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17 戦闘

戦闘シーンって、どう書けばいいんでしょう。模索中です…。

 メイジェスまでは、街道をひたすら歩くだけの道のりだ。

 とは言え、わたしにとっては遠くに見える緑の山や、街道の脇道に並んでいる青々とした葉を茂らせている木々、色も形も様々な草花、全てが真新しくて新鮮に見える。青い空も澄んだ空気も、全てが気持ち良い。

 けれど、そういう風に感じているのはわたしだけみたいだ。奥さんは足が痛いと文句を言い続けているし、旦那さんはそんな奥さんを宥めている。旅人さんはそんな夫婦に呆れた視線を送っていた。

「全く、文句があるなら馬車で戻れば良かったのに」

「同感。でもま、しょうがないわよ。勇者に警護してもらうだなんてそうそう出来る経験じゃないし、良い広告になるでしょ」

 なるほど。商人にとって、話題があることは商売にも有利なのか。勇者に守ってもらった商品、とでも言えば興味をひかれる人が出てくるかもしれない。

「ま、とにかくこの護衛の仕事を終わらせないとね」

「んだ。早く王都に行かねぇと。きっとジュジュの家族も心配してるべ」

 うっ。

「あ、ありがとうございます」

「そうか。そう言えば君、記憶がないんだったっけ。心配無いよ。君ならすぐに身元が分かるだろうし」

 え? え? どういうこと??

「あ、あの、それってどういうことですか!?」

「だって、目の色とか髪の色とかかなり変わってるだろ? 俺、結構いろんな国を巡ったけど、そんな色の人には会った事無いからさ。肌の白さとか、髪の色合いとかから察するに北の方の出身っぽいけど……」

「なるほど! ありがとうございます!!」

 やばいやばい! なんかやばい気がする!!

 紫がかった銀髪と、紫の瞳。これは黒煙の島にいた頃、唯一わたしが『魔族』である証に感じられたものだ。けれどそれが今度は邪魔になるなんて……。

 わたしの正体は誰にも明かしちゃいけない。特にウィナードさんたちには。でも、それも時間の問題に感じてきた。

 王都に着くまでの間に、なんとかしなくちゃ。

 でも、どうすればいい? 勇者を倒す方法を考えないと。

「きゃあぁぁ!!」

 突然の絶叫に、はっと我に返る。

 顔を上げると、街道の真ん中に見覚えのある獣がいた。あれは、雷翔を襲った……。

「ウルフか。鈴!」

「りょーかい! ジュジュ、こっち。お二人さんも怪我したくなかったらこっちに来て!」

 名前を呼ばれただけで何をするのか分かったのか、鈴さんはてきぱきとわたしと夫婦と旅人さん、それにルークさんを自分達の背後に立たせた。それが終わるとウィナードさんの隣に立ち、何処からか短剣を取り出して構える。

 そうこうしている間に、獣は3匹に増えていた。

 ジャリ、と足を踏み鳴らし、左の魔物が飛びかかってきた! 狙われた鈴さんの前にウィナードさんが立ち塞がる。盾で牙を防ぐと、長剣を魔物に振り下ろした。魔物が後ろに跳躍してそれを避ける。その間に鈴さんがウィナードさんの背後から躍り出て、右の魔物に向かって行った。素早い動きで短剣を振る。下から振るった短剣は、魔物の右目を潰した。その間に、ウィナードさんに魔物がもう一度飛びかかってくる。けれど今度は盾ではなく長剣が振るわれた。魔物の脇腹を剣が抉る。倒れた魔物にもう起きあがる気配はなかった。

「きゃあぁぁ! いやぁ!!」

「お、落ち着きなさい! だ、大丈夫、勇者様が付いているんだ」

 抱き付いて大声で叫ぶ奥さんを、旦那さんが震える声で励ましている。

 その声が遠くに聞こえるほど、わたしは凝視してウィナードさん達を見ていた。

 強い。

 勇者が強い事は分かっていたつもりだ。けれど、目の前でその戦いぶりを見て、改めてその強さに体が震えた。

 わたしは、あの人と戦わなければいけないんだ。

「ルーク」

 背後から、落ち着いた低い声がした。

 ルークさんと一緒に振り向き、ぎょっとする。

 そこにはジェイクさんの背中と、その向こうに2匹の……。

「こっちにもいるぞ」

「そういうことは早く言うだ! リーダー! 鈴さ! 後ろにも2匹いるべ!!」

「はぁ!? ちょ、無理無理! こっちで手いっぱい!!」

「ジェイク! そっちでなんとかしろ!!」

 ウィナードさんの言葉に、ジェイクさんはやる気の無さ気な声を出した。

「面倒だな……」

「そんなこと言わねぇで、なんとかしてくんろ!」

「お、お願いします!!」

 ルークさんと一緒になって懇願する。と、ジェイクさんが視線だけをこちらに向けた。

「100クオーツ」

「え?」

「100クオーツでやってやる。どうする?」

 ジェイクさんの視線を辿ると、そこにはあの商人の旦那さん。え? それって……。

「命の金額にしちゃ格安だろ?」

「わかった! 払う! 払うから助けてくれ!!」

 にやり。

 ジェイクさんが例の鳥肌の立つ笑みを浮かべたその時、後ろの魔物の一匹が飛びかかって来た。

「後ろっ……!!」

 思わず叫ぶ。

 でも、それは必要のないことだったみたいだ。いつ抜いたのか分からないけれど、彼の左手に握られている剣が飛びかかって来た魔物をなぎ払っていた。

「散れ」

 気だるげに右手を振る。その瞬間、炎が残っていた魔物に襲いかかった。

「ギャン!」

 炎を浴びた魔物は、そのまま踵を返して走り去って行った。

 唖然とする旦那さんに、ジェイクさんがあざ笑うかのような笑みを浮かべて手を差し出す。催眠術にでもかかった様に呆然としたまま、旦那さんは財布からお金を出してジェイクさんの手に渡した。その瞬間。

「お前は何してんだ!」

 スパァン! と良い音をたててウィナードさんがジェイクさんの頭を叩いた。不機嫌そうな顔でジェイクさんがウィナードさんを見る。

「何だ?」

「なんだ、じゃない! お前は勇者一行としての意識が無いのか!?」

「金は必要だろう?」

「金なら国から必要経費としてもらってるだろ! それ以上に貰う必要がどこにある!! 本当にすみません! お返しします!!」

 ジェイクさんの手からお金を奪い、旦那さんに渡すウィナードさん。そのままペコペコ頭を下げた。

 そんなウィナードさんに、ジェイクさんはため息をつく。

「本当につまらないほど真面目な男だな」

「お前が不真面目過ぎるだけだ」

 ぎろりと睨まれ、ジェイクさんが肩をすくめる。そのまま興味を失ったかの様に、あくびをした。

 わいわい話している彼らから少し離れて、わたしは魔物を見た。ウィナードさんと鈴さんが倒した3体の魔物。ジェイクさんが倒した魔物。

 あっという間に倒してしまった彼らの戦いぶりを思い出す。わたしは、彼らと戦える?

 彼らの武器が自分に向いている姿を想像して、ぎゅっと目をつぶった。

 ごめん、雷翔。

 まだ、戦う勇気は出てこないよ。

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