2."the Sixth sense" -b8 『展望』
-b8『展望』
「いや、ホント、今日はお疲れ様でした。」
「…お疲れ様です。」
「様々なハプニングにも見舞われましたが、結果的には目的は達成した、ということで。」
「…はい。」
あの後。
『フリーフォール』に乗り終えた俺たちは、しばらく近くのベンチで放心状態に陥った後、観覧車に乗ることにした。
原野さんが「…修業とは言え、せっかく来たから、最後に好きなアトラクションに乗っていいよ」と言ってくれたためである。
俺は観覧車をリクエストした。射的もしたかったが、この状態でハイスコアを出せる気もしなかった。
そして今、観覧車の頂上近くである。
「にしても、絶叫はだめでも高所恐怖症ってわけじゃなかったのね。」
「高いところは好きですよ。」
「へえ、意外。」
原野さんはゆるりと笑い、続ける。
「もし高いところもダメだったら、これだけは気合いと根性で直しようがなかったもの。」
「…原野さんなら、そこも矯正するかと思いました。」
「いや、気の持ちようだけでどうにもならないこともあるから。」
原野さんはちょっと困ったように笑う。
俺にとっても、そんな彼女が少し意外だった。
夕方の赤い日差しが窓から入ってくる。
俺は窓の方へ眼をやった。
赤と青のグラデーションを作るように色づいた空に雲の白色が映り込んだ、幻想的な景色。
「綺麗ね。」
師匠が言う。
「そうですね。」
俺も応える。
今日経験した恐ろしいことがまるで夢だったかのように錯覚させる、眺めだった。
「………あ!!!忘れてた!!!!」
「え、…え?!!」
原野さんがいきなり叫んだので、俺は自分の世界から無理やりひきずり出された。
「あれ、買わなくちゃ!!!あー、せっかくの好機を逃すとこだったわ、よかった、気がついて!!」
「…え、なにがですか?!」
「ぎりぎりセーフよ、よかったわね、セイ!」
「いや…だからまことですって、いい加減覚えてください!!!」