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【2】 裁縫淑女と苦労人侍女

ひたすら主人公がしゃべり倒します。ご注意ください。

「あのっ!!そのボタン直させてくれませんか!!?」



「上着を替えればいいだけの話だ、必要ない」


「そこを何とかお願いしますっ!!

私、縫い物禁止令出されているんですけど補修って形だったら

タバサだって…あ、侍女なんですけどすっごく怖いんですよっ。

いっつもガミガミ言うタバサだって『マァ、そういうことだったら』

っていってくれると思うんです。兄様だってきっと許してくれます。

うん、いつも淑女らしくないっていうんですけど

誰かのお役に立てたんなら兄様だってぎゃふん…じゃなかった

ほ、褒めてくれると思うんです!

お願いですっっっっ!!!

禁止されてもう5日もたってるんですよ。もういい加減針を持ちたいのに

みんなみんなみんなみんなダメダメダメっていうんです。

お願いですっプロにはさすがに負けますが腕には自身があります!

お願いです、針に触らせてください~~~~~!!!!」


手を胸の前で握りお願いというより

神に何かをすがるような必死さで相手の男性にお願いした。


やっと、やっと針に触れるのに針ですぅっと布に通せるのに

すうっとすうっとする瞬間ってなんともいえぬ快感なんだよ!?

わかるかなわかんないだろうなー

普通の貴族様は専属の針子さんがいるだろうけど

……だろうけど、だろうけど……


あれ?専属針子さんにやってもらうのが普通なの?

私は良くはしゃぎまわってほつれちゃったりするから

ちゃちゃーっと応急処置に直しちゃったりするけど

普通の貴族って針子さんが直したりやっぱさっき

仰ってたみたいに脱いで替えて下手したら、ポイ?


……………………


あれ、ウチは貧乏貴族なんであきらかに『ダメだこりゃ』な

現状にならない限り捨てないんだけど上級貴族は少し破れたり

ほつれたりしても捨てるのか?捨てるのかー!?


だったら、この話無駄じゃん。


『新品or作り立てを着るのが俺たち貴族様なんだze☆』


なんてドヤァ…(キラキラ)な顔でいう人だったら話しかけた意味ないよ。

これ結局無駄な話だったの?失礼な話だったの?

あれむしろ、これ淑女らしくない?………………あ…あああああぁぁぁぁ




兄様に叱られる~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!(やっと気づいた)




どどどどどどどうしよう。

知らない人に不躾に話しかけて必要もないのに『ボタン直させてくださいっ』

なんてすごくすごく失礼じゃない。どうしようどうしよう。



「ひとつ聞くが裁縫の道具はあるのか?持っている感じも侍女も見あたらないが」


「アーーーーーー(アグッ)!!」


叫んだら思い切り口をふさがれた。もちろん手で。

相手の方は誰かから逃げているらしく静かにしろと睨まれたスミマセン。

そういえば、裁縫道具はタバサに内緒にするために侍女のエリスに持たせて

別の馬車で越させてたんだ。どうしよぉぉぉぉぉぉ。

せっかくの、せっかくの私のワンダフルな…


「落ち着きなさい。君に提案がある」


(コクコク)


「5分ほど私の恋人のフリをしてくれ」


(!!?)


「煩い女に付きまとわれて身を隠していたがやはり寒い。

上に部屋があるが商談や逢引で使う目的だから相手がいる。

君の侍女を呼び好きなだけ裁縫させるから黙って歩いてくれ」


(コクコク!!)



すごく優しいです~~~~~~~~!!!

好きなだけ裁縫させてくれる上にエリスも呼んできてくれるなんて

すごいっ!英雄よヒーローよ救世主だわ!!!


神様ありがとうございます!!


帰ったら私のお菓子全部神様にお供えします!!!

ありがとう、ありがとうございます……えー、誰だった?




あれ…この人、誰?




