2."the Sixth sense" -b4 『対策』
-b4『対策』
「にしても、らんでヤブキが舞ランに来てふのかひらね」
「…こんなにタイミング良く居合わせるなんて…。」
「ヤブキも、こふっ、舞ランが好きらのよ、きっと」
「たぶんそうだと思いますよ。アイツ、絶叫系とか大好きそうじゃないですか。」
「ふあーー!気があふわ!」
「今は、そんなこと言ってる場合じゃないですよ……。…もう出ませんか?」
「らに言ってうの!今からが修行の本番なんれひょーが!!」
「………原野さん、食べながらしゃべらないでください…。」
俺たちはファーストフード店から遠く離れたベンチで、昼ごはん替わりのクレープを食べていた。
あたりには気を配っているが、念のため原野さんはキャップを目深に着用し、俺は例のサングラスをかけたまま。
…道行く人に二度見されるのが辛いのだが…。
原野さんは食べていたクレープの最後の一口をもぐもぐとほおばる。
彼女は苺とカスタードとバニラジェラートがトッピングとして入っているクレープをおいしそうに食べていた。
甘いものが好きなのだろうか。
甘いもの。
俺は甘いものはあまり得意でなかった(さっきもカツがはさんであるクレープを食べていた)が、そういえば。
…谷口さんは甘いものが大好きだったな、と急に思い出す。
甘いものと可愛いものが好きないかにも女の子らしい谷口さんは、よく俺にも自作のお菓子を差し入れしてくれる。
それがどれだけ嬉しいか…。
うまく話せなくて褒めることもままならないが、気分的には天にも昇るほど舞い上がる。
原野さんと、谷口さん。
さばさばしたクールビューティ系女子と、ふわふわしたラブリー系女子。
俺の師匠と、思いの人。
これだけタイプが違っても、やはり女の子というのは共通なのだろうか。
と、ふと思った。
そんな散漫な思考の俺の隣で、師匠は指についてしまったクリームをペロッと舐めると、何かを思案するように遠くを見ていたが、しばらくして。
「問題は、どうやってヤブキを避けるのか、よね…。」
と、言った。
…“帰る”という選択肢はないようである。
「貴方はどうすればいいと思う?」
「…矢吹は絶叫に乗りに行くしょうから………わざと絶叫系に乗らない、とかどうで」
「却下。」
「う………、じゃあ、…より変装するとか。」
「これ以上何かしたら逆に目立つわよ。」
「…それもそうですね…」
「あー、どうしたもんかな…」
師匠は考え込む。
もうこれ以上考えがなかった俺は、何となく思いついたことを口にした。
「それこそ第6感でもあればいいんですけどね…」
「…第6感?」
ぴくっと、反応する原野さん。
俺は意外な反応に少し驚いた。
「あ…ほら、人間の未知なる6つ目の感覚ってやつです。簡単に言うと、“カン”みたいな…。」
「…カン…」
「いや、けど、信憑性もありませんし、使いこなせなければ役に立ちませんし、それこそSFの世界でしか…」
「…それだ」
「…え?」
「第6感を自分たちで“作っちゃえば”いいのよ…!」
「…え、な…作るって…?」
思わず聞き返した俺に、原野さんは素晴らしい案を思いついたと云わんばかりの満面の笑顔を向け、意気揚々と言った。
「よし、“人工第6感でヤブキを回避して One more 絶叫マシーン計画”に修行テーマを変えよう!!」