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我らが民間警察!  作者: テン
3/5

地獄の先には何がある?

超亀更新もうしわけありません……!

それと、なんでだかお気に入りが1件登録されてました……!?

ありがとうございますっ……!

テンションだだ上がりですよ!

これからもがんばって行きたいと思いますのでヨロシクお願いします!

 地獄の研修を終え、2日の休暇をもらえた。

全日程を終了した際に、鬼の教官が急に人らしい態度で「電話だ」と没収されていた俺の携帯を手渡したのだ。

泥のように混濁した意識の中、もう遠い時に出会ったような気がする浅生さんがそう告げたのだ。

ああ、終わった。そう思った途端、急に体から力が抜け意識が閉じた。


 ……けたたましく鳴る電子音にビックリして跳ね起きる。

すわ何事かと、身構えたらそれは俺の携帯の着信コール。

ほっと緊張を解く。……訓練の賜物か、徒手格闘の体勢をとっている自分自身に苦笑しながら。

電話は上司である浅生さんからの『モーニングコール』。

はて? 今日は休日ではと、疑問を覚え聞けば、何故だか今日はその出勤日だと言う話だった。

あわてて日付が表示されるデジタル時計を見て愕然とする。──確かに出勤日。記憶のある日から2日経っている。

……嘘だろ? マジで? 寝てたら2日経ってるって、どんなタイムワープ?

出社する時間までは幾分余裕のある時間だけど、せいぜいシャワーを浴び準備をするぐらいが関の山だろう。

……と、言うか。ここは。俺のアパート? 俺の部屋?

なんでベットに寝てるんだ……? しかも、スエットに着替えてるし……。

様々な疑問で頭が軽くパニックになる。

……怖ぇ。一番新しい記憶ではあの電話の最中強烈な脱力感に襲われて──からの記憶が無い。

無意識に帰ってきたのか?

寝すぎて痛む頭は呆けていて、俺を気にかける浅生さんの甘くも威厳のある声で一気に覚醒する。

「悪いね。あっちで気絶した君を勝手に運んだから。

それと部屋にも上がらせてもらって、適当に着替えさせてもらったから」

──えええ!?

鍵はどうしたんですか、とかの疑問は後回しで俺の脳裏には小柄な浅生さんが俺を負ぶっている姿が思い浮かんだ。

寝ている俺を……? いやいや、俺だって成人した男。

そんな俺を担ぐ姿がどうにも想像できない。

友人には体の線が細いとはよく言われる俺であっても体重は70kgぐらいあるんだぞ……?

でも……。あの研修を受けていたら……ありえそう。うわぁ、何かシュール。

「あれ、起きてる? で、また悪いんだけど、達夫たつお達に……ああ、君の先輩達ね、名前覚えてる?

 に、頼んだんだけど部屋荒らしてなかったかい? あいつらはお調子ものだから」

ああ、なるほど。浅生さんのイメージが壊れなくてよかった。

綺麗な眼鏡の似合う知的女性が実はマッチョとか、そんなキャラクター付き合い方がわからない。

パッと部屋を見渡し異常が無い事を伝えると、「あ、私も準備をしなければならないから。

遅刻しないように」ブツ、とこちらの返答も聞かず通話が切られた。

……ああ、良かった。

浅生さんのイメージ通りで。

細身の文系マッチョの可愛い上司などという存在との付き合い方なんてわからないからね。

筋肉痛で痛む体を誤魔化し、久しぶりの熱いシャワー。

7ヶ月ぶりのスーツに変な感慨を味わい、アパートの鍵を閉める。

……なんでなんだろうなぁ。

訓練中に何度も辞めようと思っていたのに、今ではもう少し頑張ってみようかななんて考えてる。

不思議なもんだ。

やっぱり可愛い上司(浅生さん)の声を朝から聞けたから?

