【36】 外と内のギャップについて
半年も間を空けて申し訳ございません。
生きています、何とか。
中々公私を詳しく知る人っていませんからね。
長い付き合いでも意外なプライベートを知る事もあります。
「私は貴女の事をもっと知りたいのです」
………こんな嬉しいことって!
最初のころは警戒されて険しい顔をされていたのに、
お部屋を出られるのにもあんなに苦しい顔をしていたのに、
お部屋には戻らず私を知りたいと思ってくださってくださるなんてっ!
お父様!兄様!お姉様!!
私の頑張った結果、良い形に変化しようとしていますっっ!!
私も一人の大人として立派に責務を…
「僕も、君の事知りたいなぁ」
レフィリア様の愛らしいお言葉に興奮していたら
殿下が去っていった場所から男性がひょこっと顔を出してきました。
短い無造作な栗色ヘアに人好きする笑顔。
初めてお会いする方です。どなたなのでしょう?
私をじっと見つめてきます。
ぼーっとしていたら、レフィリア様が挨拶をされました。
お知り合い…ですかね?
「こんにちは、レフィリア嬢。会うたびに美しくなって
僕も独身だったらお誘いできたかな?
そして、初めましてお嬢さん。僕はレイナルド・キングリーム。
アルフレッド殿下のお供で参りました。
今後とも宜しく。レイって呼んでもいいよっ☆」
ウィンク付きで私に自己紹介されました。
レイナルド様といえばウィルソン様のお友達…だったわよね?
ほけー。と相手の方を見ていたら男性とレフィリア様に
じっと見られているのに気付きました。ん?なに?
……ん?あ!挨拶の返しっ忘れてるっ。
「はっ、失礼しました。初めましてレイナルド様。
ココット・エルベリーと申します。
…あの、アルフレッド殿下はもうお帰りになられたようですが
よろしいのですか?」
アルフレッド殿下のお供としてこられたのなら
常に主である殿下の傍に控えているものだと思うけど
いいのかしら?
「あぁ、殿下はウィルソンと長話しているみたいだから抜けてきた。
気難しいのはどうも性に合わなくてね。
それにしても、レフィリア嬢ととても仲良いんだね。
こんなやさしい表情のレフィリア嬢は初めてみるよ」
でしょうでしょう!
レフィリア様の表情が優しいお顔になったの。
素敵な男性に褒められたせいか
頬を染めてうつむかれるレフィリア様もまたお美しいの!
色々な表情を見せてくださるようになったことがまた嬉しくて
私まで顔が緩んでしまう。
「さすがに君の部屋まで付いて行ったらヤツにヤられかねないから
ここで君と少しお話したいんだけど、いいかな?」
「私、と…ですか?」
「アイツんちに可愛い女の子が住み込みで居るって
聞いたからさ、どんな子か見てみたかったのに招いてくんないし。
いやぁ~ほんっと、可愛い子でビックリしたよ!
やっとアイツにも春かねぇ。ウヒヒヒ…笑える」
「……アイツ?」
「ここのご当主ウィルソンだよ、鉄面皮の。
アイツと僕は幼馴染ってやつかな?
同い年なんで親に連れられて交流するうちに
ここまで仲が続いたみたいな…腐れ縁とも言う、あはは。
アイツ、女の子とあんまり話さないやつだから気詰まりじゃない?」
「いえ、私の話が止まらないのでウィルソン様の方が
煩わしく思ってらっしゃるかもですが、私は楽しいです」
「へぇ…アイツがずっと聞いてるの?女の子の話を?」
「はい。長いと1時間近くまで話してしまうんです。
お忙しいウィルソン様の貴重な時間を使わせてしまって
いつも申し訳なく思うのですが、
話すといつも時間を忘れてしまうんです…」
「へぇ…そんなに長時間話聞くなんてな…いつも?」
「はい。実は…毎回なんです。えへへ」
「ほぉ~ちなみにどんな時に話すの?
いきなり呼び出して、さぁ話せ。みたいな?」
「いえいえっ、毎日仕事の終わりに報告する時間がございまして
最初は普通に報告してるのですが、私の話がすぐ脱線してしまうんです
でも、ウィルソン様はその話もきちんと聞いてくださるんです。
一通り話し終えると長時間ウィルソン様を拘束させてしまった!と
後悔してしまいます。治さなければ…と思うのですが」
「君は、お話が大好きなんだね」
「はい、それに毎回美味しい紅茶とケーキも用意してくださるので
ついつい、話が弾んでしまって…」
「アイツが……女の子にお茶はともかくケーキ…だ、と?」
「最近は、私も成長しまして報告だけすませてキリッと事務的に帰ろうと
思ったのですが…ケーキの誘惑に勝てず、ウィルソン様が
「今日楽しかった事は?」と聞かれるものですから、見たことない鳥が
キレイにさえずっていたって話しまして、そこからその鳥がある花が
好きみたいでとても綺麗に咲いた花の蜜を吸っていたんですって話をしたら
今度案内して欲しいとか仰られて色々お話していたら…ん?