スミマセン、兄様。

ココットは裁縫のために知らない男性についていきます。

(注:良い子はまねをしないでね。)


肩を抱かれ(いい匂いでした)恋人っぽくっていったらやたらくっつくものかなと

頭を相手の胸に寄せてみた「こんな感じですか?」って言ったら頷かれたので

これでいいのかな。知ってる人に見られたら恥ずかしいから俯いてみた。



結果、イチャコラしているけど恥じらいを見せる淑女になったみたい



3階にある大きな扉の前で相手の男性がドアの前にいた人に何か話しかけると

相手の人がドア開けて招いてくれた後どこかへ行ってしまった。

あ、エリスを探してきてくれるのかな?


商談のためにって言ってたから小さい部屋だと思ったけど私の部屋より大きい

そして、明るい。そして、綺麗。カーテンが閉められてるけど

チラッと外を覗いてみたらうぉう高い!

ウチは2階建てだからこんな高いの初めてかも

高いと暗すぎて庭がわからないわ…

でも、お庭に点在する明かりはポウッと灯ってて綺麗でした。


ガサッと後ろで音がするので振り向いたら

男性がソファに座って足を組んでいました。


明るい所で初めて見るけどものすごい美形さんでした。

ブロンドの髪を後ろに流して眼は伏せてて良くわからないけど、まつげ長っ!

鼻がすうっと通っててあごがシャープにでも男性らしくごつごつそうで

背丈は兄様と同じくらい大きいけど細ガッチリしててスーツがお似合いです。

長い足もやっぱり真っ直ぐ伸びてて男の人なんだなぁと思いました。

私はともかくお姉さまやエリスみたいに丸いラインじゃないもんね。


あまり見えないお庭を見るのも飽きてきたので向かい側に座りました

と同時に誰か入ってきて紅茶とケーキがたくさん来た!

エリスは見つかったけれど荷物を取りにいってからくるから遅れるって

さっき扉の前にいた従者は言いました。

彼にお礼を言ったら驚いたけど気にしない

だってだってこれからワンダフルな時間が来るの。

楽しみじゃない!?あ、私だけか。やっとやっっっっっっと針に触れます感動!


…あれ?たくさんのケーキ私の前にだけ置いてある


いつもウチの料理人や兄様の作ったケーキしか食べたことないけど

(兄様スイーツも作るんです♪)

小さいケーキが20くらいしかも、全部違うの。

色とりどりで兄様に見せたいくらい!

私一人にしては多すぎるからもちろん相手の方の分もあるんだろうけど

虹のように色を揃えておしゃれに並べてあるのがすごく綺麗なの。


私の前に大きなお皿にデンと盛り付けられ

置いてあるんだけど相手の前には何も置いてない。

男性は食べないのかしら?と聞いたら「私は食べない」と返ってきた。

…え?もしかして私専用ってこと!?



神様、もしかして相手の男性は慈悲の神様でいらっしゃるのですか!!!???



なんて素敵な方なの。

ケーキたくさん食べていいとか好きなだけ縫っていいとかゴッドです!!

