表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルドのチートな受付嬢  作者: 夏にコタツ
愛と力
21/53

4-3:「大丈夫です」

 正午を過ぎる頃には、大半の人が広場に戻ってきていた。

 戻ってきた人から投票用紙を受け取り、料理を渡す。後は、皆が食事をしてる間に投票結果の集計を終えて、結果の開示と表彰式に移る。……予定だったんだけど。


「イリア、こっちの寸胴終わり!」

「了解です。残りはどのくらいですか?」

「あと十人前ってとこ!」

「こっちもそれくらい!」


 三つの寸胴のうち、中央と左の前に立つシンシアとクラリスが答える。

 その表情からは半笑いの焦りが見て取れ、口調は叫びに近いものがある。


「了解です。支部に行って取ってきますので、何とか持ちこたえてください」


 え、と拍子抜けする皆に曖昧な笑顔を向けつつ、私は支部に足を向ける。

 パタパタとついて来ようとするハクを泣く泣くリアに預けている間にも、押し寄せてくる人の波は止まらない。


「おかわり! まだあるよね!?」

「お前何杯目だよ!」

「あんただって!」


 突き出される皿にまず盛られるのは、純白の米。

 そして、その上に注がれる茶色のソース。刺激的な香りに違わぬ辛さとフルーツ等の隠し味による甘さの融合……。

 長年の研究により完成した、故郷日本のカレーがここに再現される。




 支部に戻ると、留守番役のバルドさんとダレンさんが驚いた表情で迎えてくれた。


「イリア、何かあった?」

「あ、大丈夫です。カレーの補充ですから」


 厨房に入ってエプロンを換え、手を洗ってからメニュー表を見ながらスパイスをブレンドする。

 このブレンドが厄介だった。本場インドとかのカレーは精々十何種類程度なのに、日本の食品会社が出すカレールーは三十種類近くスパイスがブレンドされてる。手に入りにくい上に数が多いおかげで、味を再現するのに苦労したよ全く。

 ……いや、そこまで拘るなって言われればそれまでなんだけどね。


「っと、危ない危ない」


 扉に固定結界をかけて突発的な侵入を防ぎ、必要な材料と機材をテーブルに並べる。

 後は、冷蔵庫や調味料類を巻き込まないように、時空魔術を掛けるだけ。


「――我が望みは、彼方の楽土。星の廻りよ、蛇の枷を解き、無上の世を此処へ」


 任意の空間を切り取り、時間の流れを加速させる時空魔術。


「――ライドフォール」


 これで、この術が干渉してる空間は通常の空間の1000倍の速さで進むことになる。

 発動中は魔力を消費し続けたり、元の流れに戻った際に術中に経過した時間……寿命は消費したままっていうデメリットがある。でも私エルフだし。それ以前にチートだし。


 ということで、調理再開。

 肉、野菜を一口大に切り分け――(中略)――あとは寝かせるだけだ!

 術を解除して、鍋だけに術を改めて発動。1000倍だから、40秒後に解除。

 ……完成っと。

 あとは、この三つの寸胴を広場に持って行って温めなおすだけ。


「あっ……!」


 追加のお米……炊くの忘れてた。





「お待たせしました」


 台車で一つ持って行くと、そこには長蛇の列が出来ていた。

 恐るべしカレーの魔力。寒いときには温まっていいしね。


「待ってたよイリア!」

「温めなおさなきゃいけませんので、もう少し待っていただかないといけないんです。ごめんなさい」

「とんでもない!」


 作業を進める職員の傍ら、私は観客の中から目的の人物を探す。


「ガブリル」


 もくもくとカレーを食べていたガブリルが気づき、もぐもぐと口を動かしながらこちらに向かってくる。

 その肩には相変わらずパーシャが居座っていたけど、どうやらカレーを食べた後らしく、口元に跡が残っていた。ポケットに入れてあるハンカチで彼女の口を拭いながら、改めてガブリルに声をかける。