レイナルド、様?」
「ごめん、混乱してるみたいだ」
「え?」
レイナルド様は、頭を抱えてらして上半身をグネグネ動かしながら
酷く悩んでいらっしゃる様子。私の説明不足だっただろうか。
たまに、兄様に順をおってきちんと説明しなさいと言われるから
きっとレイナルド様も私のつたない説明で理解されず困っておいでなのだわ。
えっとえっと、
「あの、最初から説明し直します…」
「え?いやいや、ココット嬢の話は分かったよ。
僕が混乱してるのはアイツのことだよ」
アイツ…ウィルソン様の事だよね?
「君は、さ…ウィルソンの話をしたんだよね?」
「はい」
「ウィルソンは、君にお茶とケーキを用意したんだよね?」
「はい、そうです。いつも美味しいです」
「それは、よかったね。それで、アイツは君の話を楽しんだと?」
「ウィルソン様が楽しまれたかどうかは存知ませんが…」
「アイツも続きを求めた?それでその後どうした?みたいに?」
「はい。ウィルソン様は自然に対するご興味がおありのようでしたので
もっと見聞きしたものを。とよく仰られます」
「………アイツが自然に興味っ!?」
「は、はい」
「…あー、ウィルソンの話をしているんだよね?」
「はい…」
私の肩をつかんでそんなに力強く仰らなくても
「モルトバーン伯爵のウィルソンだよね?」
「は、い…」
い、痛い…
「ここの主のウィルソン・ノールフェストだよね!?」
「は…ぃ」
「レイナルド様!」
あ、近…
「お前は!何をしているッ!」
ものすごくお顔が近く肩も痛いよー。と思ったら
急にレイナルド様のお顔が遠のいて肩をつかまれてた感触がなくなって
レイナルド様が目の前のウィルソン様に離されたと気付きました。
うぅ、いたたた…
「大丈夫か?」
「は、はい」
本当はじんじん痛いけど、ウィルソン様に言うほどじゃないから。
しかし、男の人の腕力ってすごいのね。
ウィルソン様はレイナルド様を
少し離れた所にお連れして何事かお話になっています。
「あ、こんなとこにいた。レイナルドに何かされなかった?」
「殿下…はい。
なにかウィルソン様の日常をお聞きしたかったらしく
色々質問されただけです」
「伯爵が凄い剣幕で走っていくから…驚いたよ」
「凄い剣幕!?」
「うん。レイナルドは少し突っ走る所があるから、
君に危害を加えないか心配だったんじゃないかな。
ごめんね、悪いやつじゃないんだけど」
本当に大丈夫なので、大丈夫ですから。と殿下にお伝えしました。
しかし、いつも優雅に歩かれるウィルソン様が走った?凄い剣幕で?
うーん、あまりそんなお姿想像できない。
「レフィリア嬢もすっかり怯えてしまったね。ごめんね」
いつのまにか私の服をつかんでいらっしゃるレフィリア様は
レイナルド様の気迫に押されてしまったのかお疲れモードが
さらに濃く出た気がします。早くお部屋にお連れしなければ。
とりあえず手を握って大丈夫ですか?とお聞きしたら
小さく頷かれました。…聞いといてなんだけど大丈夫じゃなさそう。
まだウィルソン様とレイナルド様はお話が続いているようですが
ここは帰っていいのかなとオロオロしてたら殿下が
「あの人達けっこう話長いからこのまま帰ってもいいよ」
と助け舟を出してくださったのでお先にお暇いたします。と
挨拶してすぐにレフィリア様のお部屋へと向かいました。
「あの…ココットさんのお部屋に行く話は…」
伯爵家の方のお部屋がある3階のフロアへいこうとしたら
レフィリア様が止まって聞かれました。
お顔もだいぶ疲労の色が濃いようだし今日は止めた方がいいよね。
でも、そうお伝えすると大丈夫です。と無理してでも来られるだろう。
ん~
あぁ!
「レフィリア様!」
「!」
「あ、申し訳ございません。大声出してしまいました。
レフィリア様、私あの時からずっとやり直ししたいと思ってたんです」
「?」
「ほら、初めてレフィリア様が花壇においでになったお茶会」
「あ…」
「あの時は、あ…終わりがよくありませんでしたから
今度は私のお部屋でお茶会したいのですが、いかがですか?」
「…はい」
「では…ん~4日後。
もしご都合つかなければそれ以降でしたらいつでも仰ってください。
もうすぐお誕生日ですもんね。そちらのご準備を優先しますから」
「……………はい」
私は準備に入る!と申し上げてお部屋までお送りしましたが
やはり相当お疲れのご様子で、お別れの挨拶以外無言でした。
ん~4日後ってのも早急すぎたかな?
お体が弱い方ってどれくらいで回復するのかしら?
そして、話を聞いてやたら乗り気になったリウムさんと
打ち合わせの時サナさんが来て予定通り4日後にお茶会お願いします。
とお話が来ました。
よっし!今度こそレフィリア様が心和むお茶会にするわ!
(前書きの続き)
身内が初めての恋人との会話してるところを聞く機会があって
余りの甘さにドン引きした経験がありますwww
レイナルドはそんな気分だったかなと思います。
よく知る身内の恋人に甘えた声を聞いた時の衝撃といったら…
(私の目の前で家族が恋人に電話で甘えていました…)