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【34】 囁くのは、神か悪魔かそれとも…?

自分で決断は、大切だが難しい

「お支度が整いました」



トールマンが、出かける準備が出来た事を知らせてきたので

ウィルソン様にお礼とお詫びを言ってうきうき気分で玄関へ向かおうとしたら

ウィルソン様に呼び止められまして次の言葉を待っていたのに

私を追い越して先に歩かれました。


どうしようと思っていたら、振り向かれて


「ついてきなさい」


の一言だけ仰ってスタスタ歩かれました。


あのぉ…玄関の場所分かっているのですが…


でもでも、ご当主自ら案内してくださるのですから

そう言うのも失礼というもの。長い足に付いていくのは大変でしたが

ついていくと…あれ?階段下らないのですか?玄関こっちじゃ…


スタスタ知らない場所を歩かれる。


ずいぶん歩いた先にあった大きな扉の前で止まりました。

こんな重厚な玄関なのでしょうか?


「あの……ここ玄関?」


「いや、ここはホールだ。ここに君の見せたい物を用意した、開けなさい」


「あ、は…はい」


あまりに重厚すぎて一人では開けられなかったので

お付きの男性に手伝ってもらいながら頑張って開けると…



そこはおっきな手芸屋さんでした!



広々としたダンスホールに左右にずらっと並んだテーブルに載せられた

綺麗な手芸品小物たち。デンッと存在感を示すたくさんの布たち。



「――――――――――――!!!!!!!!」



言葉も出ないくらい感動しました!!

王都の貴族の方はこうやってお店屋さん呼ぶんでしょうか!?

ここの人間ではないのに申し分けないのと同時になんか嬉しいです…!


ぐるりと回って見てみました。眩しいくらいの色彩の布たちをさわり

目的のリボンの所ではふちにフリルが付いたものや刺繍がしてあるもの

ベッルベット地やサテン地のものオーガンジーのリボンも綺麗だわ。

そんなリボンたちに魅了されていました。


刺繍コーナーでは色とりどりの刺繍用の糸がありそういえば何色か

切らしていたなと思い出してみたり、あぁ、色鉛筆ももう限界なんだ!


うあーうあーうあぁぁぁぁぁーー!!


レース編みもしたぁい!!


うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


これって、天国のようで地獄な話じゃない!?

全部を買えるはずが無いので、選択を迫られるわけですよ!!



しかし、これを決めろですって!!?



決 め ろ で す っ て ! ! ? 



もちろん家から持ってきたお小遣いに限界が有るからなんだけど

こんな都会の一流の手芸屋さんのなんてそうそう御目にかかれないし

中流家庭なんてに嫁いだら一生買えないわけですよ!?

(周りの子爵や男爵のご令嬢はたいていそっちに嫁いでるから

当然私もそっちに行くと思ってマス…上は大変そうだから目指しませんよ)


人生一度きりのチャンスに、リボンと何を買おうか………





「………………………ん~~~~~」






肌触り良好な布を買って休日用の服を作りたい!!!






「…………………………………!!」




いっそ、ちょっとずつ買って着せ替え人形なんてのも作ってみたい!!


あぁ、誰かに人形用の椅子とか作ってもらってテーブルクロスに刺繍とか

黄色とピンクと…あぁ、紫…紫だけで何種類有るの!?

刺繍糸ってこんなに幅広く有るの!?

うあ~~~この紫綺麗過ぎる!!こっちの紫とで2色使いしてみたい!!





「~~~~~~~~~~~~~~~っっっっっっ」





チェストにレース編みのクロス置きたいと思ってたのに!!

ピンクなら家に持ち帰って家でも使えそうっ、でも、黄色きれいだ!!






あぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!





選べなぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!!






どれも、どれも素敵だよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!





なによ!この中から1種だけ選べなんて!!神様!なんて拷問するんですか!?


っっも~~~~~~~~~~!!!



