表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

後編

後編を書いたのがとても遅くなってしまい…読む読者さん達がいるかどうか解りませんが…どうぞ。

僕は急いで拓也に駆け寄った。


「拓也、しっかりしろ!!」


しかし、彼は返事を返してくれなかった。

急いで救急車を呼び、拓也は近くの病院へ搬送された…。




(やはり、炎天下の中でキャッチボールをしてたから熱中症を起こしてしまったか…)




こんな安易な事を考えていた僕は、医師の見解を聴いた瞬間に“自分は愚か者”だと悟る事となる…。




「申し上げ難いのですが…息子さんは、原因不明の血液の病に掛っています。この病は、ある程度進行してしまうと手術を施す事が出来ないのです。息子さんの病はもう手術が出来ない所まで来ています。もうそんなに長くないでしょう…。」

「………。」

「こんなに病状が進行してると、現代の医学では我々で手術を施す事が出来ず点滴での薬剤投与しかないのです。お役に立てず申し訳ありません…。」




息子は入院した。毎日、薬剤投与をしてなるべく病状を進行させないようにしていった。


「拓也、これは君自身のためにやってるんだよ。だから頑張ろうな。」

「うん!僕、絶対にこんなビョーキ治して野球すんだっ!!」




息子の言う言葉に、僕はただ涙を溢すしかなかった。この子の父親として、何も出来ないこの辛さ…悔しさが涙となってとめどなく(あふ)れてくる…。


「お父さん…泣かないでよ、僕は大丈夫だから。」

「う…ゴメンな…ゴメンな…」


僕は、息子にひたすら“こんな不甲斐無い父親でゴメンな”と謝るしかなかった…





それから拓也は、毎日数十種類の薬剤を変えながら点滴で投与し続けた。僕はその痛々しい光景が息子には可哀想に思えて耐えがたかった…。


一日…また一日とただ虚しく過ぎてゆく。拓也の病状は一向に快復の兆しが見られなかった。それどころか、段々と衰弱していく拓也。顔は蒼白く、身体はガリガリと痩せていく…。


出来る限り拓也の隣に僕は居たいのだが、さすがに仕事があって無理なので、居ない間は知人と変わりばんこで拓也を看病する事にした。

…妻が亡くなってなければ頼めたのだが、仕方がない。…妻は、拓也を産んで間もなく謎の弊害症を患い、若くしてこの世を去った。


(これ以上、僕の大切な人を失いたくない…だから、拓也をずっと守り続ける。)


僕は、拓也が全快する事を何時(なんどき)も強く願っていた。




しかし、その願いは神には届かず…儚く…虚しく散った。




拓也はその後、突然の心臓発作が起きて…医師たちの懸命の心臓マッサージも虚しく、20××年11月19日午前3時36分、9歳という短い生涯を閉じた。


拓也が亡くなった瞬間…僕は、その場で彼の亡骸(なきがら)にしがみついて泣き崩れた…
















「おーい、外野いくぞ!!」

(カキーン!)

「オーライ、バック」

(パシッ)

「ナイスキャッチぃ!!」


拓也が亡くしてから7年の歳月が経過していた。


(…拓也が生きていたなら、高校に入学して野球していただろうに)


僕は河川敷で練習をしている少年野球チームを見ていた。

マウンドには、拓也と同じくらいの年齢の子供が立っていた。

僕は、思わず拓也とシンクロさせてしまう…。また後悔の念が生まれてしまう。悪いループ現象だ。

僕は正直、こんな苦しいループを終らせたかった。




僕はその場で決心した。

思いに踏ん切りをつける為に拓也が生まれた“この街”を出ていく事を…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