【20】 お茶会準備 ―お誘い―
「お久しぶりです、ココットさん」
「ご無沙汰しております、レフィリア様。今日は、お誘いに来ました」
「…?お誘い?」
「はい!そこの窓から見える花壇の前で、
花を愛でながらお茶を楽しもうと思いまして
ウィルソン様には、もう許可は取ってありますよ
今はまだ暖かく花もたくさん綺麗に咲いている時期なので
外でお茶するのととても気分が気持ち良くなりますよ!」
外に出たがらない、レフィリア様に
“お外って楽しいよワクワクするんだよ!!”
って楽しそうに話しかけると、その気になってくださるんじゃないかと
思ったんだけど……余計にいぶかしんだような複雑な顔をされてしまった。
「……何故、そのようなお話を?」
あわわわわ…警戒モードに入られてしまった!
レフィリア様にとってこのお部屋は、外からの刺激から護ってくれる
要塞のようなものなのだろう。入口から一番遠い最上階のお部屋だし。
でも、ご結婚が決まるまでずっとこの薄暗いお部屋に篭られるなんて…
世の中もったと楽しい事たくさんあるのに!もったいないです!!
外には確かに人もたくさん来る可能性があるし
虫などの害虫もうようよいて気分いいものじゃない。
でも、それ以上に体をなでる風や鳥達の話し声、葉がこすれる音や
花や木々から出てくる匂いは絶対癒しの効果があるわ。
太陽の眩しさや、それに照らされて輝く花々の美しさ
美しいもの、楽しいもの、色んな発見をたくさん見せてくれる!
さすがに、草の上で寝転ぶと
…は、気持ちいいけど良家の淑女はしちゃいけないだろうな。
(一昨年やったときのタバサの静かな怒りといったら…うぅ思い出しちゃった)
だから、攻撃されることに怯えないでもっと外の魅力を知ってほしい。
「外を見て欲しいからです。レフィリア様がお好きだと聞いた
シィリンの花も今鮮やかに咲いています。私の好きなナリーラは
時期が過ぎちゃいましたが、他の花々はとても綺麗です
木々も、気持ち良く葉を揺らして音を鳴らしていますよ
鳥達も、ちょうど渡り鳥もいるのかとても賑やかで
そんな自然に囲まれながら、食べるお食事は格別なんです!
私だけが、その幸福に浸るなんてもったいないじゃないですか!
だから、レフィリア様にもその素敵空間でケーキを食べたら
とっても幸せな気分になるんじゃないかと思って!!それで、企画したんです」
はぁはぁ…言い切ったわ。幸せの部分だけ言うのは卑怯な感じがするけど
起こるかどうか解らない話をして不安を煽るより、
確実に訪れる幸せの話をした方が絶対いい。
でも、やはり決断されるのがお辛いのか口篭ってしまわれた。
だから、レフィリア様のお手を取って(うわっ、小さくてすべすべぇ…)
私の気持ちがレフィリア様のお心に届くよう優しく言った。
「お茶をされなくてもいいです行って帰ってくるだけでもいいです。
今の時期だけしかもらえない自然の贈り物を受け取りに行きませんか?」
「…自然の贈り、物?」
「はいっ!木や花や風や太陽や鳥やケーキやお茶になってしまった
植物達が、レフィリア様にお届けしたいと待っています。ずっと
あと1月もしないうちに寒い時期に入りますから
それまでしか受け取れないんです。花は枯れますし鳥は去ってしまいます
だから、今限定なのですよ。私も、サナさんもご一緒します」
「……………………。」
あまりの怯えように、お茶は断念してもいいと思った。
いきなり外行け!っていうのも無謀だったかもしれない。
でも、ここで行動しなかったら今度はいつ出られるか解らない。
だから“この部屋から出る”というきっかけになればと
“とりあえず花だけでもいいから見に行く”を再提案してみた
最後のは、“私と何時も一緒にいるサナさんが片時も離れずお守りします”
って思いを込めて言ったんだけど、届いただろうか?
しかし…
殻に閉じこまなければ自分を護れないほどのお辛い体験ってどんなものだろう
護ってくれるはずの親戚が自分を駒に踏み台にして
優しく包んでくれるはずのお友達から激しい裏切りがあった
ウィルソン様の説明から、そんなことが想像できるけど…
こんなに怯えて、不安の色を濃くするほどの体験ってどんなのだろう?
何不自由なく優しく育ててくれたエルベリー家にいた私には解らないけど
今のレフィリア様を見ると、かなり昔に小さな心がズタズタになるほど
悲しい日々を送られた事は解る小さいころに受けた傷は中々治らないと聞くし
私がその場にいたら、お姉様に協力を仰いで相手をボコボコにするのに!
ウィルソン様は、ただの話相手でなく裏切らない・利用しない相手を
お探しになっていたんじゃないだろうか。私に求められているのは…そこ
ならば、私は全力でお護りしよう!!誠心誠意お仕えしよう!!
いつか、心からの笑顔を見られるよう頑張る!!
レフィリア様がお茶会参加にご同意いただいたのはその日の帰りでした。
トラウマは、そう簡単に出来ないものだから怖いんですよね。
私も、未だに風船トラウマが克服できません
30年近く前、持っていた風船が派手な音立てて割れてから嫌いなんです。
だから、お子様に配る風船であふれかえるバーゲンは私には地獄。
私は、風船には興味でないので克服出来てませんが
レフィリアはずいぶん前から外に対して憧れを持っています。
従姉の話を聞くたびに“友人”という関係に対して強い思いがあります。
それは、人間にとっては当たり前な事。誰でも人と接したいです。
だから、ココットの後押しを受けて前に進もうと決意しました。
ルフィーナは、“可愛い”ものなら人でも物でもなんでも好きです。
それを、害そうとするなら全力で排除します。
ルフィーナがレフィリアを見たらどうなるんでしょうねw
そして、レフィリアの外戚に毅然と立ち向かって護ってくれそうですね。
Oh…ルフィーナ、マジ王子様。