表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルドのチートな受付嬢  作者: 夏にコタツ
理由
45/53

幕間:「懇願」

 私は教会の祭壇の前に立ち、身廊に立つ使徒さんと向かい合っていた。

 使徒さんは言う。


「人の意思を尊重し、衝突を成長の過程と捉えるという貴女のご意志、確かに拝見いたしました」


 拝見した。それはつまり、確認したかったってことだよね。

 魔物に、氷竜に、邪神に、人同士の争い。

 今、こうして対峙することになった彼の誘いに乗って、私は訊ねることにした。


「結局、貴方は何がしたいのですか?」


 私の問いに、使徒さんはいつもと変わらない調子で答える。


「私たちは、やがて来る災厄からこの世界を守りたいのです。しかし、世界がちぐはぐでは彼らに容易く砕かれてしまうでしょう」


 そこまで言った後、使徒さんは目を伏せ、頭を垂れる。


「貴女に、世界を一つにしていただきたいのです」


 答えは決まってる。

 でも私は確かな答えを出さず、代わりに訊ねた。


「断ると言えば、どうなさるおつもりですか?」


 私が素直に承諾するとは思っていなかったらしい。

 使徒さんは頭を上げ、物憂げな笑顔を浮かべる。


「貴女はお優しい。自分のためと言いながら、他者のために尽くしてしまう程にお優しい心の持ち主です」


 都合の良すぎる解釈に、否定を口にしそうになる。

 でも、否定の言葉を挿ませないその言い方に、私は続きの言葉を待つことにした。


「そんな貴女は、多くの邪神が起ち、世界中が魔物で満ちた時、どうなさるのでしょう」


 使徒さんは目を伏せ、語る。

 ……まるで、誰かを悼む様に。


「力弱い者は死に絶えるでしょう。力持つ者もやがて力尽きるでしょう。……そこに成長はありません。未来はありません。悲しみと嘆きが世界を埋め尽くし、絶望と憎悪は新たな魔物を生み出します」


 使徒さんはゆっくりと目を開き、私を見据える。


「そんな時、貴女はどうなさるのでしょう。……何をなさるのでしょう」


 使徒さんは問わず、疑問を口にする。

 その時、光素の減少で堂内が薄暗くなり、頭上の天窓からの光で私にだけ光が降り注いだ。

 まるでこの瞬間を待っていたかのように、使徒さんは深々と頭を垂れ……乞う。



「どうか、世界を御救い下さい。――――女神様」


第三章終了です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