「どうした?」


「ひゃぁぁ!!」



自分の世界に浸り過ぎて外部を完全シャットアウトにしていたので

突然ウィルソン様にお声をかけられて

おおよそ乙女の悲鳴とは程遠い声を出してしまった。

すみませんね!令嬢っぽくなくて!!


「も、申し訳ございません」


「君が気に入るものはなかったか?無理して買う必要はない。ま…」


「いいえ!気に入っています!!」


「…そうか」


「気に入りすぎて選ぶのが困るくらい素敵なものばかりでっっ!!

私は今、人生最大の究極の選択を迫られているんです!!

欲をかいたらいけないと使いきれもしないのに散財してはいけないと

小さい頃からきつく言われていましたのに、欲しい物だらけで

あのっ、選ぶのにしばらくかかるのですがお時間まだ大丈夫ですか?」


「それならば、君の好きな物を買うといい。こちら側で出そう」


「いえっ!人から理由なくいただくのはいけない。

と兄様にきつく言われています」


「では、人形に使うリボン代は出す」


「え!?」


「人形の材料は元々こちらで用意したものだろう。

それならば、リボンは材料の不足分として今買い足したと思えばいい。

それでは納得いかないか?」


いかないか…と仰られても…


あまりに至れり尽くせりで、甘やかされているようで…なんだか…

こんなっ、こんなにご厚意に甘えちゃっていいんだろうか?


ウィルソン様の真意を伺おうと秀麗なお顔を見るも

人生経験浅い私には透き通った水晶のような瞳から心を読み取るなんて

出来なかった。しかし、とても綺麗な瞳ですね…


じゃない!


ん~~、確かに人形素材の布・糸・リボン(イメージ合う子にはつけたの)は

例の大量ポプリと一緒に持ってきてくださったものだけど(あ、綿もだ)

いいのかなーいいのかな~…でもまぁこれは、

“人形の材料分をウィルソン様に用意してもらった”

のですよ!ですよ、そうですよね!?


必要なものだけ出していただければいいのですよ、うん!


「そんなに悩むものなのか?」


「いえ……そういうわけでは…

はい。あの、3本だけお願いします」


「では、予備に少し多めに買っておきなさい」


いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


そんな甘い言葉で誘惑しないで~~~~~~~!!


“予備”ですよ?“予備”!!

予備は大切ですけど、“多め”なので数は決まってないのですよ!

確かに予備は必要ですよいつなにがあるかわかりませんから…でもっ

あれが必要かもこれも必要かもと思ってたらそれこそ店買占めちゃうくらい

買っちゃうかもなのですよ!!


いつもはお父様が買ってくださるお土産だったり商人の好意でもらったりと

選んだ事が無かったので“選ぶという行為”がとても大変かを知りました。


「そんなに気に入っていたのに、買わなくて良いのか?」


ものすごい覚悟で諦めたのに、

そうやって甘い囁きで勧めるの止めてくださいーーーーーーーー!!


予備を3種類と決め、選びにかかったのに

諦めた横から当主の神のような悪魔のような囁きに心ぐらつきながら

なんとかメインの3本、予備の3本を選び抜いた時には

空の色が赤から青になりかけるころになっていて


せっかく空を赤色にしたのにすぐに真っ暗な闇に染め上げられちゃうなんて

なんだか私みたいね、ウフフフ…


と疲労困憊しながら自室に戻ったという。

伯爵様の「彼女のポケットマネーは使わせない!」発動!!(笑)


彼女は私が養ってみせると意気込む青年と、

自分の持つもので自立して生活してこそ大人!と頑張る少女の

無意識のバトルは、やっぱり青年の勝利でした~。と

周りでは信じられないほどべったべたに甘やかしています。

“強欲は堕落するダメな人間の証。欲をかきすぎてはいけない”

と身内からいわれているのでなんとか自制しようとしているけど

伯爵という魅惑の腕が地の底に引きずり込もうとしている…と

ホラーっぽいものが浮かびました(笑)


無駄遣いはいけません。

甘やかしすぎもいけません。

可愛いからと何でも買ってあげちゃう伯爵もいけません(笑)

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