【26】 安眠妨害と休息
「なんですか………これ」
目の前に置かれたのは、大量の布と大量の花…びらが入った袋。
ウィルソン様がお見えになったのは、あの事件の2日後。
相変らず輝きを放つ美貌のご当主様がお入りになったと思ったら
後ろから大荷物を抱えた使用人がゾロゾロ。
すっごく広い!と驚嘆の声をあげていた部屋が一気に狭くなりました。
おまけに、いつの間に離れていたのかヘレンがケーキとお茶を乗せた
ワゴンを引いて来ました。いつまに厨房行ってたの?
布+花びら袋+ワゴン+ご当主と7-8人の使用人+私
なので非常に窮屈です。あ、布はあのクローゼットにしまわれるようです。
「体の方は大丈夫か?」
私の体は大丈夫ですが、部屋の容量は大丈夫じゃないです…
思わず声に出してしまったのか背後の方で空気が揺れる気配がします。
誰です、笑ったの!心なしか、ウィルソン様の口元も震えている気がします!
「いつかお会いした、アルフレッド殿下を覚えているか?」
「はい、妹姫殿下がポプリ作りに夢中になられているとかで
レフィリア様に、ポプリをお渡しするよう預かりました」
「その、妹殿下がさらにポプリを量産されて処理に困っておいでのようだ。
そこで知り合いの貴族にいいアレンジがないかとポプリを渡して回って
おられるのだ。君にいい案がないか聞いて欲しいと聞かれた。
一応、布は買っておいたが何か作れそうなら作って欲しい。
もし無理なら遠慮言ってくれ。あんなことがあった後だ
殿下は、先日のことご存じないので仕方ないとはいえ
無理してまで付きあうことはない、君の好きにしていい。
あの布も他に使ってくれてかまわない」
ほ、ぅ…あの花びら袋は強い匂いを放っていたので
殿下がらみだと思っていたけど、ほほぅ…ほほほぅぅ……
おホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホホぅぅ!!
楽しそうじゃないですか!!
ナニ何どうしよう。ど・う・し・よ・う!!www
おほほほほ!!ちょうど昨日1日寝ていて暇で体が痛かったの!
(打ち身のせいもあるけど、寝続けるとコルみたいでね…背中とか
打ち身もそうひどくはなかったのよ。錯乱してフルパワーできたとはいえ
14歳の少女が叩いただけだからね、でも軋んでます少し痛い)
「できそうか?」
の言葉に大声で、できますとも!!と返して右頬が痛んだけど
ヘレンの平静装う顔が少し引きつったけど、気にならなかったわ!!
なんて楽しそうな話なの!?
久々の刺繍以外のお裁縫の話ですわ!!
ありがとうございますウィルソン様!ありがとうございますアルフレッド殿下!
ありがとうございます!妹姫殿下!!
ウィルソン様がお帰りになった後、早速クローゼットに篭りました。
ヘレンがベッドで休んだ方がと言ってきましたが休むって選択肢ないわよ?
色とりどりの花柄つる草模様とか鳥の模様もありますね。
何しよう。
何しよう~~~~!!↑
「あの…ベッドで考えられてはいかがでございましょうか?」
「大丈夫です。今気分乗ってるんだから!」
「ですが、昨晩はあまりお休みにはなられなかったではありませんか」
そう。昨日は、前日のあのことを夢に見てしまい
怖くて、明かりを付けてもらいヘレンに傍にいてもらって
やっと寝たんだった。あんなのいつくらい振りだろう。だっていつもは…
いつもは……いつ……
「……………………。」
「いかがなさいましたか?」
「ヘレン、そのポプリをひとつまみと綿を持ってきて」
「はい!」
「あ、あと」
「裁縫箱も、でございますね!」
「さ、ようです…」
小さいころ、雷が怖くて泣いていた。
いつの話しだっただろう従姉が手作りのぬいぐるみを持ってきてくれて
その手触りが良くてすぐ寝た気がする。
あまりに使いすぎてすぐ壊れて手直しの仕方を教えてもらったのが
裁縫にのめりこむきっかけだったかな?
ぬいぐるみの作り方を教えてもらって2体目3体目を作るころ
従姉は隣国の侯爵様に見初められ嫁いでいった。私の憧れの人だった。
それから今家にいるのは16体目~24体目の9体。
お気に入りの19体目を抱えながらいつも寂しい夜を過ごしていた。
タバサの選別で“もう子供ではございませんから!”とはぶかれて
しまったのでここには夜のお供はいないのを昨日思い出したんだ。
いかにこの数ヶ月を楽しく過ごさせてもらったかだよね。
25体目を作りつつ、実験的にポプリを入れてみようかな。
夜一緒に寝るのだから綿をつめすぎず柔らかすぎず
頬くらいの柔らかさになるよう調整してお腹のあたりにポプリを
詰め込んでつぶさないよう綿をつめて糸でふさぐ。
目を付けてリボンを付けたら完成!!
匂いを嗅いでみると、フワッとした匂いにくらくらした。これは寝る。
「ひとまずお休みになりましょう、ココット様」
「うん…このままで、いいよ…これ…」
「そんなことは、お気になさらずに。さ、お着替えいたしましょう」
着替えてぬいぐるみを抱えてすぐに匂いに癒されて寝てしまいました。
これだけあるなら、他の方にお配りするのもいいなぁ。
私が最初にもらったのは何だっけ、ガーゼ地?タオル地?
とても、触り心地良かった気がするなぁ。
でも、あれだけの量何体作る予定で買われたのだろう。
10mの布束が12-3個はあったわ。
別の用途に使ってもいいと仰ったから、ルフィーナお姉様の
慈善活動に使ってもいいのかしら?
もしくは、ウィルソン様の慈善活動に使った方がいいのかしら?
ウィルソン様も貴族ですもの懇意にして寄付とかされている
施設や教会とかもあるだろうしそうよねそんなお話しを
聞いたことがないけどきっと慈善活動されているわよね。
恩返しの意味も兼ねてウィルソン様の資金で買われた布なのだから
ウィルソン様の慈善活動の方を協力すべきだよね。
じゃあ、ウィルソン様の教会…に、い……くつ、作ろ…な…………
最近寝落ちするな、ココット…
秘かに王室では、ポプリ問題が出てきてますw
とある王女様が、やたらめっちゃら作っているので
強烈なニオイで王城内が充満しています。
ウィルソンは、王城で働く議員のような役職と考えていますが
何がいいのだろうな。というか爵位持ちって何の仕事しているだろう?
あと、爵位だけのつもりだったけど領地を持つのが当たり前のようなので
遠方にちゃんとした領土もあって、夏場はそっちに避暑に行くと。
主人公を暴走させながらそんなこと考えていましたっ。