「ガブリル。申し訳ありませんが、カレーを運ぶのを手伝っていただけませんか?」

「うん、いいよ」


 二つ返事で了承してくれた。

 というか、内容の是非を考えてないんだと思う。

 パタパタと音がして目を向けると、ハクが飛びついてきたところだった。慌てて抱きかかえると、気持ちよさそうに頬ずりしてくる。一人で動き回れるといっても、まだ甘えたい盛りなのかもしれない。


 ハクを連れて支部に向かう道中、私は二人に問い掛けた。


「お二人はその後どうですか?」


 勿論ノーミードから聞いて知ってるけど、この際だから直接二人に聞くことにした。


 再会から今日まで、彼女たちとは何度も言葉を交えてきた。でもその内容は、列島諸国付近の未加盟国の紛争にケリがついたとか、発情期の獣人同士の決闘に巻き込まれて酷い目にあったとか、フォード海で大きな蛇に乗せてもらったとか……そんなことばかり。


 石板関連のことを一切話そうとしてこなかった。

 ただ私からヒントを聞きたいだけなら、その機会は十分あったのに、だ。


 私の問いに、ガブリルは微笑む。


「どうって、見ての通り大好きだよ?」


 そっちじゃねーよ。


「それは見ていれば分かります。二人は、妖精の国には行かないんですか?」

「それは……」


 パーシャが言い淀む。

 私がした質問を意訳すると、フェアリエル化は諦めたの? っていうこと。


 二人……というかガブリルには現状に不満は無いみたいだし、愛情という点では異種間のお伽噺によくある“同族になって結ばれる”必要は無いように思う。

 多くの妖精がフェアリエルになりたいと願う動機は大抵が恋愛絡みで、生々しいことも含めても、結局は不安の払拭だ。


 でも、この二人はちょっと違う。


 鬼神の依頼でガブリルの修行に付き合わされてた時、悪魔に操られた船長率いる海賊の船からパーシャを助けたのが始まり。それから私たちに付き纏う様になったパーシャが悪魔に乗っ取られて、ガブリルは彼女を助けるために自分の体を差し出した。結局二人とも乗っ取られちゃったんだけど、その時に過去を共有したこともあって二人はお互いを意識し始めるに至る。

 始まりから他とは違うけど、次に会って大精霊とやらかした時には、妖精王の試練が二人をより強く結びつけていた。


 それこそ、妖精王の仕掛けた猜疑心や不安を生じさせる試練なんかには、まるでビクともしないほどに。


「あと少し……あと少しなの。あと少しで石板は完成するの……」


 パーシャの声は小さい。

 だけど、それは折れそうな意志の弱さからくるものじゃなくて、感情を抑え込むような声色に思えた。


「だから……だからね、イリア姉」


 パーシャは一拍置いて、


「私たち、頑張るから!」


 そう宣言した。

 意図を測りかねていた私に、ガブリルが続ける。


「本当は氷竜の討伐を手伝って、そのご褒美でヒントをもらおうと思ってたんだけどね」


 大精霊から聞いた話と合わせると、あれか。


「……頑張ったら、ヒントを教えて欲しいってこと?」

「だ、だって、タダで教えてもらったら、妖精王、認めてくれないかもしれないし……」


 彼女の表情には、苦渋の色が見えた。


 それはそうだ。誰だって、近道があるならそれを選ぼうとする。

 選べないなら理由がある。

 彼女たちの場合は、目の前にネットがあるのに、攻略サイト見たことが履歴に残ってバレるかもしれないから開けない。そんな葛藤。


 逆に言えば、私に頼りたくなるくらい切羽詰ってるのかもしれない。


「そうですね。じゃあ頑張ってください」

「っ! ありがとうお姉ちゃん!!」


 純粋な、満面の笑顔を咲かせる二人。

 ……チートを迷うことなく選んだ心に、眩しい笑顔が突き刺さります。





 カレーを振る舞っている間に集計。お皿の回収を終えたところで、進行を再開する。


「集計結果を発表します!」


 体温の高いハクを抱きしめながらリアが宣言すると、観客も勢いに乗せられて盛り上がる。


「第三位! 1588ポイント獲得! 登録番号――52番! チーム〈アルノー〉の純白のミスリレージュ城です!」


 わっと観客が沸く。中でもはしゃいでいるのは、やはりアルノーさん一家。

 ミスリレージュ王国の王城は、魔術ギルドの総本山がある国の城だけあって、その神秘性は他国の比じゃない。その精巧な造りを細微に至って表現した雪像に、其処彼処から同意と称賛の声が上がる。


