02
突然の雨を避けるべく、彼は鳥居の脇にそびえ立つ杉の木の下でしばらくの間立ち尽くしていた。
幸いにもにわか雨だったようで、数分で雨雲は去っていった。しかし、雨に濡れた服はすぐには乾くことはなく、当然着替えなどは持ち合わせていないため、彼は仕方無く上着を2、3回上下に振り軽く水を飛ばしてから濡れて視界の悪くなった仮面を外し、それを上着の内ポケットに入れた。
雨に濡れ滑りやすくなった石畳を注意深く登ると、鳥居同様半分朽ち果てたようなボロボロの神社のような建物が見えてきた。
彼は白兎に言われたことを思い出した。
━━あの方は鳥居を通り抜けた先の建物にいると思いますので、どうぞお気を付けて。」
ただ一つ、彼は仮面を着けるべきだと言う忠告を忘れていた。
最後の鳥居をくぐり終え神社の敷地を見渡すと、本殿の前に誰かが立っているのが見えた。距離が離れているので詳しく姿はよく見えないが、紫色の着物をまとい僅かに紫がかった銀の長い髪をしたその人物は、彼の探し人に間違いなかった。
彼はその探し人に声をかけるべく、一歩前に出た。すると、どこからか誰かの声が聞こえた。
「死んで。」
その直後、彼は背後からの衝撃で意識を失った。




