6
私は目を覚ますといつもの自分のベッドにいた。
「ん?私って今日街にいってた気がするんだけど。」
ただ自分で帰ってきたおぼえがない。もしかして街に行ったのは全て夢とか?
外を見ると空は茜色に染まっている。今は夕暮れ時なのだろう。夢だとしたら寝ている時間が長すぎるし、街に行ったと考える方が辻褄があう。
コンコン、そのとき部屋の扉がノックされた。
「セレーネ、起きてる?入るよ。」
ラグエルが部屋に入ってきた。
「セレーネ、何か僕に言うことがあるんじゃない?」
お兄様はなんかすごい笑顔だ。ただなんか怖い。目が笑っていない気がする。
「えーっと、こんにちは?」
「ちがう。」
「じゃあこんばんは?」
「はあ。そんなことじゃなくて、今日あなた僕のことを尾行していたでしょ。」
「えっなんでそれを…..」
私は慌てて口をつぐんだ。やばいなんでバレてんの。私隠したつもりだったのに。
「すぐわかるよ。小さい子供が1人でいるし、髪も見えていたから。」
「はあ、そうですか。」
「あとね、君自分で家に帰ったと思ってる?」
「思いませんね。寝てましたし。」
「そうでしょ。で、連れて帰ったのは誰だと思う?」
「お兄様でしょうか?」
「正解〜」
「はぁ。」
「カフェで寝たセレーネを連れてきてあげたんだよ。あとお金も払ったし。何か言うことは?」
「ありがとうございます。」
「はいよくできました」
ラグエルは私の頭をポンポンと撫でてきた。
「で、セレーネはなぜ僕のことを尾行していたの?」
「えっと、それは……」
ヒロインと関わっているのか知りたかった。とは言えない。
「私が街に行ったら偶然お兄様がいて、何をするのか気になってついて行ってみたのです!」
「僕には帽子とマフラーをかぶって髪を隠していたように見えたけど。」
「えっと、今日は寒かったので。」
「その割にはあまり分厚い上着を着ていなかったけど?」
「いや、首を温めるのは大切ですから!」
「もう、すごい言い訳するね。いいかげん本当のことを言いなよ。」
「最近、お兄様がすごく私に関わってくるから、それがなんでか気になって。」
少し違っているが、理由としては間違ってもない。
「え、そんな理由なの?それで結局理由はわかったの?」
「いえ、わかりませんでした。」
「じゃあ教えてあげる。」
「あ、いいんですか?」
「あのね、僕は単純にセレーネと仲良くしたかったんだ。」
「え、仲良く?」
「そうだよ。セレーネは僕の妹だ。兄弟はもう少し仲の良いものではないかと思ってね。」
「ほう、でも仲のよくない兄弟もいますよね?」
「君は見たことあるの?」
「いや、見たことはないですけど、本に書いてあって。」
「それはいったいどんな本なんだろう。僕にも教えてよ。」
やばい、8歳の子供に言いくるめられそう。
「本の題名はもう忘れました。」
「ふーんじゃあ証拠はないね。てことでセレーネ僕と仲良くしてくれるんだね。」
「…」
ラグエルは笑顔で圧をかけてきている。とっても麗しい笑顔だ。顔がいいだけに怖い。てかなんで仲良くするって言ったことになってんの?私1回も賛同してないのに。
「沈黙ってことは賛成でいいんだね?」
「……」
「じゃあこれから仲良くしてね?セレーネ。」
「よろしくお願いします。」
ラグエルが部屋から出て行くと私は盛大にため息をついた。仲良くするって本当になんで?私悪役令嬢なんですけど。はあ、困った。どうしよう。やはりどうにかして避けなければ。
「うーん、全力で嫌われにいくとか?」
「いや、ダメだな。それで断罪とかされたらいやだし。」
「あ、どっちかがとても忙しくなればいいかも。したら会う暇がなくなって関わることがなくなるんじゃない?ただなあ、ラグエルを忙しくさせるというのは私には無理だし。あとかわいそう。てことは私が忙しくなればいいのか。」
よし決まりだ。私はこれから人と話す暇もないくらい忙しくなってやる。でもなにで?勉強とかかな。いや、1日中勉強など無理だ。私は絶対にそんなことできない。うーん商売とか。ただそれはまだ私がやることを思いついてないので無理だ。あと、うまくいくかもわからない。あ、魔法っていうのはどうだ?魔法なら楽しそうだし1日中やってられそう。そもそも魔法を使えないという可能性もあるが、それはきっと大丈夫だろう。なにせ私は魔術師団の団長の娘なのだから。あと悪役令嬢は強いイメージがある。よし、決まりだ。私はこれから魔法を極める。こうなったら明日にでもお父様に魔法を習いたいと打診しよう。
そして翌日。
「お父様、私魔法をやってみたいです。」
「魔法か、もちろんいいぞ。ただ、十分な魔力はあるだろうか。私の娘だから大丈夫だと思うが、念のため今からはかってみるか?」
「はい!」
魔力測定か。なんか小説では読んだことあったな。お父様は部屋の奥から水晶玉のようなものを持ってきた。
「セレーネ、これに手を当ててみて。」
私は水晶玉にさわった。すると光がでた。しばらくすると水晶玉は薄水色になり、中には355という数字がでてきた。
「うん、だいたい予想していた通りだ。この色は属性を表していてね、セレーネは闇以外は全てもっているみたいだ。その中でも水が強い。あ、属性というのはその人の魔法の得意分野みたいのものかな。水、火、風、土、雷、光、闇の7つがあって属性が多いほど使える魔法がおおいんだ。ただ闇と光を同時にもつことはほぼないから6個もっていたらすごいってところかな。この数字は魔力量だよ。人は平均150くらいの魔力を持っているんだけどセレーネは300くらいだからすごく多いね。年齢とともに増えるし大人になれば非常に多くなるだろう。」
「お父様の魔力量はどれくらいなんですか?」
「僕は900くらいだ。」
私はポカンとしてしまった。え、900?多くない。平均150だよ。これが天才ってやつか。
「セレーネは将来僕より多くなると思うよ。」
「はあ、そうですか。」
そんな多くならないと思うけど…一応期待しておこう。
「魔力は十分にあることがわかった。明日から魔法を教えよう。教師はこちらで手配する。」
「ありがとうございます!お父様。」
「ああ、頑張れよ。魔力は魔法を練習するほど増える。」
「がんばります!」
やったあ!教師ゲットだ。これで魔法を学べるし、お兄様を避けられる。
「んふふふふ♩」
「ずいぶん楽しそうだねセレーネ。」
「げ、お兄様。あっ、しまった。あはは。」
私は誤魔化すために必死に微笑んだ。
「ん、僕はしっかり聞いていたからね。なんで僕のことをそんなに嫌がるのかな?」
「すみませんすみません、これからは避けません。仲良くしますから。あ、では私は失礼します。」
そう言うと私は廊下を全速力で駆け出した。




