1."A May-day" -b1 『噂話』
-b 『噂話』
「なー、誠よ。オレの近所に住んでるいっこ上のねーちゃんの話なんだけどさ、昨日久々に幼馴染の友達を家に連れてきたんだよな。その人がだな、会ったのが小学校以来だったんだけど、もーめっちゃ美人になってたんだよ!!」
「へー、そうなんだ。」
「超がつく美人!!その人昔から可愛かったんだけど、より磨きがかかっててびっくりしたよ!!」
「そら、何年も会ってなかったんだろ?化粧もしてるだろうしな。」
「だろうなー。今は有名私立女子高に通ってんだってさ。もう住んでる世界が違うよ。」
「へー。矢吹ってそんな美人な知り合いがいたんだな。」
「近所のねーちゃんは化粧で化けてるタイプだけどな。」
「いいのか?そんなこと言って。」
「あー、聞かれたらオレ殺されるわ。」
「ははは…、そうだろうな。」
「笑うなよ!けど、昨日の人以外にも美人な知り合いはいるんだぜ。」
「えー、ほんとか?」
「嘘じゃねえよ!幼稚園から中3までずっと同じクラスだった奴が、大分美人でモテてたんだよ。オレ、ずっと同じクラスだったから顔なじみでよー。周りの友達にうらやましがられたんだ。ほんとに12年位同じだったからな、これはもう腐れ縁としか思えねえ!」
「12年って…長いな。」
「だろー?高校も同じになっちまったからさー、また同じクラスになったらどうしようかと思ったんだが、離れたからよかったぜ。」
「また同じクラスだったら逆に面白かったのにな。」
「いやー、そんなのよからぬ噂が立っちまいそうだ……
……そういや、おい。なんか今すげー噂話あんの知ってっか?」
「俺、そういうの疎いから多分知らない。」
「偶然耳にした話なんだけど、入学してから今までで、11人に告られて、全員をすっぱり振ったつわものがいるらしい。」
「11人って…今日が5月19日だから、1カ月ちょっとで11人?…うそだろ。」
「それがマジらしいんだよ!それもありとあらゆる学年から告られてんだって。しかも面白いのはここからでな。」
「それだけでも大概なのに、まだ何かあるのか?」
「大ありだ。振られた全員が、揃いも揃って、そいつを嫌いになったり諦めたりするどころか、よりファンになって帰ってくるんだと!」
「…どういうことだ?」
「なんつーか…例えば、ファンクラブを結成したり。」
「振られた者同士で?」
「そう。」
「…一種の慰安会じゃないのか?」
「いや、そんなんじゃないんだよ!なんか…アイドルを追っかけてるみたいな…。……そうだ、親衛隊!親衛隊みたいなことしてるらしいぞ!」
「…その人たちって、振られてるんだろ?」
「ああ、間違いなく振られてる。一体どんな振り方をしたらそんなことになるんだろうな。さっぱり分らん。」
「なにかものすごい振り方をしてるのかもしれない。」
「なんだそれ、全く想像つかねえ!すげえよな、どんな奴なんだろう。会ってみたいぜ。」
「ああ、そうだな。」