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【8】 貴女を呼ぶ言葉

話が長くなったので変な所で切りました。すみません。

クスクスお笑いになる伯爵妹君レフィリア・ノールフェスト嬢は

楽しそうな声色はしても漂う空気は張り詰めたまま。

まだ、私に対する警戒は解いては下さらないということだろう。


そんなに、他人を信用しない・できない環境で育ったのだろうか。


私には家と言うのはエルベリー家くらいしかしらないけど

(レイザック侯爵やメイローラ伯爵の家は

表面的には知ってるけど実情知らないし2つの家の人はとても優しいし)

さっきウィルソン様も仰ってたけど利権がらみの面会が相次いでた

みたいだから気が休まるのが誰もいないこの空間なんだろうな。


そこに誰ともわからない人間(私)が入ってきたと。


うーん、私はレフィリア様とは洋裁仲間になりたいとは思うけど

強制してまで仲間になっていただくつもりはないし

「位上がると今以上に城に出仕しなくちゃいけなくて面倒なんだよ」

ってお父様仰ってたから位やお金には執着しないし…大変そうだし。

(だから私がこのお仕事選ばれたのかなって思う。私は針さえ触れればいいし)


でも“どんな人なのかわからない他人”には変わりないのだし

取り繕うように“私は、無害です”といっても皆さんそう仰ったんだろうから

信じてもらうのは無理そうです。


というわけで、ひたすらレフィリア嬢とお話させていただいて

レフィリア嬢が警戒を解いてくださるまで“裁縫仲間とフフフフ”な

生活はお預けそうです。はぅ……


「私から、質問させていただいてよろしいですか?」


「あ、はい。なんでもお聞きください!」


「……。お兄様とはどちらでお知り合いに?」


「先月のレイザック侯爵のパーティで。

その時に“裁縫したい”と私が騒いでたのを覚えてくださって

レフィリア様のお話相手として雇ってくださったのだと思います」


「………………??

あ、あの要領をえないのですが、パーティでのことを

もっと詳しくお聞かせてください」


ん~。ウィルソン様のことを詳しく話していいものか

兄様のときは詳しく話さないと男性と個室に入った経緯とか

話せないしだいたい男性が一人でいる理由をごまかすにも

他の理由が見つからなかったから正直にお話したんだけど。


妹君に“貴女のお兄様は女性から逃げてました”とか

話していいのかな。あの…主に兄としての威厳的な意味で。


ん~~~~!でも、ボタン付ける話が出来ないか。

すみませんっ正直に話すので兄君の威厳が損なったらごめんなさい!



というわけで、正直にお話させていただきました。



レフィリア様は、唖然としていらっしゃったけど

私が洋裁が好きなのはわかってくださったみたい。

まぁ、それですぐ洋裁仲間として接してくださるかはわからないけど…


「お話はわかりましたわ。

それで、私とどのようにしたらいいかとかお兄様は何か仰いまして?」


「いえ、ただレフィリア様も刺繍がお好きだから話が合うのでは

とは仰いましたが特に何かをというご要望はございませんでした。

私も屋敷から出たことがないので流行や都での噂などは存じ上げないので

その辺のご期待には添えませんがお裁縫とかお花のこととかなら大丈夫です

特に裁縫は一通りやりましたので何でも聞いてくださいねっ!」


「…あ、はい」


「私は本は読まなかったんですが、

レフィリア様のお勧めのご本なんかありましたらお聞かせください。

レフィリア様のお好きな本が、どんなお話なのか知りたいです。

私も本を読めるんだぞってタバサを見返してやるんだから!」


「えぇ、ここにはないのですが今度お貸ししますわ」


「ありがとうございます!」


「レフィリア様ココット様お茶をお持ちいたしました」


侍女のサナさんが、おいしい匂いのする紅茶を持ってきた

あれ?私の敬称どうするのかしら

侍女としてここに住むのだから呼び捨てでもいいのではないかしら。


「サナさん、あの…私も一緒に働くので呼び捨てでも結構ですよ」


「ですが、ココット様は私のような侍女のようなものとは

お立場が違います。上からも“様”付けで呼ぶよう指示がありましたので、

私もそう呼ばせていただいています。

詳しくは女性使用人を総括するミセス・フェブリーにお聞きください」


そ、そうなの?“お立場”って何?私も今日から使用人じゃないの!?