 テンションを削がず、阻害しないタイミングでリアが、


「続きまして第二位!」


 と声を上げると、拍手が次第に鳴り止んでいく。

 次こそはと鼻息を荒げる者、誰だあそこだと囁くように言葉を交える者。

 焦らすようにリアは皆を眺め、読み上げる。


「獲得ポイント、1590ポイント!」


 あまりの僅差に皆が感嘆と驚愕の声を上げる。たった2ポイント差。アルノー家の旦那さんに至っては、ウソだろ!? って崩れ落ちた。まぁ賞金額が三位は10万、二位は50万だからしょうがないね。


「登録番号――8番! チーム〈灰色の架け橋〉のラトヴェスター三女神です!」


 おお、と地響きのような歓声が上がり、笑顔と拍手に広場が沸く。宿屋〈灰色の架け橋〉の主人が、喜んで飛び跳ねてる女将さんにもみくちゃにされてる。

 ラトヴェスターの三女神は、ラトヴェスター教が崇める三本の世界樹を擬人化したもの。勿論萌えとかじゃなくて、地球の神話でいう火山とか運命の擬人化みたいなものだ。


「そして、第一位……!」


 静かなリアの声に、広場はしんと静まり返る。

 息をのむ音さえ聞こえそうな静寂の中、


「――の前に、各特賞の発表にいきましょーう!」


 コントみたいに観衆がずっこけた。

 肩透かしを食らったかといって憤ることもなく、上手くコントロールされてることを小気味よく思ってるみたい。その証拠に、穏やかな笑顔が広場には広がってる。


 特別賞の内容を知っているのは、壇上と舞台裏にいる人たちだけ。

 お金じゃないってことだけは言ってあるから、そのおかげで皆冷静なのかもしれない。


「まず、造形部門です! エウリピデスさん、よろしくお願いします!」

「う、うむ」


 これぞドワーフ! という体型と容姿のエウリピデスさんが、ラシェルからマイクを受け取りつつ立ち上がる。職人気質の宿命か、大勢の視線に怯んだ様に後退りかけ、男の矜持? か何かで堪えていた。


「儂が選ぶ、最も造形に凝った作品は……」


 ちら、と片手に持ったカンペを覗き込み、


「登録番号102番。作品名、愛馬だ」


 と読み上げた。

 その内容に、観客にどよめきが広がる。確かに、出来栄えが映えるというわけでも、目を奪われる魅力がある作品という印象もないだろう。

 愛馬という作品を作った青年も、何故自分が選ばれたのか分からない様子だった。


「エウリピデスさん、解説をお願いします」

「う、うむ」


 私の視線を受けたリアが頷き、エウリピデスさんに先を促す。


「職人とはいっても、その職種は多様……。多岐にわたる技術の中で、儂が共通していると考えるのは、造るモノに注ぐ意思の強さだ。刀剣ならば、何よりも鋭く、折れぬよう意志を込め……建築物ならば、強固さだけでなく使う者への安全にも苦心する。彫像でいえば、その作品にどれだけ命を込められるかだ」


 エウリピデスさんの声は低いけど、染み渡るような声色で……まるで講義を聞くように、広場の人たちは彼の声に耳を傾ける。


「……確かにこの作品には、先の二作品のような精巧さや見栄えは無い。しかし、どの作品にも負けない作品への愛情と、どの作品よりも強い生命の息吹を感じた。故に儂は、この作品を、同じ彫刻師の視点として、最優秀作品に選ばせてもらった。…………以上だ」


