表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Contrast  作者: WGAP
5."Separate September"
73/138

5."Separate September" -d2 『泡沫』 

-d2『泡沫』




その後。

矢吹に受付を代わってもらい教室を出ると、廊下で待っていてくれた陽翔さんがすぐに俺に話しかけてきた。


「セイくん!代わってもらえた?」

「あ、はい」

「いやー、よかったよかった!」

「…ふうん、そう。」

陽翔さんの嬉しそうな声に原野さんの不機嫌な声が被る。

その声に、俺は恐る恐る原野さんを見る。


「じゃあちょっとこっち来て。」

彼女は俺達に有無を言わせない表情で言った。

…かなり語気が強かった。



 彼女は俺たちに言い放った後、そのままくるりと後ろを向き、スタスタと歩いていってしまう。

…その背中からは、明らかに怒気が溢れ出していた。


やばい。これはやばいかもしれない。

原野さんの逆鱗に触れた…。

俺は顔がこわばる。

横からぽつりと、陽翔さんの「…とりあえず、行こっか。」という声。

流石の陽翔さんも、今回ばかりは顔がこわばっていた。




「……で、言いたいことはたくさんあるのですが……」

原野さんがそう切り出したのは、しばらく歩いき人気のない非常階段についてからだった。


彼女は俺達二人を交互に見る…いや、凝視…ではない。

睨んでいる。


「まず…兄」

原野さんは陽翔さんに視線をやる。

「兄のせいで、この5ヶ月間のあたし達の努力が無駄になったんだけど。…ちょとおこれ、どうしてくれるの?」


「え」

陽翔さんは気の抜けた声を出す。


その反応に、原野さんの視線がさらに冷たくなる。

「あたし達は学校では絶対に話をしないって約束だったの。だから修行も学校の生徒がいない場所をわざわざ選んでいたし」


「え?何でそんなことしてたの?」

その言葉に、陽翔さんは不思議そうな顔をする。

対して原野さんは呆れたようにため息をついた。

「…面倒でしょ?学校の人にばれたら…。」


「どうしてだい?友達なんだからいいんじゃないの?」

「どうしてって…。妙な噂をたてられたら困るでしょ!」

「ユウヒちゃんはそんなの気にしないでしょ?」

「……あたしが気にしなくても、マコトが困るの!」


俺はいきなり出てきた自分の名前にびくっとする。

すると、陽翔さんの視線がこちらへ向く。

「え、そうなの?セイくん。」

「……え…!?」

陽翔さんは本当に不思議そうに見つめてくる。

「そうよね!マコト!」

今度は原野さんが肯定を促してくる。

……どうしたらいいんだ。



 「…お、俺は…」

二人に見つめられて困ってしまい、俯いて言葉を濁す。

それを見た陽翔さんが「もー」と、原野さんに視線を戻した。


「ユウヒちゃん、自分が困ったからってセイくんのせいにしたらだめでしょ!」

「え…あ、いや…」

「してないわよ!本当のことだもん!」


「ちょっとユウヒちゃん、セイくんは“困る”なんて言ってないんでしょー。ユウヒちゃんの勝手な思い込みじゃないの?」

「…う、それは……」



 ……陽翔さん、恐るべし。

口であの師匠を黙らせてしまった。

流石兄といったところだろうか。


……というか、言っていることは師匠の方が正しいのだけれども…。



 ここで俺が口をはさんでも、また兄妹喧嘩が再発してしまうだけだろう。

俺はもう何も言わないことにして、この話の成り行きを見守ることにした。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