第007章 「一つの方向性」
朝の明るい日差しが、自室に舞い込んでくる。
「もう、朝か…」
非常に目覚めが悪い。
昨日ずっと歌詞をかんがえていたから、睡眠時間がなかなかとれず、結果、こういう風になってしまった。まぁ、深夜一時過ぎに寝るということ自体、こうなるのは目に見えていたのだが。
歌詞は、思い浮かばなかった。
俺は、広尾と組めたら、オーディションを受けながら、路上で歌っていこうと思う。そして、最終的には、オーディションに受かって、路上を脱するという方向性でいきたい。
しかし、路上で歌うのなら、まず作詞・作曲を広尾と分担しながらやらなきゃいけない。しかし、さっきも言ったが、どんな歌詞を書けばいいのかがわからない。
心にまっすぐに響いて、それに、人々のエールになるような歌詞を、書きたいという気持ちは、強い。
そして最近は、日常の中の少しの変化も見逃さないようにし、きっかけを掴もうとした。これも、緒方先生に言われたのである。
「なにか、人生の方向転換をしたい、君に当てはめるならば、君が望んでいる歌詞を書きたい、だな。そういうきっかけを掴みたいんだったら、受け身になっちゃいけない。自分から、きっかけを掴みに行くんだ…自分から、自発的に、だよ。」
そう言われた。自分から、だ。
けど、初めての作詞の方向性は、「生」「~生きるということ~」にした。俺は、「生と死について」、深く考えてみた。辞書には、生と死は、こう記載されていた。
生きる
1 人間・動物などが、生命があり活動できる状態にある。生命を保つ。生存する。
2 ①生計を立てる。生活する。
②そこを生活の本拠として暮らす。また、意識的能動的に毎日を過ごす。
③そのことに生きがいを見出して日々を送る。
3 あたかも命があるような働きをする。生き生きする。また、理念などが失われずに後世まで伝えられる。
4 うまく活用することによってそのものの価値が発揮される。効果を現す。
5 効力が失われていない。
6 野球で、塁に出たランナーがアウトにならずにすむ。
7 囲碁で、目が別々に二つ以上できて自分の地となる。
死ぬ
1 命がなくなる。息が絶える。また、自ら命を断つ。
2 そのもの本来の力や働きが果たされなかったり、うまく利用されなかったりする状態になる。活用されなくなる。
3 そのものがもっている生命感や価値がなくなる。生き生きしたところが失われる。生気がなくなる。
4 動きなどがなくなる。やむ。
5 囲碁で、敵の石に囲まれて取られる。
6 野球で、アウトになる。
「自ら命を絶つ」という部分に強く目を惹かれた。
自ら命を絶つ・・・か。
こんなことが辞書に記載される日本は、どうなんだろうと思った。こんなことが記載されないような世界になってほしいと思った。
そして自分は一つの方向性を定めた。
「生きていくことは楽しいと伝えられるような歌詞」
それを目指したいと思った。
生きていることが幸せだと思って、一人でも自殺する人が減ってくれればよいと思ったからだった。
そして俺は、ノートに鉛筆で強く、太い字で歌詞を書きだした。




