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R*Garden  作者: 三狐。
殺人鬼の末路は
1/14

01

「判決は有罪、被告人を斬首刑に処す。」


裁判長は静かに言い放った。

被告の青年はその言葉に動じることなく不気味なほど赤く染まった目で前を向いて不敵な笑みを浮かべていた。

青年の罪状は殺人罪だったが、それは恨みや嫉妬、衝動のようなものでは無かった。彼の目的はただ一つ、『人間の首』を収集することであった。夜が更けるころ青年は顔の半分を覆い隠す仮面を被り、背後から忍び寄り綺麗に首だけを狩りとっていた。そして残された体は無惨にも野ざらしにされ人々に恐怖を与えてきた。その残酷さからいつの間にかこの事件の犯人を誰もが『首斬り』と呼ぶようになっていた。

この世にも恐ろしい事件はおよそ3年に渡り、被害者は90を越えると言われている。

これは極めて異例の事件であった。もし青年が精神異常者なら少しはよかったかもしれないが、残念ながら彼の精神は至って正常と診断された。それは、これらの行為が全て趣味の範囲で行われていたことの証明であった。



刑の執行は月末の夕暮れ、ちょうど事件が起こる時とほとんど同じ状況であった。これは罪人に被害者と同じ苦しみを味わわせたいという被害者遺族たちからの意見であった。


死刑執行の日、空には黒い雲が立ち込めどこからかゴロゴロと雷の音が響き、ただでさえ暗い空を一層暗く染めていた。悪天候にも関わらず恐怖の首斬り殺人鬼を一目見ようと巨大なギロチンの設置された広場には多くの人が集まっていた。中には石を拾っては執拗に投げ続ける人もいた。


処刑台に向かう首斬りはこれから首を跳ねられるというのにも関わらず依然としてニタニタと嬉しそうに笑っていた。それを不審に思った死刑執行人の男が訪ねた。

「お前は何が面白くて笑っているんだ?」

「あぁ、笑っていましたか。それは失敬しました。」

「いや、別に悪いとは言わないがこれから処刑されるとわかっているのに非常に嬉しそうだからな。やはりお前の精神はおかしいんじゃないか。」

「いえいえ、狂ってなんかいませんよ。私は嬉しいんです。自分で自分の首は切り落とせませんからね。こうしてギロチンで綺麗に斬られるというのですから、それはそれは美しい生首になるんでしょうねぇ。」

執行人は何も答えることができなかった。


雷の響く音が近づき空が不吉に光りだした頃、ついに終わりの時が来た。

「刃を降ろせ!」

その一声で刃を吊るしていた紐が切られ、騒ぎ立てる群衆の前で首斬りの首を跳ねようとしたその時だった。


巨大な雷が轟音と共にギロチンに向かって真っ直ぐ落ちた。


処刑台はメラメラと赤い炎をあげながら燃えだし、群衆は散り散りになって逃げ出す者もあれば火を消そうと水を汲みに急ぐ者もいた。


パニック状態になった広場を上空から眺めていたふわふわと浮かぶ『何か』は誰に言うともなく呟いた。

「判決は...無罪だ。」






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