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27 髪飾り

うだうだ続く感じで本当にすみません(-_-;)

展開進める様に頑張ります

 部屋の中には、所狭しとドレスやら装飾品やらが広げられていて、足の踏み場がない状況だ。

 その中で、鈴さんとアンさんは生き生きと服を選んでいる。

「ジュジュ、ちょっと来て」

 鈴さんに声をかけられ、近付くと、体の上から青いドレスをあてられた。

「ねえ、アン。これなんてどう?」

「青ですか……似合いますけど、もう少し明るい色の方が良くありませんか? この黄色のドレスはどうでしょう」

「うーん……。確かに似合うけど、フリルがね……ジュジュって可愛い系の顔立ちだから、幼く見えちゃいそうだわ」

「あー、なるほど……では、こちらの緑色の方は?」

「ちょっと地味ね。それなら、これはどう?」

 楽しそうにしている二人に完全に置いてけぼり状態だけど、今二人が選んでいるのはわたしの服らしい。

「あ、あの……わたしはこのままでも」

 二人の会話が途切れたタイミングを見計らって声をかけてみる。すると、二人が揃ってこちらを見た。

「だめよ」

「だめです」

 声も揃って拒否された……。

「あのね、今日はメイジェスの感謝祭なのよ?」

「そうです! 今おしゃれをしないで、いつするんですか!」

「他の人達もばっちりおしゃれしてくるのよ? そんな普段着のワンピースじゃ浮いちゃうでしょ!」

「で、でも……」

 この部屋に散らばっているドレスは皆、あの奥さんの物だ。朝食の時にわたしが感謝祭に行くことをウィナードさんから聞くと、何故か張り切って大量のドレスを用意してきてくれた。

 どれを着ても良いわよ、とにこにこしながら言ってくれたけれど……。

「誰かの服を借りるなんて、緊張しますし……。それに汚してしまったらと思うと」

 綺麗なドレスを着られることに、正直不安しかない。

 素直に気持ちを打ち明けると、鈴さんはカラカラと笑った。

「なぁに、そんなこと気にしてたの? 大丈夫よ。あの奥さんだって汚れるのを承知して貸してくれたに決まってるでしょ!」

「そうですよ、ジュジュ様。お気になさらないでください。奥様の事ですから、汚れたらすぐ別のドレスを新調なさいますわ」

「流石、ベルナンド商会の奥方よね~。太っ腹! ……あ、これいいんじゃない!?」

「あ、それは良いですね! お似合いになられそうです」

「そうよね! ほら、ジュジュ、これに着替えてみて!」

 ええ~……。

 わたしの不安をよそに、またドレス選びが始まってしまった。

「でも、あの」

「いいから! あたしも出掛けなくっちゃいけないし、早く着替えて!」

「は、はい……」

 結局断れずに、アンさんには髪のセット、鈴さんにはメイクまでされました。

 ああ……こんなに流されてばっかりで本当に大丈夫なのかな、わたし……。


 肩にクーファを乗せ、アンさんと鈴さんと一緒に、居間へと足を踏み入れる。

 大きなシャンデリアや立派な暖炉のある、ふかふかの絨毯が敷かれた部屋には、この家の主人ルミエールさんの奥さんがいた。

「うわ」

 隣で鈴さんが呟く。その気持ちは凄く分かった。

赤い布が張られた豪華な椅子に座っていた奥さんは、いつも以上にまばゆい姿をしていた。銀色の目がチカチカするようなドレスに身を包み、結いあげた髪には首が痛くなりそうなほど多様な飾りがつけられていて、もはや芸術と言って良いほどだ。

 わたしを見た奥さんは少し目を丸くした後、にっこりと親しげな微笑みを浮かべた。その事ではっと我に返り、お礼を言おうとしていた事を思い出す。

「あの、ドレスを貸して頂いてありがとうございます」

 ええと……スカートを軽く持ち上げて、右足のつま先を左足の後ろで立てる。膝を軽く曲げて、首を曲げないで背筋を伸ばしたまま腰から頭を下げる様に……。

 魔王城で白亜様に習ったお辞儀の仕方を頭の中で復唱する。

「あら……あなたが貴族っていうのは、本当みたいね」

 奥さんが少し目を丸くした。

 よし、及第点みたいだ!

