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私は家の庭を全力で走っていた。これから乗り合い馬車に乗って、街に行かなければならない。
「はあ、はあ」
屋敷から外までは少し距離がある。6歳の子供にはとてもきつい。
「よし、後もう少しだ、がんばれ私。」
最後に外壁を越えて、出れたああ!とりあえず第一関門は突破だ!よかった。よし、バス停に行こう。私はいったん気を抜いてふらふらと歩いていた。すると
「ってうわぁ!」
私は前にあった石につまづいて転んで…って前に人がいる!
「ドンッ!」
「うう、」
あれ、転んだわりには痛くない?もしかして前にいた人をまきこんだ?恐る恐る目を開けると目の前に自分と同じくらいの子供がいた。私はその子の上に乗っている。まさかこんなことになるなんて。こんなシーン小説の中でしか見たことないのに。そこで私は我に返った。
「ってええ!あ、ごめんなさい。私、あなたのことをまきこんでしまいました。怪我とかしていませんか?」
「あ、えっと僕は大丈夫ですので、それにあなたこそ大丈夫ですか?随分ふらふらと歩いていましたよ。」
その子から声をかけられた。顔を改めて見ると、すごく綺麗な顔をした男の子だった。肩くらいまである金髪と空色の瞳をしている。年は私と同じくらいだろう。
「ちょっと疲れていただけなので、でも本当にありがとうございました。あ、もしかして服が汚れてませんか?」
少年のズボンが少し汚れている。結構高価そうな服だ。どうしよう私のせいだ。
「大丈夫ですよ、このくらい。執事に洗浄魔法をかけてもらえばいいし。クリスト、お願いします。」 「かしこまりました、ソラリス様。」
ほう、この子の名前はソラリスというのか。とても美しい名前だ。そう言って執事さんは服に洗浄魔法をかけた。呪文を唱えると透明な泡のようなものがでて服の汚れの部分を囲んだ。そしてしばらくすると泡が消え汚れは落ち、服は綺麗になっていた。
「うわぁ、すごい。綺麗な魔法。」
私はこの魔法は初めて見たのでとても感動していた。
「ふふ、僕の執事はすごいでしょ?クリストは魔法がとっても上手なんだ。」
「いいですね、魔法。私も使えるようになりたいな。」
そのとき、道路を馬車が乗り合い馬車が走っていた。私はそれを見た瞬間詰んだと思った。
「ああああああ!!馬車!そうだ、忘れてた!」
「どうしよう、次は30分後くらいなのに、終わった。」
「どうしたの?もしかして君、あの馬車に乗るつもりだったの?」
「はい。ですが今逃してしまいました。」
私はもう泣きそうだった。せっかくここまで急いで来たのに、馬車に乗れないとは。しょうがない、30分待つしかないか。
「あの、君はどこに行く予定だったの?」
「えっと、リーズルの街に行く予定でした。」
「あれ、じゃあ僕と行き先が同じだ。よかったらうちの馬車に乗せて行こうか?」
「え、いいんですか?」
普段の私なら遠慮するだろうが、今回は違う。ラグエルを追跡するには向こうより先につかないといけないのだ。30分後の馬車だとラグエルより着くのがおそくなってしまうかもしれない。
「いいよ、ついでだし。いいよね、クリスト。」
「はい、問題ありません。」
「ならぜひお願いします!」
「よし、決まり。じゃあこの馬車に乗って。」
「はい!」
見るからに高そうな馬車だ。この少年は貴族のお坊ちゃんなのだろう。私たちは馬車に乗って話し始めた。
「えっと、僕の名前はソラリス。歳は6歳。よろしくね。」
「私はセ、セレネと申します。私も歳は6歳です。」
ここは一応偽名を使っておく。伸ばし棒を抜いただけなので、あんま変わっていないが。
「セレネは1人で街に行く予定だったの?」
「はい。」
「すごいね、この歳で1人で街に行けるなんて。」
「あはは、街には何回か行ったことがあるので。けど1人で行くのは初めてです。」
もちろんセレーネになってから行ったことはない。まあけど中身は高校生だし、1回で行けるうだろというノリで来た。
「でも、危ないよ。君可愛いから、狙われやすそうだし。」
「へ?可愛い?」
「うん、目の色がすごい綺麗だし、そのマフラーの下には水色の髪があるんじゃないの?ちょっと見せてよ。」
「あ、はい。」
私はマフラーと帽子を脱いだ。
「すごい!僕こんな髪色初めて見たよ。すごい綺麗な色だね。」
「ありがとうございます。私もこの髪色気に入ってるんです。でもあなたの金髪もすごい綺麗ですよ。まるで天使様みたい。」
本当にこれはそうなのだ。ソラリスはとっても柔らかい顔立ちをしている。とても繊細そうだ。金髪なこともあって、本当に天使のようだ。
「僕が天使だとしたら君は妖精かな?」
「妖精か。確かに私はそっちに近い気がします。」 こんなに非現実的な髪と目をしているしね。
こうしてソラリスと話している間に街が見えてきた。
「ソラリス様、セレネ様、到着しました。」
あ、着いたみたい。
「ねえ、セレネは街で何をする予定なの?」
えっと、兄の追跡だけど、そんなことは絶対に言えない。
「人と待ち合わせをしています。」
「そうなんだ。じゃあここでお別れだね。」
なんか急に悲しいことを言うね。
「はい。本当にありがとうございました。すごく助かりました。」
「では私はこれで失礼します。」
「じゃあねセレネ。またいつか会おう!」
「はい!ソラリス。」
「あ、やっと名前呼んでくれた。」
ソラリスは私が見えなくなるまで手を振ってくれていた。本当にいい子だ。うん、いい子だったなあ。また会えるかな。私の胸はとても暖かくなっていた。
さて、これからラグエルが来るのを待たなくてはならない。
「さっきのところにもう1回引き返さないと。本番はここからだ。」
そうつぶやいて、私は入り口に向かって歩き始めた。




