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【16】 お忍び雑談

あれから、1ヶ月。


半日レフィリア様のお相手をして、あとは刺繍用のお花スケッチ

というのが前半で、ここ最近は昼食もご一緒させていただくことが多くて

一日しゃべり通すこともあり

仲良し度が良い具合に上がっている感じがしてきました


しかし、仲良く1日を過ごせたのはほんの3回くらい


レフィリア様のお誕生日が間近なのかダンスやお勉強の時間が

増やされてしまったらしくまた半日モードに戻されてしまいました。


毎度毎度刺繍というのも飽きてきました


家にいるときは、服を作ったり兄様から依頼される仕事をしたり

お姉様のお仕事用のお人形作ったり、自分のお人形を作ったり

お兄様のスイーツ作りのお手伝いをさせていたり、

お父様の畑仕事をお手伝いさせていただいたり、虫が出て騒いだり

侍女の仕事をじっと眺めたり、シェフの仕事を見ながらつまみ食べしたり

衛兵と雑談して兄様に叱られたり、庭師の鼻歌を聞いていたり


暇なことなんてなかったのになぁ。


今日は、レフィリア様はダンスを習っています。



「どうしましょうかね」










「あぁ、繕い物って素敵ですね!」



「そ、うですね…」


「そうですかね」


「だって誰かのお役に立てるなんて素敵じゃないですか」


「そうですけど…あの、敬語でなくて結構です」


「それよりココット様はこちらに来てよろしいのですか?」


初対面の人だとどうしても敬語になってしまうんだ。直さなくちゃ。


「だって、刺繍ばかりするのもなんですし…なんだし

手早くできる繕い物って好きなんで…なの!

以前と変わらない形に補修できたらかっこよくな、い?はい、終わり」


敬語で話さないようにしよう

なんて気を使いながら裁縫してたら変な台詞になったみたい。

エリスやタバサにするような話し方でいいのよね。と、縫い終わって気づく。


「「早っっ!」」


「久しぶりだから興奮して止まらなかった。はー、満足」


「ココット様以前からこのようなことを?」


「うん。まぁ、子爵家なんて下っぱ貴族じゃない?

あまり上の方に見初められることもないだろうし土地柄?

中流階級の人と結婚する可能性あるわけよ。貿易港近いしね。

ご先祖様にもそういう人と結婚した人も結構いたぐらいだから

そんな可能性もあるから一通り自立した生活ができるよう習ったの

だから一応料理もできるのよ。味は保障しないけどね、えへへ。

たまにウチの人間の繕い物をやっていたの。

でも、ここは規模が違うわね破れる箇所もほつれる場所も人それぞれ

際限なく縫えるんだから私にとって楽園だわ」


「ココット様は身分の高い方と結婚されたいとは思わないのですか?」


「ちょっと、ニース」


「うーん。上を狙いたいとは思わないかな

ウチの家系はそんなに上昇志向ない人ばかり生まれるの

素敵な方がいればその方としたいと思うけど身分では決めないかな

というか、あまり強く結婚願望が芽生えてこないのよね

兄様もお姉様もまだご結婚なされていないし

まぁ、いつかはするかな程度

でも、いつお見合いが来てもいいようにって練習させられてるの。変よね」


「お見合い…ですか。貴族の方も大変ですね」


「そうそう。みんなより良い暮らしはできるだろうけど自由がないのよね」


「自由?」


「この前一人でお買い物行こうと思ったら

トールマンに止められて欲しいものと言われても

私が着る布地だから直接見ていきたかったのにダメらしいの

えっと…ニースさんとリエスさんは一人で買い物に行きます?」


「呼び捨てで結構です。いいえ、物騒だから2人以上で行きます」


「楽しそうですね!帰りにスイーツ食べに行ったり?」


「はい。女性の買い物って長いですからね

カフェで休憩して体力を回復させてから帰るんです」


「いいなぁ。今度私も参加させてもらおうかな」


「い、いえ…ココット様は旦那様のお許しがないと無理かと」


「ですよね…」




「何をされているのですか?」




落ち込んでいる所に冷え冷えとしたブリザードのような声色に

恐る恐る振り返ると冷たい目をして凍えるオーラを纏うミセス・フェブリー

打ち合わせしたわけでもないのにそこにいた3人が同時にヒッと言った。


「ココット様このような場所で何をされているのですか?」


「え…と、繕い物を………」



「貴族の子女である貴女様が何故修繕部屋に居られるのですかっ?」



ひやぁ!!雷落ちたぁぁ!!(静かな怒り怖っ)


そうなんです。リネン室の隣の服をたたみ修繕する部屋で縫い物してました☆

ちゃんと侍女さんのような地味目の服を来て頭もちゃんと装備して

自然な感じで入りました。もちろん部外者なのはバレバレなので

そこにいたニースさんとリエスさんを何とか拝み倒して

参加させていただきました。とても楽しかったけど、雷怖い!!