 心の中でガッツポーズをしていると、奥さんが小さく手招きをした。近付くと、頭の上からつま先までじっくりと眺められる。

「あ、あの?」

「……うん、流石アンね。洋服の選択はばっちりだわ」

 アンさんと鈴さんが選んだのは、淡い桃色のドレスだ。所々に白いリボンがあしらわれていて、膝下程のスカートの部分はふわりとしている。今奥さんが着ているような本格的なドレスというより、素材の良いワンピースという感じで、少しだけ安心して着る事が出来た。髪は緩く編み込んで、胸の方に垂らしている。

「有難うございます。鈴様も一緒に選んで下さって、メイクもして下さいました」

「まあ、鈴様はメイクがお得意なのね。私もやってもらいたいわ」

「あー……そうね。考えときます」

 明らかに目をそらして答えている鈴さんと、にこやかに「お願いね」と言う奥さん。微妙な空気が流れると、扉の方から足音が近付いてきた。

「あ、旦那が戻ってきたみたいね。ほら、男性の準備って早いでしょう? あなた方を待っている間に庭の方を案内していたのよ」

 奥さんが言い終わるとほぼ同時に、扉が開いて、ルミエールさんと、ウィナードさん達が居間に入って来た。

 わたしの姿を見て、ルークさんが目を丸くする。

「あんれぇ、ジュジュ! きれぇな格好だなぁ。よぉ似合っとるだ」

「あ、ありがとうございます」

 真っ直ぐな褒め言葉に、くすぐったい気持ちになって、えへへと照れ笑いをする。

 ウィナードさんが、同意するように頷いた。

「本当に似合ってるな。凄く可愛いよ」

 優しげな微笑みに、ドキッとしてしまう。

 その途端、わたしの隣にいたアンさんが、「ひぅっ!」としゃっくりをしたような声を上げた。

 思わず隣を見ると、アンさんの真っ赤な顔が。トマトみたい……というか、異常な程赤い。

「ど、どうかしましたか?」

「なんでもありません! 大丈夫です!!」

「そうですか?」

 激しく首を振られて主張されると、それ以上は何も言えない。体調が悪いとかじゃないよね……? さっきまで元気にドレスを選んでいたし。

 考えていると、ぽんと肩を叩かれた。

 振り向くと――凄い不機嫌そうなお顔が。

「ジェ、ジェイクさん? なな、なんでしょう??」

「飾りは?」

「飾り……ああ! す、すみません! すぐつけます!!」

 そうだ! アンさんが髪をセットしてくれた後につけようとして忘れてた!!

 慌ててポケットから髪飾りを出す。その瞬間。

「ちょ! は?」

 鈴さんがすっとんきょうな声を上げた。

「え?」

 振り向くと、その隙にさっと手から髪飾りを取られた。すっと左側の頭にその飾りが添えられる。

 その途端。

「まぁぁ! そうだったの!」

 奥さんの黄色い声。

 え? 何が?

 きょとんとするわたしに、奥さんはしたり顔でうなずいていた。

「気付かなかったわ。てっきりレイン様かと思っていたけれど、違ったのね」

「そうかそうか。でも、それなら良かった! ジェイク様ならレイン様より問題は少なそうだ」

「そうだったんですね! あたしもてっきりレイン様だと思ってました。ジュジュ様! 今度色々お話を聞かせてくださいませ!!」

 ルミエールさんは満足そうに頷き、アンさんは興奮した様な顔でわたしの手を握ってぴょんぴょん跳ねた。

「ええと……?」

 何の事ですか?

 取りあえず近くのジェイクさんに、視線で助けを求めてみた。先ほどの不機嫌そうな様子はどこへやら、満足そうににやりとした笑みを浮かべていました。

 ウィナードさん達はびっくりした顔をしているし、鈴さんは頭を押さえている。

 説明は……誰にも貰えそうにないです。

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