一見力強く鋭そうな目力と威圧感たっぷりのオーラで近寄りがたいけど

話してみるとちゃんと答えるし相手の気持ちをわかってくださる。

この世の中こんなジェントルマンな方がいらっしゃるなんて世の中広いですね


目の前のピンク色のケーキ食べてみた。んん~♪

ベリー系だと思ってたけどストロベリーのムースの下の

スポンジの中にイチゴと生クリーム、はぅ…幸せ………


今度はなんにしよう♪チョコレートかな。




―――コンコン




ノックがしたので相手の方が入るよう促すと

裁縫箱を持ったエリスが少し息を切らせながら入ってきました。

エリスは私より4つほど離れてるせいかお姉さんのように思っているの。

エリスはよく動き回る私にいつも呆れ顔しながら相手してくれているけれど

きっとエリスも私のように親しみを感じて接してくれてる…はず。

エリスは入ってすぐに相手の男性を見て「!?」って頬染めながら驚いて

すぐにひざを折って礼をしながら言いました。


「私、ココット・エルベリー子爵令嬢にお仕えしております

侍女のエリス・ライムフィリスと申します。

あの…状況を得ないのですが、どういったことでしょうか?」


「うーん…

ジャケットの袖ボタンが取れそうなので直させてくださいって言ったの」


「~~~~~~~~~~~~~~っっっ

ココット様……それは…あまりに………」


「えへへ。全部言ってから失礼だって気づいた」


「もぅ……大変申し訳ございませんでした。あ、」


「私も彼女も互いに合意の上ここにいる、謝罪は無用だ。

それよりもこれを縫うのだろう。それらはあとで侍女に持たせればいい」


「はい、有難うございます!エリス早くっ。

あ、ケーキ置いてあるからこっちでやるわ。んふふふ…」


「……ココット様、不気味な笑みはご自重なさいませ」


「ふふ。ごめんなさい。針~この感触ですっ」


そうやってココットは男性の斜め向かいに座っていたのを

真向かいへと位置を変えお気に入りの裁縫道具を大きく広げる。

エリスはケーキを片付けながら主が異様なテンションで

針やら糸切りバサミやらを満面の笑みで見つめる様に小さくため息をついた。


向かいにもっとため息の出る素敵な殿方がいらっしゃるのに……


入ってくる時、主が呼んでいると言うのでてっきり1人なのだと思い

はしたないと思いながらも早歩きで指定されていた場所に向かったが、

そこにはケーキを頬張る主となんと

美貌の男性が主の向かいで優雅に足を組んで座っていた。

鋭さと威厳と気品とたくましさ。

最近“カリスマ”と呼ばれる人が巷をにぎわしているが


“カリスマ=多くのを惹きつける強力な個人の性質”


というのがこういう人をさすんじゃないかと思った。

というか、主はどういういきさつで

こんな魅力的な男性と同じ部屋にいらっしゃるのだろう?

まぁ、どれだけ魅力的でも関心がないところがココット様らしいが。

花より団子、美形より裁縫…まだ心は幼くていらっしゃる。


多くを聞きたいが自分は勤務中の身

早く要件を済ませて主が男性にさらに失礼なことをする前に帰らなくては。

そう誓ってエリスは足早に部屋を後にする。


「ふぅ…♪上質の布はやはり針の通りがいいですね。

私ね、お父様や兄様、たまーに帰ってくるお姉様の仕立てた服の端切れを

裁縫師の方からもらうのが今一番の楽しみなんですっ。

するとね、おまけで色々な端切れいただくんですが

いろんなお宅で作った服の端切れがあるのか色んな種類があるんです。

それで、たくさんお人形さんを作ってお姉様に預けると

お姉さまが世界中の孤児院や教会で配ってくださるんです。

何年か前まで部屋にためていたんですけどね、タバサが怒って。

部屋が綺麗にならないー。っとかって。それを見たお姉様が

世界中の子供たちに配ろうキャンペーンを企画してくださったんです。

子爵の娘じゃなかったら針子をしたいんですがそうもいきませんものね。


もうすくお姉様がご帰国なされると聞いて頑張ってお人形作っていたら

お勉強のことすっかり忘れて…ふぅ、出来た。

2日やり続けたら兄様とタバサの怒りに触れまして

道具一式取られてしまったんです。へへ。

でも、今日は付き添いだから陰で

パーティ終わるまでぬいぐるみ作ろうと思ってたんですよ」


はい、と差し出そうとすると背を向けたので背が高くて着せづらかったけど

なんとかジャケットを羽織らせた絶対兄様より背が高いわ。

いつも兄様に着せているように襟を正して、胸板ポンポンして



「はい、かっこいいですっ」






…………………






………………………………







しししししししししししししししまった!!!!兄様と同じようにやってしまった!!

やめられない とまらない~♪


という歌(?)があるように、好きなものって中々欲望抑えられませんね。

というかこんな主人公でいいのかと今更思ってしまう。

ウフフエヘヘ言う主人公(遠い目)

口が悪いのは偏狭の地で自由に育てられたせいだとお考えください。

彼女がしゃべっている間、男性は本当にずっと「……………。」なので

彼視点で書かないと良くわからないです、ハハ。

無口な男が好みなのにこういうとき困るな…

しかも、名前すら出ていないってどうよ!


次回やっと彼が名乗ります(笑)

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