ウチでは…こんなに人いないし家庭教師などのちょっと上の使用人なんかは

ミセスなんちゃら~って呼ばれてたから家にいるのと変わらない

私の様付けに大いに戸惑ったこれ本当に雇われているのよね?私。

とりあえず、ミセス・フェブリーという人に後で聞かないと。

自分の立ち位置がわからない。


「あら、では私はなんと呼んだらいいのかしら」


「えぇっ!?レ、レ、レフィリア様っ、私のことは呼び捨てで…」


「でも、なんだかご事情が複雑そうですわ。

サナ、ミセス・フェブリーを呼んできてちょうだい」


「かしこまりました」


うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!なんか大事になってきたぁぁ!


何々!?私、普通の使用人ではないの?というか本当使用人ではないの!?

ウチでは子爵家の家族を世話する侍女と雑務をする人と

料理人と洗濯する人くらいしかいないしそれらは同列の扱いだったよ!?

ちなみに子爵家では総括というか纏め上げるのは女性は古くから居るタバサで

男性はお父様の執事ジェイスだったわ。それにしても…


ふぇぇ、上流階級ってなんか複雑ー


少しして熟年の女性が静々と歩いてきたこの人がミセス・フェブリーらしい。


「レフィリア様参りました。

そして、貴女様がココット・エルベリー様ですね

私、ノールフェスト家の女性使用人の管理を任されております

キャンベル・フェブリーと申します。以後お見知りおきください」


「ココット・エルベリーです。よ、よろしくお願いします」


「ミセス・フェブリー

彼女は私の話相手として来てくださったそうなのですが

使用人とは違いますの?」


「はい、旦那様から

ココット様は社会勉強を兼ねたお嬢さまのお話相手として

来られる大切なお客様だから使用人として扱わないように。

とのご指示をいただきましたので使用人としてではなくお客様として

扱わせていただきます」


えっ!?お給金もらうお客様ってそれはおかしいでしょ

家で聞いた話と全然違う方向に話が進んでて驚きで言葉が出なかった。


「では、私はなんとお呼びすればいいのかしら?」


うはー、レフィリア様も相当困っておいでです。

それはそうだろう本人である私も驚いてるんだもの

雇うのかと思ったら周りの扱いが大切なお客人仕様になっているんだもの

でも、雇用主のご家族からの“様”付けは勘弁してください~。


「レフィリア様、レフィリア様は私がお仕えするべき主で

身分もかなり上の方なのですからぜひとも呼び捨てでお願いします!」


ここでレフィリア様からも様付けされたら私は何者だ!?になってしまうわ。

それが、ウィルソン様からのご命令なら納得いかなくても

そうするしかないのだろうけどきっと使用人の皆さんを

ものすごく混乱させると思うし自分も思い上がってしまうだろう。


「どうしたらいいと思う?ミセス・フェブリー」


「でしたら、レフィリア様のみココット様を“さん”付けに

なさってはいかがでしょう。

レフィリア様のお友達としてお呼びになるのでしたら“さん”付けでも

問題ございません。ココット様もそれでよろしゅうございますか?」


「え?あー…も、ん題ございません、ミセス・フェブリー。

しかし、貴族の娘が高貴な方のお世話役になるとき、

使用人の方達からなんと呼ばれるのが普通なのでしょう」


「その家によって方針が違いますので、一概には言えませんが

使用人からはということでしたら、“さん”付けになりますでしょうか

同じ貴族の令嬢方が同じ世話役にいらっしゃる場合は

呼び捨てもありえるかもしれませんが」


「そう…ですよね。」


「ですが、何よりも主人の命を最優先にしますので

ココット様の場合呼び捨では不適切かと思います」


そうだよね、主人であるウィルソン様の命令が最優先で絶対なのだから

この場合は私は客人扱い決定なのかぁ

話相手なんてその辺の使用人が何で聞いてくれてたから

てっきり話相手は、主人(この場合レフィリア様)の

お世話するのかと思ったけど、サナさんがいるから完全しゃべって遊ぶだけの

人なんだよね、私。だとしたらポジション的には友人なのだろうか

というか、今思ったけど仕事って呼んでいいの?



