【15】 仕事復帰のマシンガントーク
レディズ・コンパニオンってこんな感じでしょうか
ココットのほうがしゃべり倒してますが(^v^;)
結局、4日ほど熱が下がらなくて熱が下がっても移すのを防ぐため
さらに3日ほど静養を命じられました。館内で流行ってるみたいですね、風邪。
熱が下がりだるさがなくなってからすぐに刺繍の構図作成にかかりました
だってレフィリア様のお見舞いにとスケッチしたはいいものの
部屋に入ってすぐに寒気がしていくつか構図を描いてみたのだけれど
あまり私の心に響かず(私の心に届かないものは作らないの)
一晩寝てからと思ったのに、起きたらアレだものね。
本当お仕事休んでしまうなんて気が緩みすぎだわ
しっかりしなくちゃ。と、静養期間にバッチリ完成させました。
ウィルソン様に許可をいただいて1週間ぶり?にレフィリア様のお部屋へ
お互い病気でキャンセルしあったので、謝罪合戦した後
目的の刺繍をお渡ししました
喜んでいただいて額に入れたいと仰ってくださった。
私、感激で涙出ました。嬉しいです!いつか私も欲しいです!
…言ったらやんわり拒絶されましたが。くすん。
さて、本題です。
「あと一つ、こちらをお渡ししたくて」
「まぁ、何かしら。綺麗な袋ね」
「はい、ポプリです。
実は、花のスケッチしている時にアルフレッド王子殿下にお逢いしまして
殿下がレフィリア様にと言われお預かりしておりました
こういうのは人づてに渡していいのか直接渡したほうがいいのか
わかりませんでしたので私が完治するまでお渡しすることが出来ませんでした」
「…、ココットさん…どなたが、私に?」
「アルフレッド殿下です。第5王子だと仰ってました」
「え、えぇ、5番目の王子様は確かにアルフレッド様というお名前ですわ
そ、その方が私に?こ、これはどういう…」
「えー、と、妹姫のうーん。お名前忘れた。
その妹姫様が、ポプリ作りに夢中とかでたくさん作られるのだそうです
それで殿下も妹姫様からたくさんいただいたので色んな方にお配り
しているのだそうです」
「そう…なの、ですか?あの、他に何か」
「………?何も、ございませんが」
赤くなったと思ったら、今度は落ち込まれて…
どうしたのだろう…うーん。殿下は、特に何も仰ってないけどなぁ
悲しく落ち込まれているレフィリア様に何をして差し上げればいいのかと
私もおろおろしていたら、急に顔を上げられた。
「あの…殿下は、どのような方でしたか?」
今度は、春の暖かさのような赤みを増したお顔で聞かれました。
そのお姿が、本当可愛らしい。この方のお針子になりたい!服作りたい!
…いえ、冗談です兄様。ほほほ、冗談ですわ
「爽やかなお兄さんでした。微笑を絶やさず、物腰も柔らかで
その日は冷たい風が吹いていましたが、
殿下の周りだけ春風が吹いているようでしたよ」
「素敵な方なのですね。ぜひ一度お逢いしたいですわ」
「ウィルソン様のお客様でしたので、
ウィルソン様にお願いされてみてはいかがですか?」
そうしたら、今度は少し悲しそうな顔をされて俯かれました。
どうしたのでしょう。ウィルソン様はしばらくお帰りにならないとか?
今日は、感情の起伏が激しいのですね。そのお姿もまたお美しいのですが。
「では、もしウィルソン様かアルフレッド様に
お逢いしたら少しお願いしてみますね」
「い、いえっ…いいのです。ありがとうございます
あの、せめてお礼のお手紙書かなくては
ココットさんも、ありがとうございます」
「いいえ、お渡しするのがものすごく遅くなってしまったので
とても、心苦しかったのですが、そういっていただけると嬉しいです」
本当に寝込んでいるときはそれが気がかりで仕方なかった。
王子殿下から受け取りウィルソン様も私に任せてくださったから
他人に任せていいものじゃないだろうしけどずっと私が持っててもなぁ
という思いが私の心に重く残っていた。
レフィリア様のお言葉でその重石はなくなったけど
「ココットさん、今度お庭で一緒にお茶しましょうね」
「!!っはい!!花達もきっとレフィリア様を待っていると思いますよ」
「私、あまりお庭に出たことないのそんなにたくさんお花が咲いていますの?」
「えぇ、庭師のロダムさんが丹精込めて育ててるんで
それはそれは、見事な咲きっぷりですよ。
おかげでスケッチの題材には困りませんわ。
そうそう、ロダムさんにも私のスケッチを見せたらね、
喜びから一転ものっすごく困った顔になって自分の画力のなさを知りました
ウィルソン様にも同じような反応されて…もう泣きそうでした
さすがに、その時は名前は存じなかったんですけど殿下には
お見せできませんでしたわ。そんなことしたら、本当に心折れそうでしたもの」
「そ…そうですか。ロダム、というのですね。庭師の名前」
「えぇ、小柄だけど力持ち!みたいな体つきのいいお兄さんですよ
花に精通していて花言葉やそれにまつわる神話なんかも
知っているみたいなんですウチの庭にはあまり花がなかったので
そんなに詳しくなかったんですけど兄様がずっと大切にしていた
花の正体も教えてもらったんです。」
「ココットさんのお兄様…お花を育てるのですか?」
「いいえ!兄様は、ボードゲームが趣味です。病的に。
そうそう!聞いてください。兄様ったら、ウィルソン様や殿下にも
対戦挑んでいたらしくて恥ずかしかったです!」
「恥ずかしい?」
「えぇ!だって初対面の相手にいきなり対戦申し込むなんて無礼でしょう。
それなのに、兄様は誰それかまわず身分問わず対戦申し込むんですよ。
もうそれ聞いて、恥ずかしくて。パーティへ何しに行ってるの?
