【19】 お茶会準備 ―2―
「料理は、時間との戦いって言ってんだろうが!
お前が、ちんたらしているから…食べてみろ!
中途半端な仕上がりになったじゃねーか!!」
お茶するのですからお茶とデザートは必須なわけで
くま料理長(仮)のいる厨房に来たわけですが、何やらすごい迫力です。
もう、昼食は終わったしデザートも食べたので
どうやら、若い人たちの指導の時間のようです
新しい立派な料理人を育てなくちゃいけませんよね
“長”のつく人たちは、とても忙しいものです。
そんなに忙しい人に、“美味しいデザート作って”とかって
我侭言っていいものか。ロダムさんはみんな待っているって言ってたけど
こんな忙しい中で、仕事増やしていいのかな。
「どうしました?」
「ヘアッ!!」
顔だけ出して様子伺っていたら、
夕食の仕込みをしているらしい料理人さんと目が合いました!
いっせいに視線が私に集中する。もちろんくま料理長(仮)も見ています。
「これは…ココット様ではございませんか?」
くま料理長(仮)に話しかけられました!!
大きい人です。縦にも…横にも…目の前に来ると入口がふさがりました。
「はい、料理長にお話があって伺ったのですが…お忙しいですか?」
「とんでもございません!
もしかして、噂に聞く“お茶会”の話でございましょうか?」
「はい。レフィリア様とお庭でお茶を飲みながらお花を見たいと思いまして」
「そうですか!いやぁ、楽しみだ。それで、どのようなもの…」
「アンタ!何、立ち話させてるんだよ!!」
「はい~!!ごめんなさいッ」
びびびビックリしました。
いきなりくま料理長(仮)の背後から、女性の怒鳴り声が聞こえてきました
くま料理長(仮)が大きすぎて姿は見えませんが隙間から見える
料理人達のビクついた顔から怖そうな人だとわかります。
思わず謝っちゃいました。
「どきな、グリーズ。失礼いたしました、ココット様。
ここの、デザート担当をしておりますリウムと申します
先程の言葉はこの壁男に申しましたの。誤解を生むような
発言をしてご不快な思いをさせてしまい誠に申し訳ございませんでした
そしてココット様を立たせたまま長話をさせようとした
夫の無礼をお許しください」
くま料理長(仮)の背後から現れたのはルフィーナお姉様のような
堂々とした立ち姿がカッコいい厳しそうだけど美しい女性が立っていた
ここの家の女性って、本当美人ばかり…私、よく採用されたわね……
「夫…?料理長が旦那様なのですか?」
「まぁ“様”なんていりませんわ。騒ぐだけのでくのぼうですもの
さぁ、お部屋へお戻りください。そちらでお話を伺いますわ
部下に用件を言い付けてから参りますので、先にお戻りくださいませ」
「いえ!お忙しい中我侭を言うのですからこのままで…」
「まぁっ!!…では、私どもが旦那様とミセス・フェブリーから
お叱りを受けてしまいますのね。…あぁっ…戻ってくださらないと、私、達…」
「わわわっ!戻りますっ!!」
強気なお顔が、一瞬で儚げな顔になりハラリと涙が落ちるのを見て
いつかの洗濯侍女さんを巻き込んでしまった事を思い出して、
慌てて部屋に戻りました。ほどなく、ヘレンがワゴンにスイーツと
お茶を乗せて持ってきて、その後ろからリウムさんとくま料理長(仮)…
じゃなかった、グリーズさんだっけ?が入ってきました。
「いつものデザートは、リウムさんが作ってくださっているのですか?」
「はい。ココット様がいらしてから、作る機会が増えまして
毎日楽しく作らせていただいております。ありがとうございます」
「こちらこそ、いつも美味しいケーキをありがとうございます」
「では、早速ですがどのようなものになさるのでしょうか?」
「私は、パーティを企画した事が無いんです。
ですから、具体的な計画とかやり方とか分からないのですが
たくさん、ぶわーっとケーキを大皿に並べたり…んー。
たくさん、ケーキを食べたいんです。
ウィルソン様と初めてお逢いしたパーティで、
大皿に20個くらいのミニケーキが乗っていたんですが
見ているだけでとても楽しくなったんです。ああいうのって、出来ませんか?」
「ただ、雑然と乗せているだけでは見栄えがよろしくありませんわ。
ですから、タイルアートのようにケーキの色で一枚の絵を作ってみるとか」
「あぁ!それなら手のひらサイズの四角いケーキを並べて
レフィリア様のお好きな…あー、なんだっけ…黄色い花……」
「ナリーラですか?」
おぉ、さすが伯爵家の侍女(?)なんでも知っていますね!