“しゃべって遊ぶだけ”の仕事って…



「さて、遅れましたがココット様のお部屋に

ご案内させていただきたく思うのですが、レフィリア様。

ココット様をお連れしてもよろしいでしょうか」


「はい。ココットさん今日はお疲れでしょうから

お部屋でお休みください。無理でなければ

明日午後にでももう少しあなたの事を聞かせてください」


「はい、では明日からよろしくお願いします」



ちゃんと淑女の礼をして、レフィリア様のお部屋を後にした。

少しだけほんの少しだけ警戒を解いてくださった気がする。

もしかしたら明日はもうすくし仲良くなれるかしら。



客間だという2階の奥まった所に案内された



ひっっっっっっっっっっっっっっっっっろっ!!!!!!!



ウチの何倍だこれ。

しかも、壁紙にも誰が描いたのだろう美しい小さな花々が風に舞うように

壁一面細々描かれていた。窓枠もよく見ると四隅に細かい装飾がある。

極めつけは、天蓋付きベッド!!

御伽噺で姫ではなく“自分”を愛してくれる男性を待つ眠れるお姫様が

眠っていたベッドがこんな感じだったすごく素敵ぃぃぃ


「何かあればすぐにご用意いたします」


しまった、ミセス・フェブリーがまだいらした!


「ぁ、ありがとうございます…」


「このあと、旦那様がお夕食を一緒にと

申しておられますがいかがいたしますか?

お疲れのようでしたらこちらにお持ちしますが」


「いえ、ご一緒させていただます。とお伝えください」


「わかりました。

今日からこちらがココット様のお部屋になります。

そして、この者が部屋専属の侍女ヘレンです」


「ヘレンです。よろしくお願いしますココット様」



……………………私、本当に何者!?



すっっっっっっっっっっごい美女に頭下げられています。

サナさんみたいな無表情美人ではなく、怜悧な美しさ。

冷たい中に気品と美しさと強さを併せ持つ芸術的な美しさ。


“冷たい美貌”


に男性的な色香と大人の魅力を合わせたらウィルソン様で、

女性的な色香と大人の女の余裕を合わせたらヘレンさんみたいな。


そんな、外見パーツも内面からにじみ出る魅力も

もちろんスペックもだろうけど、私より遥に上に居るような人が

…私の、専属?


ものすごくえらくなった気分だけど、私雇われているんですよね?

纏め上げているタバサやジェイスだって使用人食堂でご飯食べて

使用人棟で寝泊りしているんだから(もちろん入浴や着替えなんかも自分で)

私もそのようにやるんだと思ってたんだけど、

(そこに貴族としてのプライドとかこだわりはないのかといわれれば

………えへへへ、あまりないの。使用人と密接だったからそういうのないの)

これは、ウチより私の待遇が向上していない!?



私どうしたらいいの?


ポジションと敬称がテーマでした。


…いや、寝たところでで話切ろうとしたら、

思いの外長くなっちゃってここで終了させました。

ただの話相手が職業になんのかよ。と思われるかもしれませんが、

あるかもですよー。無駄に贅を尽くすのが見栄っ張りな貴族社会ですから。

日本の役人の金銭感覚も真っ青な無駄遣いですよね、今見ると。


教えていただきました『レディズ・コンパニオン』というお役目があったそうです。

ある意味社交的(パーティ好き、外にワケあり男子がいる)なご夫人以外は

屋敷に居て、夫の留守を守るものでしょうからね。

そんな話相手みたいな女性が居てもおかしくは無いでしょうね。

ま、あ、世俗に疎いココットとレフィリアの話なので

レディズ・コンパニオンという存在を知らなかったんだ。

ということにしておいてください。


ココットは、本当に自由奔放に子爵の屋敷内を駆け回っていたので

貴族としてのプライド(上流階級精神というか驕りや傲慢的な)は

一切無く、明日から一般人として生きろ。と言われたら、

はい、わかりました。と行くでしょうね。それくらい柔軟(?)な子です。

ちなみに、貴族にしては珍しく自分のことはなんでも自分でできます。

だから、フルお世話メイドが付いてあんなに驚いたんです。

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