って感じですよね。私には、いっつも淑女らしく貴族らしくしろって
仰ってるのに兄様のほうが貴族らしくないじゃないって
今度会ったら叱ってきますわ!」
「ココットさんのご家族はとても楽しそうでわね」
「はい。お目付け役のタバサは落ち着かれませ!って
キーキー言っていますがとても賑やかで楽しいですよ」
「私は…少しうらやましく感じますわ」
「そうですか?私は、ウィルソン様のような
頼もしく優しいお兄様がいてレフィリア様がうらやましいですわ」
「…どうして?」
「だって、兄様いつも不在なんです。
内務は兄様の仕事なのですが時々お客様のお相手もするんです
でも、使用人の誰かと対戦していることが多くて
いっつも私が探しに行くんですよしかも、隠れてるし!
その点ウィルソン様はいつも執務室にいらっしゃるみたいだし
いつもレフィリア様のご様子をお聞きになるし
お忙しいから接する時間が少ないだけでいつも気にかけておいでですよ
だから、そうやってそっと見守ってくださるお兄様がうらやましいですわ」
「そう、なのですか…」
あり?また、レフィリア様が落ち込まれた
実は、騒がしいのがお好みだったとか?
フラフラ邸内失踪する兄様よりどっしり定位置にいてくださる
ウィルソン様のほうがずっとうらやましいと思うのですが。
「いつか、ココットさんのご家族にお逢いしたいですわ」
「兄様はめったに領地の外へは行きませんが、
お父様が王宮に御用があったりお姉様が各地を回られているので
お父様かお姉さまなら会う機会があるかもしれません」
「お姉様は、どのような方ですか?」
「台風です」
「…はい?」
「台風のように突然やってきて色々騒いで突然去っていくんです」
「賑やかな…方なのですね。
私には、姉はいないのですがお姉さまとはどんな感じなのですか?」
「うーん。お姉様は温かい方ですね
スキンシップが激しいですからそう思うのかもしれませんがとても温かいです
いや、温かい時もありますが、苦しい時もあります。
お姉様は私とは真逆でとてもスタイルがいいのですがあの豊かな胸で
抱きしめられ時は窒息と圧迫で天に召されそうでした。
兄様に助けてもらわなかったら今ここにいなかったかもしれませんわ」
あれは、本当にひどかった。
私が、流行り病が原因の高熱で生死をさまよって意識が戻ったとき
大きな物音を立ててお姉様が入ってきたと思ったら、
泣きながら抱きしめてくださったんだけど、力の加減を忘れて
頭を抱えて顔をお胸に押し付けたので息が出来ず、
周りの者も引き剥がそうとしてくれたんだけど…お姉様の力に勝てなかった
兄様がいなかったら…ぞっとします。
あの時兄様の本気の怒りを目の当たりにして大泣きしたんだっけ
「帰りたいですか?お家に」
「いいえ。確かに恋しくないといえば嘘になりますが
でもレフィリア様とこうやってお話しするほうが楽しいです
だからもっとお傍にいさせてください」
「ありがとう……ココットさん…」
キラッと目じりを輝かせながら、ふわりと微笑むレフィリア様の笑顔は
今まで見た笑顔の中で一番輝き、優しく美しい笑顔でした
また少し仲良くなった気がしました。
ココットは、仕事として来ているので“報告書”みたいなものを書いています
それとは別に伯爵に直接対面してレフィリアの様子などを報告しています。
この二人いつラブるんだろう…
と私がやきもきしていますが、一応裏では接触しています。事務的に…
くそっ。ラブいの書きたい!!アツアツで砂吐きなの書きたい!!
書きたいのに書いたのは結局ダイナミックなエルベリー家。
前にも書いた、緊迫した地域に住んでるので武術に長けた一族の
行動は実に賑やかです姉が見舞いに来たら妹が更に瀕死になりました
とか、実直温厚な兄と破天荒な妹の激しいバトルとか…恋愛とは無縁すぎる!
格闘小説じゃないです。冒険小説じゃないです。恋愛小説です。
ラブ書きたい…(そして、月光の巫女姫に逃げていく)