でも、違います。うーんうーん、ロダムさんに名前聞いたはずなのに…
あー、もー頭の中でロダムさんがしゃべるイメージが浮かぶのに
何言っているのか解らないわ!名前、名前ぇ…
「シィリン?」
「そうっ!リウムさん、それっ。それが、レフィリア様のお好きな花ですっ
お部屋から見た時その鮮やかさ心奪われたって
レフィリア様が仰っていたというのを侍女さんから聞いたって
ロダムさんが言ってました!」
「私も好きなんですよ、この人にプロポーズされた時にもらった花なんです」
「り、リウム!しゃべんな!!」
グリーズさんが、真っ赤な顔で止めようとしたけど間に合わず
惚気話を全部話してしまいました。グリーズさん、ロマンチック~
いいなぁ、アツアツのお二人。私も、いつかそういう人出来たらいいなー
「図案は、クロスステッチに使う図案の紙があるか…」
「私が、取ってまいりますっ」
ヘレンの有能さが、ここでも遺憾なく発揮しました。素早い…
取りに行くために、私が腰を少し動かしただけで
ヘレンは、軽い身のこなしでクローゼットの奥に消えていきました。
あの…それくらい私が、普通に取ってきますから…
呆然としている間に、目の前にテーブルと紙と色鉛筆が綺麗に置かれました
ヘレンさん…何か、特殊訓練でも受けているのでしょうか?
瞬時に無駄なく短距離で移動してしかも、美しい配置で用意できるなんて…
私には、もったいない侍女さんです。そして、私もその技術欲しいです。
それで、小ぶりの花を咲かせるシィリンの花を5-6本生やして
ピンクの背景に木枠のイメージで枠を作った絵画のような作品に決めました。
お茶会は、1週間後なのでその間にどんなケーキを作るかをリウムさんに
任せました。上のトッピングが1つずつ違うと素敵だけど、手間とか
材料手配とかあるからそれは、現場の方にお任せします。
(私には手伝える技量が無いので、全面的にお任せするしかなかった…)
そしてここから、私の腕の見せ所です!
テーブルクロスに、シィリンの花を刺繍します。
ヘレンに頼んで、180×150の布を買ってきてもらい
(布を買いに行きます。と夜言ったら翌朝には用意してくださいました
町に出たかったのに…しかも、代金も出していただいた。ホントに仕事速い)
四隅に花3-4本つけて側面に葉や花びらを散らそうと思うのですが、
この1週間で出来るかしら……
明日は、久しぶりにレフィリア様にお会いします。
お誕生日にはデビュー前だからかご親戚の方とウィルソン様のご友人の方
をお呼びするらしいです。私はどうするのかとウィルソン様に聞かれましたけど
どうしましょう。新参者が、そこにいていいのでしょうか。
やっぱり、お部屋で静かにしていた方がいいのかしら。
新キャラ登場!!
新キャラ作りすぎて私の脳内がカオスにならなきゃいいけど( ´Д`)=3 フゥ
くま料理長…こういう職場は女性が仕切るんでしょうが
恰幅のいい朗らかな男性料理人が好きなのでくま料理長を作ったのですが
さすがにスイーツは別人が担当だろうなと(多忙だから料理長って)
嫁にしてみました。勇ましい男前な女性は私の趣味ですw
順番違う気がしますが、次回レフィリアにお茶会へのお誘いです。




