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【31】 どこで仕事する?

「これなら色んな種類の匂い付けてもいいわね

ねぇ、貴女。ウチの専属針子になりなさいよ」


「!」


「ぬいぐるみでなくても色々なアイデア持ってそうよね。

荷物は部下に運ばせればいいから今からでもいらっしゃい」


「ま、待ってください。私はここに雇われている身ですよ」


「王宮の針子なのよ?名誉なことじゃない。貴女、針子になりたいんでしょ?」


「何故ご存知なのですか!?」


「王宮で雇うんだもの。身辺調査はぬかりないわ。さ、行くわよ」


「ま、って!」


「何よ!ここの何十倍でも賃金払うわ!

専属の部屋と侍女を好きなだけ雇ってあげる。あと何が不満!?」



そんなこと…そんなこと言いたいんじゃありません!!



服を引っ張り、部屋から出ようとする王女殿下の手を振りほどきそう言った。

そんなんじゃない!私はお金も贅沢も興味ないです。

確かに、最初に来た時はいい所があるなら別の所に行ってもかまわなかった。


でも、今は違う。


レフィリア様のお話し相手として、レフィリア様を見て屋敷の人たちとも

仲良くなって、レフィリア様のお心が少しずつ開いていくのを感じて

私が誰かのお役に立っている。お仕事で失敗することもあるけれど

人との繋がりの中で次への道が開いて、周りが自分が変化していくって

前より自分もレフィリア様も成長しているって実感するの。それが嬉しい!


ただ、ここで勝手に抜けて行くとレフィリア様の信用も信頼もすべてなくなって

また人に裏切られたとレフィリア様のお心を深く傷つけてしまう。

そんな感じがするの。今までの積み重ねが一瞬でなくなるのが怖いの。


何か言ってることよく分からないけれど、今は…今のまま仕事を続けたいの。


「じゃあ、針子の話しはなくなるわ」


「例え、王宮でなくっても仕事は見つかります」


「貴女ね、私の研究の共同研究者として名を連ねられるのよ!?

社会貢献も出来て王室との繋がりもできる。

仕事のジャンプアップには最適じゃない。

今の程度の仕事だったらいつでもどこでもできるわ!」


「レフィリア様との仕事は今しか出来ません!

今ここで離れて何年か後にまた来ました。って言われても

途中放棄した人を再雇用するなんてことウィルソン様はなさいません!

それに、最初の仕事から途中放棄したら今後もそんな労働しちゃいます!

最初の仕事はちゃんと1年間やり遂げたいんです!」



「ココット嬢の言うとおりだマルティア。父上の一番嫌いとされる言い方だぞ」



「お兄様!だって…」


「今日は、伯爵に仕事の用があるから来たのをお前がついてきたんだろう

あとで、母上からお叱りを受けてもらうからな」


「嫌よ、研究所は取り上げないで!」


「今のお前には不要なものだろう

しかるべき所に嫁ぎ夫に研究所を作ってもらうよう言えばいい」


「そんな…お兄様にそんな権限はないわ!」


「あぁ、お前にもないよ。解るか?

理不尽な権力の振りかざしでココット嬢の人生を

勝手にお前が決めようとしていたんだぞ」


「!」


「今日は、とにかく帰るんだ。

ココット嬢妹の非礼とぬいぐるみのお礼は後日改めてさせてもらうよ。

今日は突然にすまなかったね」


「あ、いえ。はい…」



そうやって呆然とするマルティア殿下の腕をひっぱり

アルフレッド殿下はお帰りになりました。なんだか…お姉様とは違った凄さ。


心配してくれたのかすぐにヘレンが来て

様子を見に来てくれたサナさんと一緒に、片付けとソファーに座って

お茶を用意してくれました。私も、何が何だか…で力が抜けました



「大丈夫か、ココット嬢」



はては、ウィルソン様まで来てくださって

まだサナさんが帰ってなかったのでウィルソン様のお茶も用意してくれました。

ヘレン、ひざ掛けありがとう。そう言うのが精一杯。


「私、王宮のお針子にスカウトされました」


「…!」


「でも…最近やっと、レフィリア様がお心を開いてくださったんです。

その屈託ない素敵な笑顔がもっと見たくて、お断りしてしまいました…

あ、あの…」


「どうした?」


「私…私がお断りしたことでウィルソン様にご迷惑おかけ…ないでしょうか?」


どうしよう…王家の要求を無下に断ったら、不敬に値する。

そだ…私が断ったら、雇い主のウィルソン様にご迷惑おかけしたら…


どうしよう。


「ー!」


「大丈夫。王女殿下の行為は向うに非がある。

そう、アルフレッド殿下も仰っていただろう。君にも、私達にも影響はない。

大丈夫だ。大丈夫」


「はい…はい、すみません。でも、ウィルソン様…」


「なんだ?」


「もし、伯爵家に害が及ぶようでしたらすぐ私を…」


「そんなことはしない!君を来てもらう際、君の身辺調査もした。

君の性格、考え、行動。それらを知った上で当家に来てもらった。

直情的な所もレフィリアには必要なことだからだ。……………。

今回のことで、私は君が悪いとは思わないし王家の方々もそう思われないだろう

だから、心配ない」


「はい…ありがとうございます」


「私の方こそ、礼を言いたい。あと半年、レフィリアに付きあって欲しい」


「はい。レフィリア様とあと半年でお別れなんですね…何だか寂しい」


「その…」


「はい?」


「……、いやいい。温かいお茶を入れさせよう」


「………?はい。あー、お腹空きました。

あれ?ヘレン、サナさん帰っちゃった?」


「はい、先程。呼び戻してきましょうか?」


「いいの、いいの。解らない所があればすぐ飛んでいきます。

って伝えて欲しかったんだけど」


「まぁ、では伝えてまいります!」


「いいから!って、あー行っちゃったー」


ヘレンの超速が、やっぱり発動しました。


ウィルソン様が、怪訝な顔で聞かれるので

ヘレンは優秀すぎるから私の考えを汲み取ってすぐ走って行ってしまうんですよ

って言ったら、そうか。と珍しく穏やかなお顔になりました。

やっぱり、部下を褒められるのって嬉しいのかしら。



そう思いながら、美貌の伯爵様と美味しいティータイムを楽しみました。

トールマン「私、もうノックしてよろしいのでしょうか?」


トールマン!今入ったら、旦那様の氷の刃を受けます!!

ヘレンが、気を利かせて2人きりにしたら執事の死亡フラグが立ちました(笑)

最後旦那様が穏やかに笑ったのは隣の女性がいつもの笑顔を取り戻したからですよ

…っていうのを、本人には言いませんから!!(汗)


王女様は、ココットのように好き放題に育てたのですが

王女ですのでブレーキ役が足りなかったというか家族以外いなかったんですね

そこで、配慮の足りない女性の出来上がり。


次、無作法なことをしたら研究所は閉鎖します。


とお母様から言われていたのであの慌てっぷりでした。

ちなみに、研究目的は癒しの匂いで国民達の疲れをなんとか出来ないか

頑張って働く孤児院の子供達に何かしてあげられないか。です。

だから、ぬいぐるみと聞いて飛びついたんですよ。


ちなみに、上の叱られた無作法は姪(兄の娘)の例のぬいぐるみを

勝手に拝借して泣かせた所にあります。

彼女も変わってくれるといいのだけれどね。

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