 自身のいつにない饒舌な言葉に気付いたエウリピデスさんは、解説を締めてバツが悪そうにマイクをテーブルに置いた。


「エウリピデスさん、ありがとうございました! 愛馬を制作されたベルマディさんには、造形部門の特賞として! リュネヴィルの象徴――」


 リアは、抱いているハクを掲げる。


「ハクちゃんの彫像が贈呈されます!」

「ピィ?」


 穏やかな笑いと拍手。暖かくも、何とも言えない空気が広場を包む。

 因みにと言うか勿論、リュネヴィルの象徴はハクじゃない。何か彫ってくださいって頼んだ時に、ハクを選んだエウリピデスさんにリアが悪乗りしただけ。

 ただ、竜神は結構そこかしこで崇め奉られてるから、将来当主になるかもしれないハクの彫像だって結構後利益があるかもしれない。


 上位三組と違い、特賞四組はその場で手渡し。ベマルディさんの元に向かい、大理石みたいな白い石でできた彫像を手渡す。


「大事にしてくださいね」

「は、はいっ!!」


 この調子なら、邪魔だから捨てる、なんてことはないだろう。

 ……そんなことしたら、どうなるか分かりませんけどね。色んな意味で。


「続きまして、鑑定士部門でっす! アマベルさん! よろしくです!」

「……りょうかい」


 思いっきり気乗りしていないアマベルさん。人前に出るタイプじゃないのは職員全員が分かってるけど、何とか説得して出てもらったから仕方ない。


「……鑑定士として最も優秀だと感じた作品は、登録番号81の雪男……の盾です」

「「「 ? 」」」


 皆が首を傾げてしまった。

 登録番号81、チーム〈蒼の剣〉が造った雪男は、鎧を纏い、剣と盾を携えた戦士っぽい雪像。見慣れてるせいか武器や防具の出来は良かったけど、人がハニワみたいだった。

 彼女の言葉は、雪像そのものではなく、その盾に評価する点があるということだ。


「あ、アマベルさん、解説お願いします」

「……正直言って、鑑定士としてと言われてもよくわからなかった。だから、より価値のあるものを選んだ。以上」


 リアだけじゃなくて、数人が私に救いの眼差しを向ける。


「アマベルさん、評価基準を教えてください」

「評価基準……? 評価基準は、どれだけ上質な雪の性質を持っているか。あの盾は上質な雪なだけじゃなくて、他のものよりも安定してる」


 納得できるのは、それを確認できる私と【鑑定】スキルを持ってる人くらい。

 スキルを持ってる人だって“盾が六角形っぽい雪の結晶と同じ形をしているから、雪の象徴作用として水と風の因子がより強く結びついてる”なんてことはわかんないと思う。

 ……普通に商品価値とかじゃなかったのは、たぶん素材の価値として考えたから。常に素材に触れてるアマベルさんらしいと言えばらしい……かな?


「あー、えっと……か、鑑定士部門の特賞として、チーム〈蒼の剣〉には希少金属のインゴットと、回復薬の上級素材のセットを贈呈します!」


 二つの袋を持ってファデーレさんのところに向かうと、その様子を見た私に彼は苦笑を浮かべた。


「まさかもらえるとは思ってなかったけど……どうせなら加工しちゃえばよかったのに」

「素材の鑑定士ですから」


 屈託のない笑みを浮かべて景品を渡す。こういうよくわからないこだわりも、地方都市のお祭りっぽいよね! ……偏見だけど。

 特産品一年分とかじゃないだけ許してほしい。


 これで、特賞は残り二つ。

 ただ、


「続きまして、副支部長による支部部門でーす」


 リアは明らかにやる気をなくしていた。


「(リア、公私混同しちゃダメ)」

「ぶー」


 頬を膨らましたリアが可愛い。可愛いけど、ここは心を鬼にしなきゃだめだ。


「(相手に付け入る隙を与えちゃダメ。やるなら気付かれないよう確実に、ね)」

「(がってんだ!)」


 得意げに頷くリア。黒猫の獣人だからね。狩りに似たものを感じたんだろう。

 きっとそうだ。


「副支部長、発表をお願いしますぅ」


 わざとらしい……!