そして、何故だか執務室にいます


あるぇ?私の部屋でお叱りを受けるかと思ったら、

ウィルソン様のお仕事場に呼ばれました。ご当主自ら雷投下!?

ミセス・フェブリーが退室するとき2人には責任はないから

って言ったのですが「それでは、けじめが付きません」と

聞いてくれませんでした。


2人が、厳しい処分を受けたらどうしよう

私が職を辞して彼女達をとどめて置いてくださらないかしら

そんな権限ないかしら。真面目な人達だから

ウチで働けるよう兄様にお願いしようかしら。使用人いっぱいかしら。

どうしよう私のせいで職をなくしてしまったらどうしよう。



「君は、何故あの場所にいた」



どうしよう、どうしよう。と考えていたら重く冷たい声がしました

顔を上げると目が青く光るように鋭く射抜くような視線を送っていました

こ、これが“氷塊伯爵”ですか!?こ、こ怖いです!!


「も、申し訳ございません。針と布にもっと触っていたかったんです!

私はどぶ掃除でもトイレ掃除でも解雇でもどんな罰でも受けますから

ニースさんとリエスさんを助けてください!

私が、無理言って強引にあそこにいさせもらったんです!!」


「落ち着きなさい。私はそこまで怒っていない」


そ、そこまで怒ってないですか。

で、でもそれなら何故お呼びになったのでしょう

険しい顔をなさったし別に悪くはないと思ったけど

貴族的にはふさわしい行動ではなかったのだろうなぁ。


“貴族らしい”っていうのは難しく冷たいものだなぁと思ってみたり


「深く反省しているようならば私は何も言うつもりはない。

だが、君の言動一つで使用人の人生などどうにでもなるということを

肝に銘じておきなさい」


「はい……」


「それで?そんなに針と糸に触っていたかったのか?」


「以前は、侍女のタバサに内緒で先ほどみたいに隠れて繕い物してまして

繕い物は単調な作業ですが完成品がすぐ積みあがるのでその辺が面白いんです!

作業する人は頑丈に接客係のは凝った縫い方でと縫い方も工夫したりして

面白いんですよ!ボロボロになった服を掃除用の拭き布にするために

ザクザク切るのなんかはストレス発散にもってこいで!

…ぇ…申し訳ございません」


謝罪に来たのに、何で熱く語っているの、私!

これじゃあ反省をまるでしてない人じゃないの。



「ならば、私の服の補修をしてみるか?」



………………へ?


いつもびっしりかっちり着こなしているウィルソン様のお召し物を補修?

パーティのときは女性にもみくちゃになったみたいだけど

日常で何かがこすれたとかほつれたとかそんなトラブルとは

無縁な生活をお暮らしのはず。それに…


「そそそ、そんな滅相もない!ウィルソン様のお召し物は

仕立て屋さんが補修などをなさるのではないのですか?」


「やってくれる者がいないから任せているだけだ。君は、どうする?」


そりゃあ、御当主のお召し物だもの

見栄えや縫い方が少しでも見劣りしたらいけないって思うから

皆遠慮しちゃうよね。私も、なんか引けるけど…



また、あの上質な布に触れるかと思うとワクワクしてきました~!!!!



だっ、だって、肌触り全ッ然違うのよ!?

驚きの白さ…じゃなくて針通り仕立て屋さんのようになりたい

って思うならこういうことも経験しなくちゃね。

でも本当は恐れ多いです。って言わなくちゃいけないんだろうけど

あの布たちに触れる誘惑には負けますーーーーー!!↑っひゃほー!



「よろしくお願いします!!」



後日、クローゼットチェックすることになった。


貴族としての慎み<<<<<<裁縫の誘惑


一応貴族なんだから使用人に変装して使用人エリアにいたらそら叱られるよ。

エルベリー家ではどれだけ自由奔放に育てられていたか解っただろうか…令嬢は

わかっていないだろうね…当主の指示で令嬢には好きなようにさせてやってくれ

としてあるので、使用人達も家族を見るような温かい目でみていたのですがね。

育った環境から今の環境に慣れるまで時間かかりますよね。


ちなみに伯爵は皆が恐れる顔はしていません。ただの真顔ですw

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