──そんなつもりは少しも無いけど、何となく。

新しい生活にワクワクしてる自分がいる。


―――――――――――――――――――――――――


「いい天気ですね」

歩きながら先輩であり相棒の桑原 達夫さんと巡回をする。

街を見回って犯罪抑止をするお仕事の最中です。


 民警での仕事は驚くほど『普通』だった。

担当する地域を巡回し、犯罪の未然予防。

事件があれば急行し、犯人捕獲とか被害拡大防止とか。

公警と違う事は、

1.捜査権が無い。

2.拳銃所持が許されない(例外を除く)。

3.道路交通法違反を初めとする車両関係の犯罪取締りができない(例外あり)。

大雑把に言ってこんな感じ。

あくまでも強盗とか盗難、殺人などの重犯罪を『予防』する事がお仕事らしい。

この『予防』という所がミソで、実際に重犯罪が起こった場合 俺達民警の出番はなくて

全て公警へ丸投げする。

つまり実際には民警は『少しの警察権限を持たされた警備会社』と差して変わりない。

実際に昔の警備会社がそのまま民警になったものも多々ある。

……なんでこの会社、殉職者がおおいの? そもそも大事件とか銃刀法に関わる民間警察では手に負えない事件は法律上、

出来ないことになっているのに。

民間警察(法)は犯罪未然防止の意味が強いのだ。

とは言え、事件が起きたら急行しなければならない。

どんな事件が起きているのかわからないから。

その後で、民警が出張るのか公警が出張るのか決められる。

民警の手に負えなければ、丸々 公警に投げることになる。


……あ、ちなみに。

俺みたいな出向組は管轄する警察署に前もって届けて、受理されれば拳銃を貸してもらえることになっている。

一応は身分上、警察官だから。

でも、1時間毎の連絡と何十枚もある書類を提出しなければならないから、そんな面倒な事はしない。


「お前、何ボーっとしてんの?」

考え込んでいたら、先輩であり相棒の桑原 達生さんに声をかけられた。

見た目、170センチ中盤ぐらいの身長のチャラい感じの優男。

髪だって茶髪で……。これで自衛隊からの出向だと言うのだから驚きだ。

本人曰く、『俺、これでも格闘肩章もちだから。脱いだらスンゴイよ』との事。

……格闘肩章ってなに?


「ええ。……いや。公警に居た時にこの会社のいやな噂を聞いていたもので。

噂とは全くあてにできないなぁ、と」

「……ああ~。アレか。殉職者続出の、とか」

少し考える仕草をして桑原さんは言う。

笑いながら言われたその言葉に『ソレですね』と、素直に返す。

「思ったより良い会社だろ、ウチは」

ははは、と笑う。「ま、その内わかるさ」

意味深に、続けて言われた。

……なに? 何か思わせぶりな事言っちゃってんですか。

そんなネタふり勘弁ですよ。

小心者の俺がビビっちゃうじゃないですか。

と、その時。タイミングよく無線から無機質な業務連絡を告げる音が鳴った。

……え、フラグ立てちゃった?

ビビリまくる俺とは違い、桑原さんは冷静にイヤホンを自らの耳に押さえつける。

俺の耳にも同じように無線機から伸びたイヤホンがあるわけで……。

これは出勤している全員への通達だった。

『本日、17:00(ひとななまるまる)時、特例B項が発生した模様。以降を持って全職員は会社待機を命じる』

桑原さんをチラリと見れば、ニヤニヤと子トラを未ながら無線機にしつこい位に指をさしている。

『キタキタ』と、口を 声を出さずにパクパクと動かしながら。

何て憎らしい……!


 無線が終ると同時に桑原さんはやたらと良い笑顔で俺の方をバンバンと叩く。

「やったな! ウチの会社の真髄だぜ! 配属数日でラッキーだな! 殉職すんなよ!」

チクショウ。憎しみで人を殺せたら……!

何だよ、殉職するなって!?

どんな仕事だよ!

この会社は民警だよね?!


「とりあえず、会社もどるぞ」


相変わらず、ニヤニヤとした表情でこちらを見る桑原さん。

殺意さえ覚える。

いくらどんなことをするのか聞いても答えてくれない。

そんな事をしながらも、会社への距離はだんだんと近くなっていた。


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