「ふん。……では発表する。私が選んだ作品は、登録番号90のラトル神――」

「おめでとうございます! 登録番号90! ラトル神を作られたチーム〈キヴィルの枝葉〉には、支部部門の特賞として支部での御食事券一か月分が贈呈されます!」


 発表を遮られた副支部長が物申そうとするも、沸き起こる声に呑み込まれてしまう。

 だけど、この声の方にも問題があった。歓声じゃなくて、まるで怒号。


「御食事券一か月分!? 聞いてないわ!」

「あの野郎が審査するなら俺だって作品変えたっつーのに!」

「カレー……もう一回食べたい……」


 確かに、傾向が分かってれば対策は立てやすい。

 ラトル神っていうのは全ての神の始祖って言われてる神様で、大抵普人っぽい姿で描かれることが多い。普人主義者疑惑のある副支部長が好きそうな題材だ。

 三食を一か月だから、約10万。そう考えても、評価基準の絞れない三位を狙うより確実だなー、とか思いながら、薬屋さん〈キヴェルの枝葉〉の元へ。


「い、イリアちゃん……大丈夫、だよね?」


 周囲を見ると、何とも言えない熱い眼差しばかり。


「大丈夫ですよ。……きっと」

「「「 イリアちゃん!? 」」」


 安心してください。変なことするような人は一生うちには入れませんから。


「と、特別賞の最後は、領主様部門です! 領主様! よろしくお願いします!」

「うん。発表します。私が選んだのは、皆が笑いあえるようなリュネヴィルらしさをよく表してくれた、ギルド連合支部の作品です」

「へ?」


 リアの声は、職員全員の気持ちを表していた。

 投票用紙の一位には別の番号が書いてあったし、表にあるハクの雪像は、エクトルさんの感想にはそぐわない。

 そんな職員全員の内心を察して、エクトルさんが言葉を続ける。


「勿論、表にあったハクの像もいいんだけどね。中庭にある、みんなの集まった作品が私は好きだよ」


 職員の皆が恥ずかしさで言葉を失っていた。

 外と一・二階のホールからは絶対に見えない中庭に、皆がふざけてお互いの雪像を作り合ったものがある。これを知ってるのは職員と、三階に来た人だけ。

 でも、異論を唱える人がいないってことは、もう周知のことなのかもしれない。


「賞金の10万ギルズは君たちに受け取ってほしい。……どうかな」


 エクトルさんが広場に視線を向けると、ちらほらと賛同の声と拍手が起こる。

 それが全体に広がるのに、それほど時間はかからなかった。


「え、えーっと……ありがとうございます!」


 リアのお辞儀に合わせ、私たち他の職員も頭を下げる。


「で、では、改めまして! 第一位の発表に移りたいと思いますっ!」


 拍手は鳴り止み、静まる広場。


「獲得票は、圧巻の3030ポイント! 登録番号――」


 リアの言葉を、固唾を呑んで人々が待つ。

 寒空の下でも、緊張と熱気で汗が頬を伝う人までいる。


 ……私はそっと、広場を離れた。


「35! チーム〈女神命〉の、女神と白竜! です!!」


 その瞬間、地鳴りのような怒号が鳴り響いた。

 今度は、前みたいな負の感情が渦巻いてる感じじゃない。

 皆の顔が歓喜と興奮に溢れ、制作チームに称賛と同慶の言葉を贈る。


「では、三位から一位までのチームの代表の方は壇上に上がってください! 賞金の贈呈は、我らが女神――あれ? イリア? イリアー?」


 遠くでリアの呼ぶ声がする。

 ごめんっ……誰が行くか!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