指先に星を灯す
掲載日:2026/03/25
膝を抱えて地面を見つめた
片手で砂をいじるのは
空に手を伸ばせないから
いつまでも夜が明けないから
空で笑う月は
名残惜しいようで
夜を手放してはくれなかった
ぽつり、ぽつりと
消えていく街灯
夢を見始める人々
身体を寄せ合い
目を瞑る動物たち
月の望んだ
夜の姿だった
眠れない人々は
星屑を拾い
一粒ずつ名前をつけていく
(ほら、あれ。
あの七つを繋げたら
あなたは何に見える?)
星の名前を
僕はひとつも知らない
地面に星は浮かばないから
僕が夜空に広がる星を見るのは
雨が降って止んだあとの
水たまりに映る幻影だけ
風が夜空色の水面を
ふっと揺らした
震える膝を抱きしめたまま
地面に手を伸ばす
砕けた星が
僕の指先に滲んでいく
掬えないと思っていた光が
指のあいだで輝きはじめた
あんなに遠い光は
真昼のようにあたたかかった
月はまだ
夜を離さない
その胸に抱きしめて
離そうとしない
けれど
水たまりの中で
小さな夜が生きている
俯いたまま
足元でかすかに光る夜に触れた
濡れた地面に
僕の影が溶けていく
その黒の中で
確かに小さな星が光っていた
ご覧いただきありがとうございました。
水たまりに映る小さな夜。
誰かに届きますように。




