4."Odd August" -a10『電話』
-a10『電話』
プルルルルル プルルルルル……………
『…はいはいはい、もしもーし』
「あ、矢吹か?お前、さっき電話したか?」
『お、誠じゃん!!したした!ちょっと話したいことがあってさ。』
「悪い、ちょっと夕飯食べてて今気がついた。」
『いいぜいいぜー。オレもさっき飯食ってきたからな。』
「……で?なんだ、話って。」
『………そ、それなんだよ!!ちょ、大変なんだぜ!マジで!!』
「お、おう?!どうした」
『………オレっちにも、とうとう春が来た……のかもしれないぜ、誠よ。』
「……なに言ってんだ?お前。」
『もう大変なんだよ!!お前さ、鷹尾祭りって知ってっか?』
「え……あ、まあ、知ってるけど。」
『それにさ!行こうって!!誘って来たんだ!!!!』
「……例の近所の姉ちゃんが、か?」
『違――う!!あいつは毎年友達と行くんだよ……。てか!そうじゃなくて!!』
「じゃあ誰だよ。」
『ハ・ラ・ノ!!原野唯陽!!』
「………はあ?!」
『お、その様子だと覚えてたんだな!あの、美人の原野だ!原野が、一緒に!オレにだぞ?!鷹尾祭りに行こうって!!』
「……………なるほど」
『おい、もうちょっとテンション上げてくれよ!!二人っきりだぜ?!思春期の男女が二人っきりで、祭りとか!もうこれ恋じゃん!発展しちゃうかもじゃん!!噂になっちゃうじゃん!!!』
「………………。」
『いやー、気づかなかったなあ、オレっちとしたことが……。まさか、あの原野がオレのことを……いや!でもオレは、もうタダの幼馴染としか………!』
「…………………。」
『おーい誠、黙るなよ!!電話は言葉を発してくれないと通じないぞー?』
「…あ、悪い。ごめんちょっと聞きたいんだけど」
『なんだ?』
「その祭りに誘われたのって、一日目?二日目?」
『ん?えーとなー、確か一日目だったんじゃないかな。』
「………なるほどな。なるほど」
『?お前、何ひとりで納得してんだ?』
「…あ、いやいや、こっちの話。それより、よかったな。うん、よかったよかった。」
『おう、ありがとう!!オレっちの青春が今、始まろうとしてるぜ……!』




