってた通り、ジェイク・レイン。ギルドニア国の勇者。それは間違いない。で、俺はウィナード・レイン。ジェイクの兄」

 ……ええええ!!!??

「おお、お兄さん!?」

 似てなっ! 似てない!!

 思わず二人の顔を見比べてしまう。

 苦笑いを浮かべているさわやかな青年と、しらけた顔の冷たい感じの青年。……ものすごい対称的なんですが!

 ……あ、でも。よくよく見ると、目の色は二人とも青い。ウィナードさんは晴れた空みたいな色で、ジェイクさんは濃い青だけど。

 でも、よーく探さないと共通点は見つからないし、今も目の色以外の共通点が見つからない。

「実の兄弟よ。両親とも同じ」

 もしかして、義理の兄弟? とか思い始めていたわたしの考えを読んだのか、鈴さんが追加で教えてくれる。

 本当の兄弟ですか……。

「……そういえば、ベルナンドさんのお家で兄弟がいるって言ってましたよね」

 ウィナードさんが、申し訳なさそうに話し出す。

「ああ、それは俺の事。あの時は、“勇者レイン”として対応してたから。ジェイクって、あんな性格だろ? だから、ギルドニア国の大臣方から、勇者としての使命を全うするように見張って欲しいって頼まれて」

「泣きつかれた、の間違いでしょ」

 呆れたような声で、鈴さんが割って入ってきた。

「元々ジェイは勇者をやるつもりなんてなかったから、世話役で兄がついてきたのを良い事に、勇者の仕事を押し付けちゃったわけ。勇者の任命は城内で行われるから、勇者の顔を知っている人なんてそうそういないし、二人とも“レイン”だから身代りにはもってこいの人材だったのよ。ウィナードは断固として拒否してたけど、ジェイは国の依頼とか困った人をあっさりスルーしちゃうもんだから、尻拭いに奔走しているうちに、勝手に“勇者”だって認識されちゃったって感じ」

「ああ……」

 うん……すごく、すごく納得できた……。

 同情に満ちた目で見てしまい、ウィナードさんはばつの悪そうな顔をした。

「あいつが勇者だって説明しても、初めは誰も信じてくれなかったし……“勇者”に失望しそうな人も出てきそうだったし……でも、俺から“勇者”だって名乗った事はないぞ」

「自分から言わなくても、“勇者一行”を引っ張ってたら勇者だと思っちゃうでしょ! あたしだって同じように思ってたし」

「鈴さんも、ウィナードさんを勇者だと思っていたんですか?」

「あたしも“勇者レイン”を殺そうとしていたからさぁ」

 え。

 ……今、さらっと凄い事言いませんでしたか?

 思わず凝視してしまう。鈴さんは、カラカラと明るく笑いながら話を続けた。

「あたしねぇ、昔は暗殺業をしてたの。で、勇者レインの抹殺っていう依頼が舞い込んでね。結局計画倒れな上に、さっきジュジュがやったのとおんなじようにジェイクと名前を賭けて決闘みたいなことをしちゃって、惨敗。勇者業をウィナードだけにやらせるのも手間がかかるから手伝えって言われて、まあ今じゃ勇者一行の仲間入りって感じ? だから、ジュジュと似たようなもんなのよ」

 一緒一緒、と笑い飛ばす。いや、それ笑い飛ばせる内容なの!?

 唖然としていると、コンコンとノックの音がした。

「開けるよ」

「はい、どーぞー」

 おかみさんの声に、鈴さんが答える。

 扉を開けると、おかみさん。と。

「ジュジュ! 目が覚めたんだね、よかった!! 全く、一体何があったんだい!?」

「まあ、ちょっと色々あって。後でちゃんと説明するわ」

「勇者一行がついていながら、なんでジュジュが怪我して帰ってくるんだい! 全く、ウィナード、しっかりジュジュを守らないと、もう店に入らせないよ!!」

「す、すみません……」

 わいわい言っている間、わたしの目は扉の向こうに釘付けだった。だって、そこには。

「良かった、やっと会えたな」

 雷翔が。

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