2."the Sixth sense" -b5 『施行』
-b5『施行』
つまり、師匠の言いたいことはこうである。
第6感というのはある種不確かな“カン”のようなものである。
だが、その“カン”に事実に基づいた情報を組み込んで利用すれば、より確かな“カン”となる。
“カン”はそれ自体だけならあてずっぽうに過ぎないが、事実と照合して推理すればより精度を上げられるのだ。
…具体的な話をすればつまり、俺が矢吹にメールを送って、矢吹が今どうしているのか探り、その事実をもとに彼の次の行動パターンを割り出し、俺たちはそれを避けて行動する、ということである。
幸いなことに矢吹は大変筆まめで、今はやりのブログのボイス機能も頻繁に利用するタイプだった。
「あまり時間が経っていないし、たぶんまだご飯を食べてる最中だと思うのよ。」
原野さんが言う。
「今送れば4分くらいで帰ってくるんじゃないかしら。」
「…4分ですか?」
「メール返すのが早い人って、たいてい4分前後で返してくるのよ。たまに2分とかの人もいるけど。」
…未知の世界である。
俺はネットツールとしてしか使わない形ばかりの携帯のメール機能(2カ月ぶりくらいに開いた)を使って矢吹にメールを打つことにした。
…なんせメールをしないものから何を打ったらいいのかわからなかったので、原野さんの横からのアドバイスに素直に従う形になった。
『よう、お前今何してる?』
…あまりに直球である。
「あんまり回りくどいのは好きじゃないのよ。」
と、原野さん。
「このくらいはっきり聞かれたらこれ以外のこと答えようがないじゃない?」
「確かにそうですが…これって、『オレ、今遊園地来てんだ』みたいに事実だけ答えられたらどうするんですか?」
「その時はブログのボイス機能をみる。」
「…知ってるんですか?矢吹のブログ。」
「いや、直接は知らないけど、たぶん中学の時のクラスメイトのブログリンクから飛びまくればいけると思う。」
「…なるほど!」
俺は素直に関心する。
確かに矢吹の友好関係は幅広すぎて驚くほどなので、必ず行きつくことができるだろう。
ぴぴぴぴ!
次の瞬間、携帯が鳴った。
…送ってからわずか2分の早業だった。
『おう!お前がメールくれるなんて珍しいな!(@@)
オレは舞ランで遊んでるぞー。今からスカイウォーク乗るぜ\(^o^)/』
「…100点満点の回答が来たわね。」
「…さすが矢吹ですね。」
肝心な所で期待に添うてくれる男である。
「スカイウォークか…てことは、あっち方面にはいけない…か。」
原野さんは園内地図を広げている。
そして中央のラグーンを指さすと、言った。
「よし…じゃあ、絶叫リバイバルの最初は、スプラッシュサークルに決定。」
「…やっぱり、乗るんですね…」
矢吹の件もあって少し落ち着いていた俺のテンションは、また急降下線に突入した。