6."11 SAMURAIs" -g1 『回想』
-g1『回想』
特訓は壮絶を極めた。
俺の予想通り陽翔さんは、百人一首が超絶に強かった。
あの『陽翔必殺光速取り』を見たときは戦慄した……あんな俊敏な動きの陽翔さんは初めて見たかもしれない。
土曜日、日曜日の昼間は陽翔さんにみっちり稽古をつけてもらった。
早取りの練習、札を暗記する練習、上の句・下の句の繋がりの確認……思いつく限りの練習をした。
だが、二人での練習では札を読む人がおらず、実践形式の練習ができなかったことだけが悔やまれる。
もちろん、テスト勉強も忘れてはいない。
ここでしっかり原野さんからの課題をこなして…いや、それ以上に勉強に取り組んで、点数を取らなければ…。
そうしないと、今まで原野さんにやってもらったことが無駄になってしまう。
きちんと誠意で応えなければ……この思いが俺を勉強へと駆り立てた。
週末が、昼は百人一首、夜は明け方まで勉強というハードスケジュールの中で、一瞬のうちに消えていく。
一日が二倍にも、三倍にも伸びたような感覚だった。
勉強だけに集中できたらどれだけ楽だったか…なんて、今まで思ったこともないような考えを浮かばせながらの、あっけない終了。
あっという間に週明けからの月曜日、テスト週間に突入してしまった。
曜日が進んでいく。
原野さんにあれだけしごかれたからか、テストの内容はそんなに難しく感じなかった。
むしろ、教科によっては簡単だったかもしれない……数学とか、数学とか、それから数学とか。
俺は、木曜日が近づくにつれ、段々と自分が落ち着いてきているのを感じた。
必死に努力して、結果を出せつつある期末テスト。
テスト終わりから夜にかけての百人一首の特訓。
最終確認の勉強で少し自信をつけてからの、就寝。
毎日、着実に前に進んでいる感覚がする。
そこで俺が得たのは、『やれば出来る』という確信だったのかもしれない。
ああ、あれだけテスト週間まで長かったのに、いざ突入するとほんの一瞬、まるで長い長い一日の出来ごとのよう。
あっという間に決戦のその日その時を迎えてしまった。
回想はここで終了だ。
俺はゆっくり目を開けて、テスト終わりの冴えた頭で前を見据える。
時刻は昼の一時を回ったところ。
俺は理科棟の一画に割り当てられた、柔道部部室の前にいた。
あの日、フランソワ先輩……基、11SAMURAIS隊長が教室を去る前、指定した時刻・場所である。
息をゆっくり吸う。
あまり緊張はしていない。
だが、頭の中で自分の鼓動がしっかり鳴っているのは聞こえていた。
それを数えるようにして精神統一をする。
奥歯を噛みしめて気合いを入れる。
俺は……、ここで負けるわけにはいかないんだ……!
意を決して戸を引くと、そこには。
フランソワ・H・明星を筆頭に、窓を背に立つ人影。
「待ッテイタゾ…………ナカザワマコト、我々ガ、敵………!!!!!」
先輩の宣誓布告をしっかり聞いて、俺は、後ろ手に戸を閉めた。




